策略-16
その日、高島さくらは雑誌の撮影をしていた。さくらは事件などなかったかのようにそつなく仕事をこなして、事務所の社員が運転する車で家に送迎された。
マンションの前に停車した車から降りたさくらはオートロックのマンションに普段通り入っていく。さくらがオートロックのロックを解除してエントランス内に入った瞬間、背後から羽交い締めにされるさくら。
「きゃっ!」
さくらは必死に抵抗しようとするが、相手の力は強くそのまま連れ去られてしまう。
燐は絢巡査長と共に、さくらの身辺調査を行っていた。男子学生からはとても評判が良いのだが、女子学生からの評判は最悪であった。
本人の前では言わないが、裏ではかなりの悪口が言われていたことがよく分かる内容であった。
さくらは気に入らない女子学生を男子学生たちを使って、いじめを行っていたという証言が数多く得られた。
中には、さくらに命令された男子学生が女子学生を強姦した事件もあったという証言を取れた。燐達はすぐに事実を確認すると、確かに事件として捜査され示談で事件が幕を閉じた事が明らかになった。
「酷い・・・・・・・」燐は事件の調書を読みながらそう呟いた。
「ホントに」
絢巡査長は燐の言葉に頷いて同意する。
「これ、高島さくらの名前は出てきていないですよね?」
「そうね。容疑者の学生からは命令されたっていう供述はしていないね」
「でも、学生の間では高島さくらに命令されて行ったっていうのは周知の事実みたいな感じだったのに」
「不思議だよね。そこまで、彼女に忠誠を誓う理由が分からない」
「私も同意見です」
二人は黙り込んで、各々が考える忠誠を誓う理由を考える。
そして、二人が出した結論は・・・・・・・
『分からん!!!』だった。
病院の天井を見上げる長四郎は、退屈しのぎに高島さくらのインタビュー記事が載った雑誌を読みながら事件の事を考えていた。
長四郎が一番気になる疑問は何故、自分にストーカーの調査依頼を出したのかであった。
「お兄さん、そのお姉ちゃんが好きなのかい?」
相部屋のおじちゃんが長四郎の声を掛けてきた。
「いや、別に。本人に会ったことあるけど」
「会ったことあるのかい? やっぱり可愛いの?」
「可愛いけど、性格はなぁ~」
「あ~性格悪いんだぁ~」
「ここだけの話ね」長四郎は、唇に人差し指を当てしぃ~のポーズをする。
性格が悪いだけで済めば、自分もこんな目に合わなかったのにとも思う長四郎。
燐から捜査の状況が逐一送られてくる中で、長四郎の疑問は深まるばかりであった。
その疑問を解決するために、長四郎は燐にある指示を出した。
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