策略-5

 長四郎はさくらと共に、彼女が通う大学の池袋のキャンパスへと来ていた。

「すいません。大学までついてきてもらって」さくらにそう言われた長四郎は「気にしないで。仕事だから。それより、なんでチミが付いて来てる訳?」長四郎はさくらの隣に立つ燐に質問する。

「助手だから、共に調査するのは当然でしょ」

「当然って・・・・・・・」

 長四郎は顔に手を当てあきれ返る。

「私、講義に行きますから。学食かどこかで待っていてください」

 さくらは二人にそう告げて、キャンパスへと入っていった。

「行っちゃったね」

「いや、行っちゃったねじゃないし。学校は?」

「学校? 私、優秀だから多少は融通が利くのよ」

「融通ね。うん?」

 長四郎は何かに気づいたらしく、燐を置いて一人スタスタと歩いて行く。

「ちょっと! どこ行くの?」燐も慌てて付いて行く。

 二人が向かったのは経済学部が入っているキャンパスであった。

「何があるの?」燐が説明を求めると「しっ! 静かに!!」長四郎に怒られ黙って付いて行く。

 暫く歩くと長四郎は急に立ち止まる。

「痛っ!」

 長四郎の背中に思いきりぶつかる燐。

「ラモちゃん。静かに」

「またそれぇ~」

 そんな燐を無視して長四郎はドアに耳を当てる。

「何してんの?」

「ダメだ。聞こえない・・・・・・・」長四郎はしょんぼりした様子を見せる。

「そうでしょ。あんた、通報されても仕方ない行動してるよ」

「え! そうなの!」

「そうだよ。何、驚くことがあるの?」

「ま、ここで少し待とう」

 長四郎は壁に寄りかかるとドアの向こうに居る誰かを待つ。

「誰が居るの?」

「ラモちゃんも知っている人」

 そう言われて燐はドアの向こうに誰が居るのかを察した。

 数分後、その人物達は出てきた。

「お勤めご苦労様です」最初に声を掛けたのは長四郎だった。

「うわっ! びっくりしたぁ~」一川警部は驚いた様子を見せるのだが、絢巡査長は驚いた様子は一切なくどちらかというとラッキーみたいな顔をしていた。

「絢ちゃん。なんでラッキーみたいな顔をしてるの?」

「そんな顔してます?」

「してるよな。ラモちゃん」燐に賛同を求める長四郎に「してないよ」とあっさり切り捨てられるのだった。

「長さんはどうして、こん大学に居ると?」

「それは答えられません」と一川警部の質問に答えようとする前に燐が「高島さくらのストーカー調査です」と答えた。

「おい! 探偵には守秘義務っていうのがあるんだから、簡単に依頼内容を明かさないの!」

「あ、そうなんだ」燐は悪い事をしたという自覚がなく特に気にしていないっていう感じの反応を見せる。

「それで、一川さん達はこの大学に?」

「殺人事件の捜査ばい」

「そうすか。じゃ、俺達は仕事に戻るんで」

「またねー」

 長四郎は一川警部と別れて、仕事に戻るのだった。

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