第18話 本当に不思議な町だ

 油断していると、泣きそうになるので、「お披露目する上で、字数制限とか何か規約はありますか?」と次のステップを移す事にした。


 パロルはすぐに切り替えて、「えぇとね。そういうのは無いんだけど、参加したい場合は役所に行って申請しないといけないから、明日行こう」と言って、トマトの乗ったカレーを食べた。


「はい! そうしましょう!」


 私は彼女と約束すると、一気に食欲が加速され、夢中でカレーを食べた。


 基本的に住民達は、夜の外出はしない。


 灰の怪物が彷徨いているからだ。もし、出くわしてしまったら、たちまち襲い掛かってくる。


 窓をチラッと見てみると、灰色の亡霊みたいに形のないものが浮遊していた。どうやら町の中にも入ってくるらしい。


 だが、直接家に入ってこようとはしない。暗闇にただいるという感じだった。


 本で読んだ通り、灰の怪物はこっちから手出しをしなければ、危害はないみたいだ。


 それを知っているからか、パロルを見るとソファに寝っ転がって、ボゥとしていた。


 私はその間シャワーを浴びた。


 普通のシャワーとほとんど一緒で、水圧が少しだけ柔らかった。


 お風呂場から出て、着替えてリビングに行くと、パロルが寝息を立てていた。


 完全に寝てしまったので、私は棚から毛布を取り出して、ソッとかける。


 電気を消して、私の部屋へと戻る。


 自分の部屋の内装は、ベッドだけだった。


 パロルから色々家具をプレゼントしてあげるとか言われたが、家が建ったら引っ越す訳だし、お気遣いなくと言ってやんわりと断った。


 壁一面を占めるくらい大きな丸形の窓から月の光が差し込む。


 私は窓辺に腰をかけ、外で煌めく月を見ながら考えた。


 この町は本当に不思議だ。


 適度な便利さと、適度な自然と、適度な豊かさと、適度なコミュニティと適度な安全管理と、自由な生活で成り立っている。


 何だか心地が良い。ずっと湯船に浸かっているかのような気分だ。


 町の人達も優しい。感謝の言葉だけでスイーツが買えるなんて、そんなの私がいた世界ではありえない。


 くっつき過ぎず離れ過ぎずな関係――自分が理想としているコミュニティだ。


 でも、謎もある。今、窓の向こうの地面で、フワフワしている灰の怪物だ。


 彼らは一体何者なのだろうか。どうしたらあんな怪物が生まれるのだろうか――なんて事がふと頭を過ぎった。


(明日は灰の怪物について、もっと詳しく調べてみよう)


 そんな事を思いながら、ベッドで横になって寝た。

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