第15話 レヴァの実力……あと、意外に?
「ああ。そう言えば、自己紹介が遅れてすまない。私はレヴァ。レヴァ・グラム。こう見えて、王都ではそれなりに名前の知れた冒険者だ。魔術は使えないが、適性は五属性。一応、身体強化レベルは8までに至っている」
「し、身体強化……!?」
「レベル8っ!? すごいすごいっ! あたし、そんなレベルが使える人、見たことないですよっ! あのっ、あのっ! レヴァさん! そのレベル8って、あたしたちに見せてもらうことってできませんか!?」
ぽっかりと真上に広がる空洞から、暖かい陽射しが降りそそぐ竜の棲家だった洞穴で。
目をキラキラと輝かせてはしゃぐアルケミに、銀髪の女冒険者レヴァはあご下に手をあてて、『ふむ』と何やら思案し始めた。
――首から提げた長い前だれで一応隠してはいるものの、体にピッタリとフィットした装束のせいでその出るとこがほどよく出てるスタイルが強調されまくってて、俺としてはちょっと目のやりどころに困ってしまう。
「ふむ、そうだな……。カノンに、アルケミ。見たところ、君たちにはその〈魔砲〉以外の武器はないようだな。収納魔道具も持っていないようだし……。うん。君たちは命の恩人だ。見せること自体はかまわない。ただ、助けてもらった身で図々しいとは思うが、できればひとつ条件というか、お願いを聞いてもらえないだろうか?」
「あ、はい! いいですよ!」
「……いいのか? まだ私は中身を何も言っていないぞ?」
「はい! だって、レヴァさんは無茶なこと言わないって、あたし信じてますから!」
ぐっと両こぶしを前で握って、キラキラと曇りのないまっすぐな瞳で見上げるアルケミ。ちらりと目くばせを送ってきたレヴァに、俺は両手を上げてやれやれと軽く首を振って答える。
「ぷ、くく……!」
「あー! また笑ってるー! もう! なんですー! レヴァさん! あたし、変なこと言ってますかー?」
「く、くふふ……! いや、すまない……! 君たちは本当にいいパートナーだと、思っただけだ……!」
「身体強化レベル8――【烈火】! はああああっ!」
「す、すごいすごい!? すごいよ! カノン! あのかったーい竜燐がサクサクって! スパスパって!」
「あ、ああ……!」
――なんか、料理の感想みたいだな? って、そんな印象を受けるアルケミの感想はおいといて、実際すさまじい技だった。
赤く、本当に燃えているのかと錯覚するほどに色濃く魔力をまとったレヴァは、熱したナイフでバターを切るように、いっさいの抵抗を感じさせることなく、残った竜の胸から上の死体を手ぎわよく次々と解体していく。……なんか、結局俺も料理の感想みたいになっちまったな?
「……ふむ。こんなところか。収納魔道具に念のため入れておいた予備の剣と動かない竜の死体相手では、恩人相手に大した技の冴えも見せられず心苦しいが……」
――って、それでまだ不満なのかよ!?
「そんなことないですっ! めっちゃくちゃかっこよかったですよっ! レヴァさんっ! ね、カノン?」
「あ、ああ……! その、なんていうか、かっこよかったし、その、綺麗だった……!」
「そ、そうか……? あ、あ、ありがとう……!」
――あ、かわいい……! きっちりとお礼を言いつつも、照れたようにそっぽを向いて頬を赤らめながら軽く耳もとの髪をいじるレヴァのそんな意外な仕草に思わずそう思ったのは、アルケミには内緒だ。……
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