第38話:お風呂を作ろう1

なんか、もう、すごく疲れた。亜竜に間違えられて、求愛されるとは思わなかった。

・・・・・・ツイバルドめ、決して許さない。


カイトは爆笑していたし、レーベルもなんかニヤニヤしていた。

ポーラはよく分からないのか、私に抱きついてきてくれた。味方はポーラだけだった・・・



今日のカイトとポーラは、森に出て、ファングラヴィットやフォレストタイガーなんかを相手に、戦い方の練習をするらしい。

私もついて行こうかと思ったが、カイトとポーラに


「「強くなってから見せたい!」」


と揃って言われてしまい、お留守番になった。

レーベルが、「この命に代えてもお守り致します」と、頼もしく宣言してくれたので、任せることにした。

・・・だけど、レーベル。あれは、執事スイッチが入っただけだな。「ご子息ご息女を鍛えるのも執事の務め!」って言ってたし・・・

まあ、有能だし、実際助かっているし、間違いなく強いからいいんだけどさ。

それに、リンも狩った獲物の回収係としてついて行った。



そんなわけで、拠点の中をぶらぶら歩く。

作ったばかりのときは、とりあえず『セル』を囲える様にして、円状に壁を作ったので、『セル』のある場所以外は空き地が多かったが、今ではいろんなものが積んである。

切り開いたときに伐採した木がたくさんあったり、カイトが作ったと思われる、土や石の製品があったり。

そういえば、『セル』の近くに植えた『シェン』は順調に成長している。だけど、『シェンの実』を採った木のサイズになるには、もう1、2年はかかりそうだ。

というか、今更ながら、この世界の暦はどうなっているのだろうか、転生して1か月半くらい経ったかな。逆に、まだ1か月半なのか。いろいろありすぎた気がする・・・



拠点を一周し終えると、あっという間にやることがなくなった。

さすがに今日は、森には行きたくない。


拠点でできること・・・・・・

そういえば、お風呂に入りたいと、前から思っていたのを思い出した。

川からは距離があるし、水を引いてくることはできない。まあ、『水魔法』を使えば、水を溜めることはできるし、『火魔法』で加熱もできる。

風呂桶は、檜なんかあるわけないし、積んである丸太も加工なんてできない。素人が木で浴槽なんか作っても、水漏れするか腐るだけだ。

『土魔法』しかないか。『土魔法』で作った容器に、耐水性があることはこれまでの使用でよく分かっている。


となると、残りの課題は、排水かな。

『土魔法』で作った壁なんかは、消そうと思えば簡単に消せるが、あれで消せるのは、魔法で作ったものだけだ。例えばお皿に料理をのせたまま皿を消すと、上の料理は当然残っている。

これを『水魔法』でやるのは少し怖い。消した後に何か残ってたら嫌だし・・・

というわけで、水のまま捨てる方法を考える。


少量なら、拠点の周りや、堀に捨てればいいが、浴槽に張るお湯の量を考えれば、この手は使えない。

とはいえ、毎回川へ捨てに行くわけにも行かないし・・・

凍らせて、川の方角へ発射する? いやいや、さすがに迷惑すぎる。


・・・まあ、水のまま操って、森に撒くか。上空に持ち上げて撒けば、範囲も広くなって、水たまりになったりはしないだろうし、水が降ってくるだけなら、そこまで迷惑でもないだろう。


細かいことは後で考えよう。

とりあえず、浴槽と、風呂場を作ってしまおう。



まずは、場所を決めなくては。

前提として、洞窟の中か、洞窟の外、つまり拠点の空き地部分か、だが・・・


・・・・・・そういえば、岩山の10メートルほどの高さに洞窟の入り口があって、そこから真っ直ぐ奥に広がっている。

この間、拡張した際には、奥行きを広げて、リビングの下に、3メートルほど斜めに掘って、そこに、食料庫や宝物庫を作った。

食料庫や宝物庫の下は、斜めに掘った通路の、最深部と同じ高さだ。

とすると、この岩山の、下側5メートル辺りまでは、何も手が加えられておらず、浴室用の穴を掘っても問題はないか・・・


まあ、勝手にやって崩れても困るし、レーベルがいろいろ補強や整備をしてくれていたので、浴室の場所は、後で相談しよう。


そう思い、まずは湯船を作ることにする。

湯船は、1人が足を伸ばしてゆっくり浸かることのできる大きさ。大体長さは2メートルくらい。

今は、私がカイトよりも大きいけど、これからカイトに身長を抜かされると思う。

毎日、あんだけ動いて、食べて、寝ているわけだし。

というか、レーベルもいる。彼は成人男性サイズだ。


そういうわけで、成人男性が余裕で入れる大きさにしておいた。

深さは、肩まで浸かれる深さを前提として、足置き兼、半身浴用の段差を作った。長風呂するときは、こっちに座ろう。


後は、強度をとにかく高める。

両腕と両手を『竜人化』させ。角を生やす。

高威力魔法戦闘スタイルだ。

これで攻撃するときは威力が増す。もっとも、本質的には魔法自体がいろいろ強力になっているので、造形物を作る際に有用だと思ったので試してみたが、おそらく正解かな。



そんなこんなで、形をいろいろ変えながら、浴槽が完成した。



 ♢ ♢ ♢



次は、浴室かと思っていると、カイト達が帰ってきた。

2人ともすごく満足そうだし、うまく狩ることができたんだろう。

とても、話したそうにうずうずしている感じだ。


「お帰り。狩りはうまくいった?」

「うん! こーんなにおっきな、牛を倒したよ!」


両手を一杯に広げて、ポーラがそう自慢げに伝えてくる。

ほんとに、いちいち動作がかわいいな、この子・・・


「牛?」

「はい。正確には、『ファイファード』という牛型の魔獣になります。お二人が倒しました」


レーベルがそういうと、リンが『マジックボックス』から、そのファイファードと呼ばれた魔獣を取り出した。

・・・うん、確かにでかい牛だな。

けど、角の形が、牛というよりは、牡鹿に近いような気がする。片方折れてるけど。


「こんなに大きいの、2人で倒したんだね。すごいね!」


そう、少し大袈裟なくらい褒めてあげると、2人とも、嬉しそうにこちらを見上げてきた。

あー、なるほどね。

2人の頭を順に撫でてあげると、嬉しそうに抱きついてきた。



レーベル曰く、ファイファードのお肉は、とても美味しいとのこと。

カイトが言うには、ファイファードのお肉を使った料理は、王侯貴族が、特別なパーティーなんかで出す、至高の逸品なんだとか。



当然の如く、レーベルが解体から調理までできるらしいので、お願いする。

楽しみだ・・・

あ、でもその前に、浴室のこと確認しないと・・・

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