第40話:お風呂に入ろう
『風魔法』がステータスに追加されたのを確認したので、一応詳細も見ておく。
♢ ♢ ♢
『風魔法』2
風を生み出すことができる
♢ ♢ ♢
・・・あれ? レベル2って生み出したものを操れるんじゃなかったっけ?
いや、よく考えたら、風を生み出すのと操るのって境界線が曖昧かも?
まあいいや。
『風刃』とそのままの名を付けたさっきの風の刃は、結構威力が高かったし・・・
とりあえず、当初の目的を達成しよう。
そう思い、まずは単に風を当ててみる。
うん、肩より少し伸びている私の髪が、いい感じになびいた。成功かな。
ただ、できたら温かい風が欲しい。風呂上がりに、普通の風をあびると、風邪を引きそうだし。
・・・いや、なんかこんな状態になってる私が風邪をひくとは思えないし、レーベルも魔素が豊富な場所で病気になりにくいって言ってたけどさ。
やっぱ、こういうのは大切だよね。
温かい風を出すとなると、必要なのは熱? となると、『火魔法』かな?
これまでの経験から、温度を下げる場合は『水魔法』、温度を上げる場合は『火魔法』の領域になることが、なんとなく分かっている。
とりあえず、温かい風をイメージしながら、魔法を発動してみる。
うん。成功だね。
まさに、ドライヤーだ。電源いらずの機械いらずだけど。
そういえば、2つの魔法を同時に発動って初めてやったのかな?
他にも組み合わせたらいろんなことができそうだな。
・・・・・・また、試したいことが増えてしまった。
♢ ♢ ♢
カイトとポーラの前で実演すると、2人ともすぐに、『風魔法』のレベル1を取得した。
なんとなく、ポーラはできると思っていたけど、カイトもできたのは意外だった。
やっぱり、風はイメージしやすいのかな?
そういえば、2人が最初のステータスにない魔法を使えたのは初めてかな?
2人が魔素に親和性を持つようになっているって、レーベルも言ってたし、魔法も習得しやすくなってるとか?
まあ、早速、お風呂に入ろうか。
カイトには悪いけど、一番風呂は私とポーラがもらう。
試しに、カイトに一緒に入る?って聞いてみたら、真っ赤な顔されて断られたんだよね。
ポーラと2人で、お風呂に入ろうとして、あることに気づいた。
確かに、脱衣所はいらないし、湿気が籠もるのは嫌だから、風呂場を壁で囲ってはいなかったが、何か目隠しがないとさすがに入れない。
いくらここが森の中で、カイトとレーベルが覗くわけないとわかっていても、それは別の話だ。
なので、風呂場のために岩山に空けた穴を大きく囲うように、大きめな壁を作った。
まあ、これくらいその都度、作ればいいかな。常設すると、少し邪魔だし。
というか、『風魔法』が使えるなら、風を使って換気もできるかも?
そんなことを考えながらポーラと一緒に、『身体装甲』を消して裸になり、風呂に入った。
貴族時代の記憶がほとんど無いポーラにとって、お風呂は新鮮だったらしく、キャッキャはしゃぎながら、お湯を被っている。
というか、身体洗うタオルとかもないんだよなー、それに石鹸も。
とりあえず今日は、身体を流して、お湯につかるか。
しばらくの間は、お湯は人ごとに交換だな・・・
お湯につかってみると、景色が壁だけで物悲しかったので、湯船から見上げる角度の場所だけ、窓のように壁を消して、空が見えるようにした。
日本の都会に慣れた私にとっては何度見ても新鮮で感動する、満天の星空がそこにはあった。
まあ、まだ不満というか、改善点は多いが、この世界で初めてのお風呂は最高だった。
♢ ♢ ♢
カイトとレーベルにもお風呂は好評だった。
最初、レーベルは、「執事が主と同じものを・・・」とかなんとかいってたけど、私たち3人にはない視点で見てくれるだろうし、普段からお世話になっているので、入るよう勧めておいた。
さて、ひとまずお風呂は完成したし、思っていたよりも良いものが完成したが、改めて私たちの問題が明らかになった。
そう、布だ。
いくら服が不要で、他にも魔法でなんとかなることが多いとはいっても、やはり布はなにかと必要になる。
そして、金属製品。これは調理器具としてだ。
イメージにあるのは、アルミやステンレス製の調理器具だが、おそらくこれらを手に入れるのは難しいだろう。
アルミは鉱石から金属として取り出すのに大量の電気が必要なはずだ。
カイト達の様子を見ていると、この世界に電気を使うような技術は無いと思う。
ステンレスも、調理器具で使われる様な合金を作り出すのはもちろん、加工するのはとても大変だと聞いたことがある。
まあ、どっちも魔法ならなんとかなるのかもしれないけど、とりあえずは、鉄か鋼かな?
まあ、手に入れやすさでいえば鉄か。
それに、異世界ならではの魔法的な金属にも出会ってみたい。
とはいえ、焦っても仕方がないか。
現状、仮に鉱山なんかを見つけることができても、採掘なんかできないし、鉱石から金属を取り出すこともできない。
魔法頼みになるのだ。一応、『土魔法』でなんとかなるのでは?という仮説はあるけど、あくまで仮説だ。
そう考えると、一度、人間の住む町や村なんかに行ってみるのも悪くないかな?
最優先は布だし、安い粗末なものであれば、何かしらは買えると思う。
・・・・・・お金持ってないけど。
ファングラヴィットの肉でも売れば大丈夫でしょ。
でもなー、人間の住む町に行くのも問題が多いんだよなー
まず、私の種族。
この世界の国家事情や、人種事情なんかは知らないので、後でカイトやレーベルに聞こうとは思うが、『魔竜族』なんてふざけた種族は、この世界で私しかいないと思う。
レーベルも初めて聞いたって言ってたし。
改めて、転生して異世界から来た魂が、滅んだはずの龍族の卵に融合するってどんな確率よ・・・
それに、カイトとポーラは、実家の貴族家が潰されて、村送りになり、その村から、なかば殺されるような形で、追放された身だ。
2人の安全を考えると、おいそれと人間の町に行っていいようには思えない。
・・・・・・いや、私含めて、『人間』程度じゃ、害される心配もほとんど無いのだけどさ。
となると、この森の探索範囲をもう少し広げてみるのが得策かな?
カイト達が狩ってきた、ファイファードって牛も、もう何頭か狩っておきたいし。
でも、探索範囲を広げるとなると、日帰りが少し厳しくなる。
拠点の外で寝たことはないので、少し怖い。
やはり夜の森は危険な気がする。
まあ、『竜人化』フル発動して、オーラ全開にしていれば大丈夫だとは思うが、そのオーラをたどって求愛してきたヤツもいたからなぁー
とりあえず、相談してみるか。
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