第6話 町へ
少し年季の入った階段を上り、改札を出る。どうやら切符は車内で取るつもりらしい。
私は誰もいないホームで待つ事にした。まるで廃線となった無人駅に取り残されたかのようなホームで、私は途端に不安になった。
もしかして私は女神に騙されたのではないか――と思っていると、遠くの方で馴染みのある二つの眼が見えた。
前世の世界で何度もお世話になった地下鉄の電車がやってきた。
何かこの駅と合わないなと思ったが、乗らない訳にはいかないので、自動ドアからヒョイと中に入った。
車内には誰もいなかった。右の車両を見ても左の車両を見ても人っ子一人いなかった。
不安がドンドン増す中、背後で自動ドアがプシューと鳴って閉まった。
一番近くの席に腰をかける。グラッと揺れた後、電車が走り出した。
窓の外では木々がドンドン通り過ぎていく。私は背もたれながら、これからどこに行くのか不安だった。
「切符を」
いきなりしゃがれた声が聞こえてきた。目の前に、車掌の格好をした目元まで髭で覆われた老人が手を出していた。
叫ぶ暇がないほど驚いたが、我にかえり、すぐに切符を渡した。
車掌はそれを受け取ると、パチンとハサミでそれを挟んだ。
「では、
彼がそう言ったちょうどに、電車はトンネルを通った。
トンネル内にライトがないのか、真っ暗だった。さらに電車内にも明かりは付いておらず、本当に自分が暗黒に囚われたような心地だった。
孤独と不安が高まっていくと、急に光が差し込んできた。
暗闇から一気に光の世界に戻ったからか、眩しくて目を開けられなかった。
が、少しずつ開けていくと、自分の目を疑ってしまった。
さっきまで横一列の座席だったのが、向かい合う形の席に変わっていたのだ。私もいつの間にか身体が正面を向いていた。
景色も変わっていた。そこら中が海だったのだ。
チラリと下の方を見ると、まだ陸らしきものがなかった事から、どうやらこの電車は海の上を走っているみたいだった。
窓を開けて、顔を出してみる。潮風の香りがする。何だろう、故郷に帰ってきたかのような心地が。
横を見てみると、遠くで陸らしき場所が見えた。あそこが私が住む場所なのだろうか。
窓を閉め、ドキドキしながら待つ。
少し経って、電車が止まった。すると、「ただいま、到着しました〜!」というアナウンスが来た。
私は電車から降りる。ホームは乗車した時のと比べて綺麗に整備されていた。
――ポッポー!
いきなり背後から汽笛の音がした。振り返ってみると、車両も高級感とレトロが漂う汽車に変わっていた。
シュッシュポッポと唸りながら走り去っていくのを見届け、私は覚悟を決めて歩き出した。
改札に入ろうとした途端、思わず目の前にいた光景に立ち止まってしまった。
動物が立っていたのだ。
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