長屋-14

「さ、これからどうするの?」

 燐は背伸びをしながら、今後の捜査方針を長四郎に聞く。

「う~ん」長四郎は顎に手を当て考え始める。

「なんで考え込むのよ」

「長さんは次の一手のその先を考えとうとよ。ラモちゃん、機嫌が悪いみたいやけん。ご飯でも行こっか」

「え、おっさんと二人で?」

「そんな訳ないでしょ。絢ちゃんも一緒たい」

「それでも抵抗あるんですけど」

「厳しかぁ~」

「一川さん。ラモちゃんの事を頼みますね」

 長四郎は燐を一川警部に託して、一人帰ってしまう。

「帰っちゃったよ・・・・・・・」

「ホントやね・・・・・・・」

 二人は一人歩いて行く長四郎をそのまま見送るだけであった。

 翌日、長四郎は一人とある男の素性調査を行っていた。

 満員電車に揺られて、対象の人物を尾行していた。

 その対象はヨレヨレのスーツに身を包んだ中年のサラリーマンであった。読者の方は、もうお気づきだろうがこの男の正体は、一太郎と二太郎の父親の零太郎れいたろうだ。

 零太郎は社会、家庭にも疲れたといった顔で満員電車に乗っている。

 勤務地の最寄り駅であろう御茶ノ水駅で下車した零太郎は、歩いて5分ほどの距離にあるビルに入っていった。

「ここが、会社か」

 零太郎が勤務する会社を確認すると、長四郎は次の行動へと移った。

 今度は、二太郎が通う高校、汪敬高校へと向かう。

「流石に、入る訳にはいかないか・・・・・・・」

 校門の前でポリポリと頭を掻く長四郎はどうやって二太郎に接触しようか、考えを張り巡らせる。

「おい、そこで何やっているんだ!!」高校の警備員から声を掛けられたと思い、「あ、すいません」と謝罪しながら振り向くと燐が立っていた。

「ラモちゃんかよ」と内心、胸をなでおろす長四郎。

「で、ここで何してるの?」

「それはこっちのセリフだよ。ストーカーか何か?」

「相棒を置いていくあんたが悪いの」

「いつから、俺の相棒になったのよ。十月から新シーズンが始まるからって、そんな事、言わなくて良いの。てか、ラモちゃんは亀山君の代わりにはなれません」

「亀山君? 誰それ。そんな人が出てくるの?」

「マジでか!! まぁ、そんな事はさておき、ラモちゃんに頼みたいことがある」

「私に?」

「ああ、相棒だからこそできる仕事だ」

「都合の良い時だけ、相棒になるんだね」

「そうかい。じゃ、これから行って欲しい事を言うよ」

 長四郎は燐にこれからの指示を出して、零太郎の勤務先へと向かう。

 それから、燐は一人学校近くの喫茶店で涼みながら二太郎が出てくるのを待つ。

 二時間後、夏季の補習授業を終えた二太郎が出てきたタイミングで後を付ける。

 とはいえ、尾行については素人同然なのですぐに二太郎に気づかれてしまう。

「僕に何か用ですか?」

「あ、バレてた。実は君にお話を聞きたいなと思って」

「良いですよ。僕も貴方と話したかったから」

 その一言に燐は「えっ、キモっ」と呟くのであった。

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