第37話:勉強しよう②ー2

レーベルのおかげで、魔素についていろいろ知れたし、カイト達が無詠唱かつ高火力の魔法を使える理由もわかった。

それに、2人の“思い”を聞けてよかった。


レーベルは、続けて、『アマジュの実』の効果についても説明してくれた。


「『アマジュの実』には多くの魔素が含まれています。『アマジュの実』は、1つの実から、数百回分の魔法薬を作り出すことが可能と言われています。当然、『アマジュの実』をそのまま食せば、その魔素を直接、体内に取り込むことができるのです。そのため、『アマジュの実』を一口食べただけで、軽い怪我や疾患なら回復するでしょうし、『アマジュの実』から作ったジュースを飲めば、疲労ごとき簡単に回復するのです」

「・・・なるほど。でも、2人に最初に出会ったときにも、『アマジュの実』を食べさせて、傷とか痣とか治ったよ? その時点では、2人とも普通の『人間』でしょ? 『人間』が魔素を取り込んでもあんまり意味が無いんじゃないの?」

「確かに、基本的に『人間』は魔素をうまく体内で扱うことはできません。しかし『人間』であっても少しは魔素を保有しています。魔素濃度が低い地域でも生活に支障はありませんが、魔素があればその恩恵を多少は受けられるのです。

そして、『人間』が、魔素を魔力に変換するのが不得手なのは、自然の魔素には、他に多くのもの、言ってしまえば不純物が含まれているからです。『人間』には、それを取り除き、純粋な魔素を利用する能力はありません。

それに対して、『アマジュの実』に含まれる魔素は、不純物が取り除かれた純粋な魔素ですから、『人間』が食べても、一定の効果があります。もっとも、魔素への親和性の高い『魔族』などが食するのと、効果の違いは歴然ですが。そのため、昔の『人間』は、『アマジュの実』の効果を最大限に発揮できるように、『アマジュの実』を材料とした魔法薬の製作に取り組んだのです」


なるほどね。

魔素への親和性の低い『人間』でも、『アマジュの実』を一口でも食べれば、軽い怪我なんかは治癒する。それが魔素への親和性の高い『魔族』なんかであれば言わずもがな。

そして、既に魔素への親和性の高い、『人間』とは言えない状態に至っているカイトは、『アマジュの実』から作ったジュース —それこそ普通に食べるより魔素が多いのかも— を飲んだら、疲れなんて吹き飛ぶわよね。



「じゃあ、万が一に備えて、『アマジュの実』は大量にストックしておかないとね」


そう言うと、レーベルが、


「確かにそうしておけば安心ですし、賛成でございます。もっとも、先程申しましたように、身体を構成する魔素の割合が多い種族は、魔素を循環させて、生きています。その効果として、魔素が豊富な地域では、怪我や病気になりにくく、また、なった場合の治癒も早いと言われています。さらに、疲労の回復も早いのです。これは魔素を循環させているため、絶えず身体組織において新陳代謝がハイスピードで行われているためになります。

ですので、お三方とも、この森で生活している限り、基本的に怪我等になりにくく、完治も早いのです。そのため、薬として『アマジュの実』が必要な場面は少ないかと思います」

「そっか。・・・でも、この間のグレイムラッドバイパーのこともあるし、備えあれば憂いなしよね」

「左様でございますね」


とりあえず、納得だ。

それに、『アマジュの実』の有用性も再確認できた。

食事の時間がとても長くなり、ポーラは眠そうだ。カイトも、『アマジュの実』で回復したとはいえ、寝るのが一番だろう。


そういえば私も、探索やら戦闘やらで、疲れた気がする。

そう思い、片付けをレーベルに任せて、先に3人で寝ることにした。


今日は、ポーラが、私の寝床に入ってきたので、一緒に寝た。

カイトも誘えばよかったかな?



 ♢ ♢ ♢



翌日、今日は家でゆっくりすることにした。

ここのところ、探索しては戦闘しての繰り返しで、疲れてしまったのだ。

実際、ワンパターンとはいえ、ファングラヴィットの貯蔵はまだあるし、レーベルの食事のレパートリーはまだあるそうで、急いで新しい食料を探さなくてもいい。


そういうわけで、今日は、拠点の空き地でゆっくり日光浴でもしようかと思っていると、リンが私の前に跳ねてきた。

そして、「これ、どうするの?」と問いかけてきた。


「ん? ・・・・・・・・・あ、忘れてた」


ツイバルドのことをすっかり忘れていた。

昨日帰ってきてから、カイト達の訓練見たり、ジュース作ったり、レーベルの授業受けてたからなー

そう思い、カイト達とレーベルを呼んだ。


「いかがなさいましたか?」

「どうしたの、お姉ちゃん」


レーベルとカイトがそう聞いてくるので、リンにツイバルドの死体を出してもらう。


「お、お姉ちゃん、これは!?」

「ツイバルドって亜竜らしいよ? 昨日襲われて倒したの。すっかり忘れてたのよね」

「つ、ツイバルド?」

「うん。カイトは知らない?」

「・・・うん。聞いたことない」

「レーベルは?」

「一応、存じてはおります。ですが、ツイバルドがコトハ様を襲ったのですか?」

「ええ。歩いていたら、いきなり上から攻撃された」

「・・・なるほど。確か、ツイバルドは基本的に空を飛んで生活し、巣は高い木の上や、断崖絶壁などに作ったと記憶しております。獲物は鳥や、鳥型の魔獣が主で、地上の生物を襲うことはあまりなかったと思うのですが・・・」


うーん。それなら、なんで私は襲われたんだろう。


「私から仕掛けたわけでもないしね・・・」


レーベルは少し考えて


「・・・あ」


と呟くと、ツイバルドの身体を調べ始めた。

そして、


「コトハ様、確認させていただきたいのですが、ツイバルドに襲われる前に、オーラはどうなさっていましたか? 絶えず、オーラは隠していたのでしょうか?」

「えーっとねー・・・。確か、集まってきたファングラヴィットとかを追っ払うために何回か、解放したかな?」

「なるほど・・・。もしかいたしますと、ツイバルドは、コトハ様に求愛行動をとったのかもしれません」

「・・・・・・・・・はい? 求愛行動?って、あの相手探すときのアレ?」

「左様でございます。ツイバルドは、オスがメスに対し、自分の強さを見せつけて、それをメスが受け入れて、番となります。コトハ様への攻撃は、それだったのではないかと・・・」

「え、でもさ。私、ツイバルドじゃないよ?」

「はい。ですが、龍族に近いオーラを放っておられます。このオーラは、一般的な魔獣にとっては、ただただ畏怖するものです。ですが、亜竜であるツイバルドにとっては、同族に近いオーラといえます。そして、コトハ様がオーラを解放したのならば、それは強烈です。ツイバルドにとって、失礼ながら、強いメスがいると誤解したのではないかと思われます。生き物は、子孫を残すため、番に強きものを求めます。つまり、このツイバルドは、コトハ様を強いメスと誤解し、コトハ様に求愛行動をとったのではないかと、そう愚考致します」

「・・・・・・・・・な、なによそれ!!」


え? 私、ツイバルドに求愛されたの? 首2つの、亜竜に?

・・・・・・勘弁してよ。

なんで、こう、男運無いのよ。

いや、ツイバルドを男運に含めていいのか分かんないけどさ!!









ちなみに、ツイバルドの肉はまずくて、食べられたものではなかった。

収穫は、魔石だけだった。

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