第108話:伝説の戦い4

2人の種族、称号を見て、思わず絶句してしまった。


いやいやいやいや・・・

『人龍族』って何!? 人と龍が交ざった?


それに、『コトハ・ミズハラの眷属』って!?

2人が、私の眷属になったってこと?

いや、眷属って結構いろんなものを含むから、「家族」的な意味で使っているのなら分かるんだけど・・・



そう思いながら、自分のステータスも確認した。

すると、なんとなく予測はしていたが、私の種族も変化していた。


私の種族は『魔龍族』。これまでの『魔竜族』から、「龍」の字に変わっていた。

ただ、これはこの世界の言葉を魔法によって私が認識できるように変換されているはずなので、漢字の違い以上の変化があるのだろう。

そもそも、私が転生したときに融合したのは、『龍族』の卵なのだから。

ということは、『魔龍族』への変化は、上位の存在に至ったと考えるのがいいだろう。

・・・・・・進化って感じかな。


そして、先程湧き出てきた力、生えた翼や尻尾、変化した手足や鱗は、進化によるものだと考えられる。

そして固有スキルの『竜人化』が、『龍人化』へ変化していた。進化したことでスキルが変化したのだろう。


自分の種族を見ると、カイトとポーラの種族名にも納得がいった。

原理は知らないが、2人は私の眷属となったことで、私の「龍」としての力を受け継いだということだろう。

2人は力が沸いてきたと言っていたし、『人間』から眷属となって『人龍族』に進化したことで、力が増したということではないだろうか・・・


まあ、こういうことは後でレーベルに聞いてみるのが一番かな。

レーベルは、古代の『龍族』に仕えていたわけだし、いろいろ知っている気がする。ステータスの詳しい検証はまたにしよう。

今は、グレイムラッドバイパーの討伐が優先だ。

2人も力が増したみたいだし、最後は一緒に倒すか!



「カイト! ポーラ! 詳しくは分かんないけど、2人とも進化してる! 力が沸いてきたのはそのせいだと思うよ!」

「進化!?」


カイトが驚いているが、説明は後だ。

2人は『龍人化』のようなスキルを習得してはいなかった。

しかし、その身体を循環する魔力の量や質は、格段に上昇しており、それだけで強くなったことが確認できた。

もっとも、さっきの私のように、複雑な動きを直ぐにするのは負担が大きい。なので、2人にグレイムラッドバイパーの拘束を任せ、私が一撃で仕留めることにした。



「カイト、説明は後で! 間違いなく強くなってるから安心して。とりあえず、グレイムラッドバイパーを倒すから。ポーラはありったけの石の楔を、それも大きいヤツをあいつの身体に突き刺して。経験上、かなり魔法の出力も上がってると思うから、いつも通り力を込めれば大丈夫!」

「分かった!」

「カイトは、ポーラがアイツの動きを止めたら、全力で顔を下から上に向けて殴り上げて。『身体強化』の効率も上がってるはずだし、万が一攻撃してきても、私が守るから」

「うん、任せて」

「マーラ、スティア、シャロンはポーラの近くで、ポーラを守って!」


私の指示に、マーラたちも了承の意を示し、ポーラを囲むように展開した。

カイトとポーラは、自分の身体を流れる魔力を感じ取るように集中し、それぞれこちらを見た。準備完了だ。

よし、これでいける!





最初に動いたのはポーラだ。

これまでよりも強く魔力を込めた楔形の石弾を多数作りだし、グレイムラッドバイパーに突き刺していく。

グレイムラッドバイパーは、悲鳴のような声を上げながら、のたうち回っている。しかし、動きを止めることはできなかった。


それを見たポーラは、しゃがんで地面に両手を置く。

そして、地面へと魔力を流し込んでいる。


次の瞬間、地中からグレイムラッドバイパーの身体の周りに、土でできた縄のようなものが何本も飛び出す。そしてグレイムラッドバイパーの身体を上から押さえつけるようにして、拘束していく。

