第39話:お風呂を作ろう2
レーベルの作ってくれたファイファードのステーキは、今まで食べたことのある料理の中で、一番美味しかったと断言できる。
・・・・・・まあ、所詮、前世は18年間しか生きていなかったし、転生後は継続して森暮らしという、少ない経験だが。
肉の柔らかさ、溢れてくる肉汁・・・・・・
とりあえず、肉の量的に、後20回くらいは食べられるそうなので、安心だ。
食事を終えて、レーベルに風呂のことを相談する。
「私が補強する前からこの岩山の耐久性は極めて高かったと思います。それに私が補強したのは、コトハ様がお作りになった、階段や拠点の防壁が主ですので、岩山の下部に、穴を掘って風呂場をお作りになっても問題はないかと思います。念のために、食料庫や宝物庫のある場所を避ける程度でしょうか・・・」
「そっか。ありがとう」
レーベルの確認も取れたので、さっそく風呂場の設置作業に取り掛かる
階段近く、階段のある場所を時計の12時とすると、10時くらいの場所を、風呂場にすることに決めた。
岩山の壁に、『土魔法』で穴を空けていく。掘り出した土は、後でまとめて、処理するので、ひとまず空き地に積んでおく。
地面や壁、天井は、『土魔法』により石板を作り出して、設置しておく。少し面倒だが、土のままよりは、石の方が見栄えも肌触りもいいので、ここは妥協しない。
基本的に一人で、入ったとしても私がポーラと一緒に入るくらいなので、そこまでの広さはいらない。それに、余り奥行きをとると、湿気がこもってしまい、岩山に悪影響があるかもしれない。
風呂で生き埋めなんて洒落にならない。
そういうわけで、横長の長方形型にし、左手側を洗い場として使うためのスペースとし、右手側にさっき作った湯船を設置した。
全員『水魔法』は使えるが、魔法で水を出して洗うのも手間だし、くつろげない。それに、カイトは『火魔法』を使えないので、冷たい水で身体を洗うことになってしまう。
なので、身体を洗うための水を入れておく、大きめの水瓶を設置しておく。湯を張るのと同時に、ここにもお湯を溜めるようにしよう。
風呂場は、全体的に、奥に行くにつれて、若干上り坂になるようにしてある。そして、風呂場のために空けた穴の入り口下に、深さ20センチほどの溝を掘っておく。溝は、そのまま、空き地を通って、北側入り口の前にある、堀に向かって続いている。排水溝である。
風呂場の場所から、入り口の堀まで傾斜を維持するために、最後の方は、排水溝が結構深くなってしまったが、ここは『土魔法』で板でも作って、蓋をしておけばいいので問題ない。
堀の方は、今までよりも穴を深くして、中に段を作り、水が逆流しないようにする。
風呂場の入り口下は、入るときに転ばないように、細かい穴を空けた板を作り、蓋代わりに置いておく。
試してみたが、一応、洗い場から出た排水は排水溝を通り、堀へと流れてくれた。排水溝の中に若干水が残っているし、洗い場にも水が残っているが、まあこの程度なら問題ない。
大体の水が流れれば問題ないのだ。
湯船の方は、風呂場の右側に設置し、固定するだけなので簡単だ。
湯船から溢れた水は、先程の水路に流れるように、地面の傾斜を調整しておく。
これで大体完成だ。
私たちは、『身体装甲』で服を作っているので、脱衣所なんていらないし、温泉施設にあるような休憩所は作れない。
夜風をあびながら、氷入りの『アマジュの実』ジュースを飲むくらいだ。
・・・一般的には、これもすごい贅沢らしいけど。
そんなこんなで、風呂場が完成した。
まあ、使っていれば気になるところも出てくるだろうけど、それはその都度手を加えていくしかない。
♢ ♢ ♢
その日の夜、カイトとポーラにお風呂のお披露目をした。
2人は元々、貴族なので風呂について知っていると思っていたが、よく考えるとポーラが貴族だったのは4歳ごろまでだし、この世界のお風呂とは勝手が違うかもしれない。
というわけで、2人に使い方や、目的なんかを説明したところ、カイトから思わぬ指摘がされた。
「お風呂入って、濡れた身体はどうやって拭くの? タオル?」
・・・・・・・・・・・・あ。
すっかり忘れてた。
そうだ、私たちが全く手に入れられていないもの、それは、布だ・・・
私たちのもとにある布は、カイト達の着ていたボロ着のみ。
当然、タオルなんか無い。
「・・・忘れてた。運良く布見つけてきたりしないよね?」
「そんなわけないじゃん・・・」
「ですよね・・・」
やばい、完全にやらかした。
寝間着も『身体装甲』だから、濡れててもなんとか、なるのかもしれないけど・・・
いや、ダメだ。ドライヤーとかも無いんだから、髪も乾かせないし。
・・・・・・ん? ドライヤーか。
ドライヤーって魔法で再現できたりしない?
あれって、暖かい風を出す道具だよね。まあ、この際、暖かくなくてもいいけど。
そういえば、風の魔法ってないのかな。
風でカッターみたいなの作るって結構、お馴染みな気がするんだけど・・・
そういえば、昨日の、憎きツイバルド。
あやつ、刃みたいなの飛ばしてなかったっけ。
実体というか、見えるものを飛ばしていたわけではなさそうだったし、あれ、風だったのでは?
風の刃、そのまま風刃?
うーん、昨日見たんだし、イメージはできる、かな?
試してみるか・・・
「ごめん、2人とも。ちょっと試してくるから、待ってて!」
そう言い残して、北側の出入り口を飛び出した。
♢ ♢ ♢
森に入ると、手頃な木を見つけて、準備をする。
魔獣に襲われても面倒くさいので、『身体装甲』を消して、『竜人化』で鱗を出して、オーラを放つ。
角を出したり、手を『竜人化』したりは威力が掴みにくいのでやめておく。
木に向かって、昨日のツイバルドの風刃をイメージする。
イメージするのは、三日月のような形。
大きさは、とりあえず掌サイズで、外側の部分を薄く、鋭く・・・
イメージが固まったところで、それを目の前の木に向かって真っ直ぐに打ち出すイメージをして、手に力を込めた。
手から放たれたソレは、バッシュ!っという音を立てて、目の前の木の太い枝を切り落とした。
・・・・・・よし! 成功だ。
まあ、狙いはアレだが、発射できた。
これで、風魔法を習得できたかな?
そう思い、ステータスを見ると、無事に、『風魔法』2が追加されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます