長屋-15

 二太郎と燐は、初めて出会ったファミレスへと場所を移した。

「貴方が僕に聞きたい話と言うのは、これの事でしょう?」

 二太郎はそう言いながら、幸信の事件記事が写っているスマホを見せる。

「どうして、この事件を追っているって思うの?」

「ふっ」二太郎は鼻で笑い「貴方のような秀才の方にしては、おバカな質問ですね」と嫌味を言う。

「おバカねぇ~」燐は怒りをグッと堪えながら、話を続ける。

「で、そんなおバカな私にご教授願える? 何故、この事件なのかを。天才君」

 嫌味を嫌味で返す燐にムッとした表情を見せる。

「答えは簡単。この事件の発生場所は家の近くの運動公園だ。さしずめ、一太郎が第一発見者だったんだろう」

「正解」

 燐のその言葉を聞き、少し嬉しそうな顔をする二太郎を見てちょろいなと思う燐は話を続ける。

「それでね、その被害者の男の子の顔が」燐はそう言いながら、幸信の顔写真を見せる。

「そっくりだな」

 幸信を見ての感想はそれだけであった。

「ホントにね」

「ここまでそっくりだと驚いてしまうよ。だが、僕と違って間抜けそうだ」

「死人に向かってよくそう言えるね」

「僕は素直なんです」

「素直ね」最低な奴だなと燐は思う。

「それにこんなヤンキーが死のうと僕には関係ない」

「ヤンキー?」

 燐は見せた写真を見るのだが、そこに移っているのは黒髪に染まった幸信の写真であった。

「顔立ちで分かる」

「顔立ち・・・・・・・」

 燐は訝しげな顔で自信満々の二太郎を見つめるのだった。

 一方、長四郎は取引先に向かう零太郎の後を追っていた。

 通勤時とは違い、気だるそうな感じを一切見せずきびきびとした動きを見せる零太郎にちょっと驚く長四郎。

「朝とはえらい違いだな」

 零太郎は徒歩十分の距離にある取引先が入っているであろう雑居ビルへと入っていった。

「セキュリティは甘そうだな」

 長四郎は着ていた服をパンッパンッと払うと、零太郎の後を追うように雑居ビルに入る。

 そして、零太郎が待つエレベーターに一緒に乗る為に、零太郎の横でエレベーターが来るのを待つ。

「暑いですね」

 突然、長四郎から声を掛けられたので驚いた零太郎は身体をビクッとさせる。

「そうですね。暑いですね」

「ここにはよく来られるんですか?」

「ええ、まぁ」

 変な若者に絡まれたなと思いつつ、この場から早く解放される為にエレベーターが早く来る事を早く願う零太郎であった。

「そう言えば、昨今、また不倫のニュースが流行り始めましたよね」

「そ、そうですね」

 そう答える零太郎の顔色が少し悪くなったように見えた。

 チーン

 エレベーターが到着したアナウンス音が流れる。

「あ、来ましたね」

 そう言って、先に乗り込む長四郎は「何階ですか?」と零太郎の目的の階を尋ねる。

「三階です」

「はい」そう返事し、三階のボタンを押し、自分はその二階上の五階のボタンを押す。

 そこからは会話もなく、目的の階へと到着すると零太郎はそそくさとエレベーターを降りて行った。

「さ、お次は」

 長四郎は自身の疑念を解決する為、派手実の勤務先がある歌舞伎町へと向かった。

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