第4話 キャラ決定!
「じゃあ、『耳元囁き作戦』の練習はこのくらいにしておきますね」
「あはは。なにホッとした顔してるんですか。ほんと遠藤さんて分かりやすいですよね」
「で、この作戦どう思いますか?」
「えっ、成功間違いなしですって? やったあ! 遠藤さんに太鼓判押されて、なんか自信がつきました。今度のサイン会で、早速試してみますね」
「で、もしそれが話題になったら、その次のサイン会でファンがわたしの所に殺到する可能性は十分ありますよね?」
「もしかしたら、ゆいゆいを抜いちゃうかも?」
「そうなったらもう、グループ内のヒエラルキーは完全に崩壊しますね」
「ネットに『ゆいゆいと愉快な仲間たちの日暮優香、史上最大の下剋上を成し遂げる』って書かれちゃったりして」
「えっ、妄想が過ぎるですって。遠藤さん、わたしのような底辺アイドルは、妄想でもしてないとやってられないんですよ」
「って、誰が底辺アイドルなんですか!」
「あっ、ごめんなさい! 今のは遠藤さんに怒ったんじゃなくて、セルフツッコミをしただけなので、気にしないでください」
「じゃあ、わたしの紹介はこのくらいにして、次はわたしたちがデビューしてから今まで歩んできた軌跡をざっと紹介しますね」
「わたしたちはデビューしたての頃、今にも増して、ゆいゆいの人気だけが飛び抜けてて、彼女一人でソロ活動した方がいいんじゃないかって、しょっちゅう言われてました」
「それで他のメンバーが発奮して、今まで以上にレッスンを頑張るようになり、少ないながらも、なんとかわたしたちにもファンがつくようになったんです」
「それでも、最初の頃はCDがあまり売れなくて、コンサートを開いても、満員には程遠い状態でした」
「一年後もこの状態だった場合はグループを解散すると事務所に告げられたわたしたちは、自分たちなりにいろいろ考えて、ある方法を導き出しました」
「それは、ゆいゆい以外のメンバーのキャラを立たせること。具体的に言えば、それぞれ自分たちがどうすれば目立つかを考えたんです」
「リーダーのさっちゃんは口が達者だったので、それを活かして自分たちのコンサートでMCをやるようになり、それが話題になって、その後バラエティー番組でアシスタントを任されるようになりました」
「副リーダーのりえぴょんは、歌やダンスの形態模写が得意だったので、いろんなものまね番組に出て、存在を知られるようになりました」
「セツさんは、頭が良いことを活かしてクイズ番組に出まくり、今ではクイズの女王って呼ばれています」
「えっ、わたしですか? わたしはみんなのように、仕事に役立つような特技を持ってなかったから、苦労しました」
「それで散々考えた末に絞り出したのが、けん玉でした」
「わたし一人っ子だったので、小さい頃から一人でよくけん玉をして遊んでたんです」
「そしたら、いつの間にかプロしかできないような技ができるようになって、周りからは、けん玉名人と呼ばれるようになりました」
「その技を、あるバラエティー番組で披露したところ、周りの反応はイマイチでした」
「まあ、それは無理もありません。けん玉って、基本マイナーじゃないですか? なので、その技がどれほど凄いか、みんな分かってなかったんですよね」
「それ以来、テレビでけん玉を披露することはなくなり、わたしの唯一の特技は泣く泣く封印することになったんです」
「というわけで、グループ内で未だにキャラが立っていないのはわたしだけで、それがグループの中で一番人気がないことに直結してるんです」
「えっ、僕的には、十分キャラが立ってるですって? それ、どこを見て言ってるんですか?」
「なになに、初対面の人間相手に、これだけベラベラしゃべれる人はいないですって? それ、全然嬉しくないんですけど。ていうか、それどんなキャラなんですか?」
「えっ、人見知りの反対だから、人懐っこいがいいんじゃないかですって?」
「遠藤さん、たまにはいいこと言うじゃないですか。人懐っこいキャラっていいですね。わたし今度から、そのキャラで売っていきますね」
「じゃあ、わたしのキャラも決まったところで、今日はこのくらいにしときますね。他のメンバーたちは、わたしと違ってさっぱりしてるから、今日みたいに長引くことはないと思います。それじゃ、また明日」
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