第44話:町を目指そう3
・・・・・・・・・・・・あ。
連携の確認って言ってたのに、一気に倒しちゃった。
いや、カイトが襲われるかもって思ったら、深く考えるよりも先に、叫んで、動いてたんだよねー。
それに、その直前に感じた、あの嫌な感じ。ブラッケラーと戦っているときにも感じた、あの冷たい嫌な感じ。
あれはなんなの? 攻撃される予兆でも感じてるの?
うーん、また検証かな・・・
気を取り直して、グリロブスを確認する。
まあ、当然グリロブスは絶命している。
口から、全身を槍が貫いたのだから。
「ごめん、2人とも。連携の確認って言ってたのに、勝手に倒しちゃった・・・」
「ううん。お姉ちゃんは僕を守ろうとしてくれたわけだし・・・」
「コトハ姉ちゃん、かっこよかった!」
「・・・ありがと、2人とも」
まあ、怪我なく勝てたんだから、とりあえずは良しとしておくべきなんだろうかな。
そうまとめようとしていると、
「そうですね。カイト様は、グリロブスが落ちたとき、お一人で先走って川に近づき、グリロブスを探そうとしました。そのせいで、お二人との距離が離れ、奇襲を受けることになりました。コトハ様が警告しなければ、『身体強化』を使っていたとはいえ、危なかったかと思います。次にポーラ様ですが、空中でグリロブスを攻撃したことや、最後に『光魔法』で目眩ましを行ったことは、良かったと思います。ですが、後衛は、単に攻撃するだけでなく、前衛の行動を見て、声を掛けたり、攻撃魔法以外の援護を行ったりと、すべきことは多々あります。今回で言えば、カイト様が先走った際に、カイト様を止める、若しくは、バックアップのためにポーラ様も前に出て、カイト様を守るといった行動をとるべきであったと思います」
「・・・・・・はい」
「そっか、お兄ちゃんを守らないとだった・・・」
そう、ダメ出しをされた。
うーん。難しいな。
確かにカイトは、少し先走って川に近づいてしまった。
レーベルの言うとおりなら、かなり危険だった。
ポーラの魔法は、正確だったし、目眩ましも効果的だった。
後は確かに、後ろから前衛の行動を諫めることも必要なのだろう。
「じゃあ、私は?」
「コトハ様は、もう少し冷静になられるべきかと。確かに今回は、カイト様が危険な状況でしたが、あの威力の魔法を、カイト様が射線上から完全に外れていない状態で放つのも、同様に危険です。それに、今やお二人も、あの程度の魔獣を仕留める力はございますので、なんでも自分で倒す必要はなく、気を引き、動きを封じるなど、補助的な行動を選択することも必要かと思います。今回について言えば、カイト様への誤射を避けるためにも、着地したグリロブスの前脚を地面に縫い付ける形で、先程の魔法を、上から当てれば、背後からカイト様が仕留めることが可能でした。もっとも、そのように連携する練習なのですから、これから慣れていかれれば十分かと思います」
・・・うーん。確かに。カイトに当たる可能性があったのは深く反省しないと。
それに、今まで倒すことに専念してたけど、動きを封じるための行動か。
確かに、今回は私の攻撃で、グリロブスは倒せたけど、それでは倒しきれない相手が出てきたら、私が一人で魔法をぶつけるより、動きを止めて、みんなで攻撃した方がいいかもしれない。
・・・戦いって難しいな。
なまじ、強い身体に高威力の魔法を操れる能力があったから、戦い方ってのを、考えてこなかった。
まあ、そもそもが高三女子だし。戦った経験なんて皆無だし。
連携の練習をしながら、戦い方を考えてみようかな・・・
グリロブスのお肉は、食べられるそうだが、それほど美味しいわけではないらしい。
贅沢ながら、美味しいお肉の在庫もたくさんあるので、お肉は放置する。
一方で、グリロブスの皮は、防具などの装備に加工できるらしい。ワニ皮ってやつ?
今回は、口から体内を槍が貫通したので、皮はほとんど傷ついていない。
まあ、誰も加工技術なんて無いが、素材として確保しておく。
ちなみに魔石は、石槍が粉砕していた・・・
そういえば、拠点の魔石も溜まってきたんだよなー。
なにかに利用できないものかね・・・
グリロブスの皮を回収し、残りはそのまま放置してきた。
本来、処理するべきなんだろうけど、これ以上、時間を掛けたくなかったし、近くにフォレストタイガーを見かけたので、食べてくれるだろうということで放置してきた。
帰りに残っていたら、ちゃんと処理しよう。
その後も、主にファングラヴィットしか出会わなかったが、私は基本的に攻撃魔法を使わずに、2人、特にカイトのサポートをすることを意識しながら、戦闘訓練を続けた。
結果的に、ある程度の連携ができるようになったし、攻撃以外の、戦闘での魔法の使い方も見えてきた。
結構歩いたところで、日も暮れてきた。
今日の野営地を決めて、昨日と同じように仮拠点を作り、順番に見張りをしながら眠りについた。
♢ ♢ ♢
翌日も、朝の支度を済ませて、更に進んでいく。
途中、川を泳いでいる、グリロブスを見かけたが、『鑑定』の説明通り、そのスピードはかなり速かった。
昨日のあれも、川の中で私たちを惑わせて、不意を突こうとしたってことだよね?
となると、やっぱり、あの不快な感覚が無ければ、カイトが攻撃されてたかもしれないってことか・・・・・・
ただなぁー、あれが何なのか、どうしてそんなことが分かったのか、皆目見当も付かないんだよね。
なんか、こう、野生の勘みたいな?
まあ、後回しだな。今のところ、本当に危険な時に発動してくれてるみたいだし、頼り過ぎてはいけないけど、もしも感じたら従うことにしよう。
そうこうしている内に、森の出口が見えてきた。
♢ ♢ ♢
2日半歩いて、森の出口に着いた。
生まれて初めて、この森から出るときがやってきたのだ。
そう思い、ウキウキと森を出ようとすると、カイトに止められた。
「この森からお姉ちゃんみたいな、若い綺麗な女の人が出てきたのを見られたら、怪しまれるよ! 誰もいないか確認してからにしないと」
「あー、そっか。この森って危険の巣窟みたいなイメージなんだっけ・・・?」
「では、私が確認して参りましょう」
そう言うとレーベルは、ヒョイッと木に登り、枝を渡って、出口に最も近い木の枝に移って、森の外を観察し始めた。
数分してレーベルは戻ってきたが、何やら難しげな顔をしている。
「・・・・・・どうしたの? 誰かいたの?」
「いえ、それが・・・。その、人がいました。それも大勢。推定ですが、500名程、・・・・・・・・・・・・軍隊です」
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