第43話:町を目指そう2

今回、町に行く最大の目的は、布の入手だ。後は、金属製の調理器具もあれば手に入れたい。

それから、普段の行動範囲の外で、新しい魔獣や魔物に出会ってみたいとも思っている。

加えて、カイト達と共闘できるような練習もできたら、とは思っている。


昨日確認した結果、2人は前よりも格段に強くなっていた。

一緒に戦っても問題ないはずだ。

・・・というか、大味な攻撃しかできない私が一緒だと、逆に危険なのでは?

まあ、明日、少し試してみよう。

基本的な目的は、これで問題ない。


あとは、個人的な目標というか、楽しみにしていること。

異世界に来て2か月弱。初めて、人間の町に行くのだ。

町の雰囲気がどんな感じなのか、城塞都市って言ってたし、なんとなくのイメージはつくが、当然、城塞都市なんか見るのは初めてで、ワクワクしている。

それに、『エルフ』や『魔族』などの種族の話はこれまでも聞いているし、もしかしたら会えるかも?と、こちらも楽しみにしている。


4人とも、見た目は『人間』だし、うまいこと町に入れることを願うだけだ。

・・・・・・あ、でも、リンはどうしよう。

リンは私の従魔だ。まあ、私たちにとっては大事な家族なわけだが、周りから見れば魔物。

最初にリンをカイトに紹介したときも、リン、というかスライムを怖がっていたし、やっぱ町に連れてはいるのは無理なのかなー



そんな風に考え込んでいると、レーベルが起きてきて、見張りを交替してくれた。

思ってたよりだいぶ早いんだけど、いいの?



 ♢ ♢ ♢



レーベルに起こされて、目を覚ますと、カイトとポーラはもう起きて、朝食の用意を手伝っていた。

うーん。もう少し早く起きるつもりだったけど、思ってたよりも疲れてたのかな?



朝食を食べたら、町を目指して移動を開始する。

忘れないうちに2人に、共闘のことを提案してみる。


「今日はさ、魔獣が出てきたら、3人で一緒に戦ってみない? 今後、単独では倒せない相手が出てきたときに備えて、連携の練習がてらさ」

「うん! 一緒に戦う!」

「うーん、お姉ちゃんが一人で倒せない相手って考えただけでも怖いんだけど・・・。それに連携ってどうやるの? 役割分担みたいなの」


役割分担か。

基本的に、カイトは肉体派、いわゆる前衛だ。一方のポーラは、後ろから魔法で攻撃するタイプ、後衛よね。

・・・私は? 普段は魔法ぶっ放してるけど、『竜人化』すれば、殴ったり蹴ったり切り裂いたりできるし・・・


「カイト様が前衛、ポーラ様が後衛、コトハ様が遊撃でしょうか。カイト様は言わずもがな。ポーラ様は魔法での攻撃精度が高いので、前で戦う味方に当たらないように援護することができるでしょう。コトハ様の魔法は少々、いえ、かなり大胆なので、後衛として後ろから攻撃するのは、危険な気が致します。『竜人化』を混ぜつつ、お二人を援護するのがよろしいかと」


はっきり言いよったな、レーベルめ。いや、大胆ってのはまだ、オブラートに包まれてはいるのか?

まあ、どのみち事実なんだけどさ。


「レーベルの言う通りかな。2人を前に置いて攻撃するのは、私にはハードル高いし、カイトみたいに相手と向き合って、っていうのも得意じゃないから。好き勝手動いて、2人を援護ってのがやりやすいのかな−」

「それに、正直に申しますと、コトハ様を前衛においてしまうと、ほとんどの場合、コトハ様の攻撃で片付いてしまうため、連携の確認にならないかと。コトハ様にも、お二人の動きや相手の動きを見ながら、適宜、相手の気を引き、攻撃を与えるといった、訓練が必要と思われますので」

「・・・そうねぇー。まあ、とりあえずそれでやってみよっか」

「「はーい!」」





そういって進んでいると、川の中から何かが、這い出してくるのが見えた。

四足歩行で、動きはゆっくりめ。手足は短くて、結構、大きいというか長いかな?

緑色の皮膚なのか、鱗なのかに覆われた・・・。

・・・・・・ワニ?



 ♢ ♢ ♢


『グリロブス』

クライスの大森林やその周辺の川に生息するワニ型の魔獣。

水中を高速で泳ぎ、獲物に近づき狩りをする。

『水魔法』が得意


 ♢ ♢ ♢



「2人とも、グリロブスって魔獣らしいよ。知ってる?」


2人とも首を横に振っている。


「とりあえず、あれで試してみよっか!」


そう言うと、先程決めていた、陣形を展開する。

カイトは前衛として一番前に。その後方に、魔法の射線を考慮して少し横にずれた私が。同じく魔法の射線を考慮してカイトと私と被らないようにポーラが最後方に陣取る。



グリロブスも私たちに気づき、敵と判断したようで、身体をこちらに向け、口を開いている。

うん、見た目は完全にワニだな。

ただ、近づいて向かい合ってみると、思っていたよりもでかい。

相変わらずこの森の生き物はでかいようだ。





先に動いたのは、グリロブスだった。

大きく開いた口の周りに、水が集まりだしたかと思うと、水球を作って、こちらに発射した。狙いはカイトだ。


カイトはバックステップで避けると、ジャンプしてグリロブスの頭を上から殴りつけようとして、・・・・・・避けられた。


「えっ!?」


カイトが驚きそんな声を出すと、


「お兄ちゃん、上!!」


ポーラがそう叫びながら、跳ね上がっていたグリロブスにめがけて石弾を発射した。



石弾は、グリロブスのお腹に命中すると、グリロブスはそのまま川に墜落した。



「どこ行った!?」


カイトが川に近づき、グリロブスを探す。

そのとき、いつぞやの冷たい、不快な何かを感じた。

これが、前と同じなら・・・


「カイト、伏せて!!」


カイトは私の声に従って、その場に伏せ、・・・


その瞬間、川の中からグリロブスが、カイトに噛み付こうと口を開けて、飛び出してきた。

とっさに伏せたカイトの上を、通過したグリロブスは、私たちとカイトの間に着地した。



「カイトはそのまま伏せてて!!」


カイトにそう叫ぶと同時に、いつもよりも、全体的に細く、先端を更に尖らせた、槍のような形の石弾を生み出し、グリロブスに向かって発射した。

と同時に、ポーラが手元で大きな光の玉を作り、グリロブスに向けた。



ポーラの作った光の玉は、目くらましになって、グリロブスの動きを止め、私の放った石弾、いや石槍は、グリロブスの口に入って、身体を貫いた。

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