次々に飛び出してくる土の縄が、グレイムラッドバイパーの身体を地面へと縫い付けていった。


既にかなり戦闘を重ねて疲れが見えており、ポーラの楔形の石弾で大ダメージを与えられていたグレイムラッドバイパーは、次第に身体の動きが鈍っていく。



それを待っていましたというように、カイトが駆け出す。

『土魔法』で足場を作り、まだ起き上がっているグレイムラッドバイパーの顎の下あたりを目指して近づいていく。


グレイムラッドバイパーも迫ってくるカイトに気づいたみたいだが、気を逸らすように、私とポーラが、拘束している身体に次々に楔を突き刺していく。

そしてカイトを守るように、カイトとグレイムラッドバイパーの間に『風魔法』で壁を作り、グレイムラッドバイパーが下を向けないように細工する。


そしてカイトがグレイムラッドバイパーの顎の真下につくと、『身体強化』をさらに強化していく。

身体に流す魔力の量を、近づきながら高めていたのだ。

そして、足場として作った土板から思いっきり踏み切り、グレイムラッドバイパーの顎下を殴りつけた。全身を使っての攻撃だが、アッパーカットという感じかな。

その打撃は、『龍人化』した私であっても、しっかりダメージを受けると思われるほど、重く強烈な一撃だった。



カイトの攻撃で、グレイムラッドバイパーは頭部を上に打ち上げられていた。

来た!


首が曲がっていると、攻撃場所を選ばなきゃいけない。

まだ飛行能力の制御が甘い私には、それはきつかった。


けど、今のグレイムラッドバイパーは地面に縫い付けられた部分より上は、ほとんど真っ直ぐ上に伸びている。

これを切り裂くのならば、狙いも付けやすい。


頭部の少し下、その一点に狙いを定める。

そして、足に力を込めて、飛び上がり、翼に意識的に魔力を供給していく。

そうして、スピードを上げて、狙った場所の少し左へと迫る。


飛びながら、右手に魔力を込めていく。

進化したことにより、見るからに強化されている『龍人化』した手。魔力を込めていくことで、手を覆う青白い ―進化したことで、白というよりは、銀色っぽい光沢のあるものへと変化している― 鱗が、白い光を放ちながら光り輝く。


そうして強力な魔力を纏った右手を、頭の前に突き出し、右側に少し開く。

かなりの高速で飛行しているが、狙いを付けたグレイムラッドバイパーの首筋は、きちんと捉えている。

自分の進む速度と、広げる手の角度、面白いくらいに自分の進行ルートを把握できた。

これでいける!


私はそのまま、グレイムラッドバイパーの首を目がけて右手を振り抜いた。私の右手が、グレイムラッドバイパーの首筋に4本の線を描く。そして、大量の血が噴き出すのと同時に、支えを失った頭部が、ゆっくりと地面へ落ちていった。


頭が落ちてから少しして、起き上がっていた身体がゆっくりと地面へ倒れ込む。拘束を振りほどこうと暴れていた身体の動きも次第に鈍くなり、そのまま動かなくなった。





こうして伝説上の魔獣、成獣となったグレイムラッドバイパーはその生命活動を停止した。







さてさて作戦通り、グレイムラッドバイパーを倒すことができた。

カイトやポーラの攻撃は、威力・精度ともに向上していたし、私の攻撃もかなりの威力があったと思う。

ただ、もともと使いこなせていたのか不安な自分の能力が、更に強化されてしまった。カイトとポーラも、その場に座り込んでいる。私も体力が限界に近い。


見れば、第3部隊の方から、騎士たちが走ってくるのが見えた。

詳しいことはレーベルに聞くとして、彼らが来る前に、自分の能力をチェックしておこう・・・



 ♢ ♢ ♢


名前:コトハ・ミズハラ

種族:魔龍族

年齢:1

魔法:火魔法10、水魔法10、土魔法10、風魔法10、光魔法10、闇魔法5

スキル:身体装甲10、鑑定10、

固有スキル:自動防御極、自動回復大、魔力回復極、龍人化Ⅰ

ユニークスキル:魔法適正極、魔法能力極

耐性:精神耐性7

称号:龍族の末裔、世界を渡りし者、リンの主、マーラの主、ポスの主、スティアの主、ウォロンの主、ワートの主、ベッカの主


 ♢ ♢ ♢


うん。めっちゃ強くなってるな。

さっきは焦ってたから、種族のところと『龍人化』だけ見ていたけど、魔法は『闇魔法』以外レベルが10。『身体装甲』や『鑑定』もレベルが10に。なんか称号も増えている。

そして気になったのが、『自動防御』が極になったこと。火炎ブレスを受け止めた時に感じたのだが、全身を薄い魔素でできた膜のようなものが覆っていた。これまでの『自動防御』は攻撃の来る方向に、魔素で障壁を生み出していたが、その上位互換ということなんだろう。

・・・・・・ぶっちゃけ、障壁の方が強そうだが、火炎ブレスを今までの障壁が受け止めることは不可能であったと思うので、強化されたというのは本当だろう。


魔法やスキルが増えたというわけではないが、軒並みレベルが上がっているし、強くなったんだろうな・・・

この騒動が終わったら、自分の身体の研究を再開しようかな・・・・・・


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