策略-6

 長四郎と燐はキャンパスのカフェでお茶をして、さくらの講義が終わるのを待っていた。

「ねぇ、一川さん達にストーカーの調査手伝ってもらわない?」燐がそう提案する。

「却下」

「なんでよ」

「あのね、一川さん達は殺人事件が専門なの? お分かり? 警察だからってオールマイティーに事件を担当する訳じゃないからね」

「そんな事、知ってるし!」

 すごい剣幕の燐に何も言い返せなくなる長四郎。

「でも、あんだけの売れっ子だったら、ストーカーの正体は掴みにくいよねぇ~」

 燐は自身の考えられる犯人像について考えていると、長四郎は「あ、そうだ」と何か閃いたような反応をする。

「急に何?」

「何でもない」と答える長四郎の顔はしたり顔になっている。

「その顔は絶対、何か思いついた顔だね」

「滅相もない。ねぇ、彼女ってそんなに有名なモデルなの?」

「あんた、テレビとか見ないの?」

「見ないわけじゃないけど。偏っているだけ」

「バラエティー番組とかよく出てるよ」

「そうなんだ。へぇ~」興味ないといった感じの声色で返答する長四郎にイラッとする。

「彼女が人気モデルだったら、何だっていうの?」

「いや、犯人を探すのに苦労するかもな。なんて」

「私もそう思ってたところ」

「流石は、女子高生名探偵。ということで学校に行きな」

「そんなおだて方で、私が帰ると思ったら大間違い」

「チッ!」

「それで、犯人繋がるような何かを思いついた?」

「んにゃ~」

「本当に考えてないの?」

「うん。考えてない」

 躊躇なく即答する長四郎に燐は何も言えなくなる。

「そろそろ時間か。時は経つのが早いねぇ~」

 長四郎は講義を終えたさくらの元へと向かう。

「お疲れ様です」

 講義室から出てきたさくらに声を掛ける長四郎。

「あ、どうも」

「この後は?」

「この後は、仕事です。マネージャーが迎えに来ますから」

「じゃあ、我々の出番はこれで一旦終わりですね」

「え? 現場まで付いて来てくれるんじゃないですか?」

「実は、マネージャーさんにお断りを受けましてね」

「どうして、教えてくれなかったんですか? 私からも頼んだのに」

「まぁ、怒るのも無理はないですが仕事終わりからまた調査しますから」

 長四郎のその一言に「分かりました」と渋々納得するさくらであった。

「あ、それとここだけの話なんですが・・・・・・・」と長四郎はさくらに耳打ちした。

 その内容を聞いたさくらは「え! 本当ですか。彼も可哀想に」と言いながら少し顔を引きつらせたような顔をした。

「じゃ、お仕事頑張ってください」

 長四郎は仕事に向かうさくらを見送ると「ラモちゃん、警視庁に行くぞ」と告げた。

「なんで?」

「一川さんに用があるから」

 さっきまで言っていたこととは、矛盾した行動に燐はモヤモヤしながら長四郎に付いて行くのだった。

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