第2話 愉快な仲間たち

「りえぴょんはグループの副リーダーをやってて、アイドルには珍しく性格が温厚なんですよね。なので、メンバーからの信頼はぶっちゃけリーダーのさっちゃんよりも厚いです」


「また、りえぴょんはグループの中で一番歌がうまくて、ダンスもキレッキレなんです」


「でも、そんなりえぴょんにも一つだけ欠点があって、彼女は料理が異常に下手くそなんです」


「どのくらい下手かというと、砂糖と塩を間違えるのはしょっちゅうで、この前なんかキャベツとレタスを間違えて、ロールレタスを作ったんですよ」


「あれ? なんで笑ってるんですか? もしかして、可愛いとか思ってません?」


「いやいや。そんなの食べさせられるわたしたちの身にもなってくださいよ。ハッキリ言って迷惑してるんです」


「えっ、それなら、本人に直接言えですって? それができないから苦労してるんじゃないですか。りえぴょんはグループの中で一番繊細なんですよ」


「分かりましたよ。じゃあ今度、りえぴょんにそれとなく伝えておきます」


「じゃあ次は、ゆいゆいこと花園結衣はなぞのゆいの紹介をしますね」


「ゆいゆいは、わたしたちグループ内はおろか、全ての女性アイドルの中で一番可愛いって言われてる程の美少女なんです」


「実際、ゆいゆいと初めて会った時、わたし思わず『負けた』って、言っちゃいましたからね」


「どのくらい人気があるかというと、握手会をした時に並ぶファンの数が、他のメンバー四人を全部足しても、ゆいゆい一人に負けちゃうんです」




「あと、わたしたちのグループ名って知ってます? 『ゆいゆいと愉快な仲間たち』って言うんですよ。ふざけてると思いません?」


「あれ? なんで笑ってるんですか? まさか面白いグループ名とか思ってないですよね?」


「いやいや。『愉快な仲間たち』と一括ひとくくりにされてる、わたしたち四人の身にもなってくださいよ。はっきり言って気分悪いです」


「えっ、それなら、グループ名を『ゆいゆいと不愉快な仲間たち』に改名したらどうかですって? 遠藤さん、自分ではうまいこと言ったつもりかもしれませんけど、それ全然うまくないですから」


「あれ? どうしたんですか? そんなに落ち込んで。もしかして、うまくないと言われて傷ついたとか?」


「遠藤さん、これくらいで傷ついてるようでは、ハッキリ言ってわたしたちのマネージャーなんて務まりませんよ。さっさと他の仕事を探した方がいいんじゃないですか?」


「な~んて、今のは軽い冗談ですから、本気にしないでくださいね」


「あれ? なんで泣いてるんですか? ちょっとやめてくださいよ。これじゃ、わたしが泣かせたみたいじゃないですか。ほんと、泣きたいのはこっちの方ですよ」


「えっ、これはうれし涙だから、気にすることないですって。ちょっと遠藤さん、情緒不安定にも程がありますよ」


「分かりました。これからはなるべく冗談は言わないようにしますね。じゃあ次は、セツさんこと犬飼節子いぬかいせつこの紹介をしますね」


「セツさんは、とにかく頭が良くて、グループが売れるための戦略を常に考えてるんです」


「今までやった戦略の中で特に成功したのが、ドリンク作戦と似顔絵作戦」


「ドリンク作戦は、コンサートや握手会などを開催した時に、お客さんにドリンクを無料で配るというもので、これをやり始めてから、お客さんの数がぐっと増えました」


「似顔絵作戦は、ファンから五人それぞれの似顔絵を募って、その中で一番似ているものを元にしたグッズを作ったんです。そしたら、それが飛ぶように売れて、未だに生産が追い付かない状態なんです」


「えっ、他にどんな戦略があったかですって。まあ、色々ありますけど、他は大して成功していないので、省略させてもらいます」


「あと、セツさんはプロデュース力も長けてて、コンサートの企画や演出なんかも全部彼女が考えたものを採用してるんです」


「えっ、それは最早アイドルではなくプロデューサーですって? それはあながち間違っていません。セツさんはアイドルを卒業したらプロデューサーになるって、常日頃言ってますから」


「さて、これで他のメンバーの紹介はすべて終了しました」


「えっ、わたしの紹介がまだですって?」


「慌てないでください。これからたっぷり時間を掛けて紹介しますから」


 


 


 

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