第11話:いろいろ試してみよう

「・・・・・・・・・へ?」


思わず、そんな間抜けな声が出てしまった。

いや、威力高くない?

フォレストタイガーを貫通して、後ろの木まで吹き飛ばしたんだけど・・・



「コトハ姉ちゃん、すっごーい!!」


ポーラが、純粋に褒めてくれた。

その声で、我に返った。

・・・カイトはいつも通り、驚いているようだ。


とりあえず、フォレストタイガーは動く気配がない。

そりゃ、頭半分が吹き飛んでるわけだし、そりゃ、死んでるよね・・・



「・・・あの虎って食べられるのかなぁー?」


そんなことをボソッと呟くと、カイトに止められた。


「食べられなくはないと思うけど、解体にすっごく時間かかるよ。ここから洞窟に持って帰ることもできないし、諦めた方がいいと思う・・・」

「だよねー。何かに使えるかもしれないから、毛皮とか牙だけでも回収できたらよかったんだけどなー」

「あ、それなら大丈夫だと思う。死んだばかりの大きな魔獣は、まだ肉が固いから、肉まで解体するとすごく時間がかかるんだけど、毛皮を剥いだり、牙を取ったりするのはできると思う。あと、魔石も回収できると思うよ。お姉ちゃんが、その、頭と一緒に体の一部を吹き飛ばしたから、魔石見えてるし・・・」

「・・・おー! じゃあ、それだけ回収しよっか!」

「うん!」

「わかったぁ!」


そういうと、カイトは昨日のファングラヴィットの牙をナイフの様に使って、フォレストタイガーの毛皮を剥ぎ、牙や爪を取り出した。魔石も無事に回収できた。

カイトは毛皮を使えるようにする処理も知っているようで、そこまでやってくれた。

カイト有能すぎる。

ポーラも解体した牙や爪を集めてくれていた。

私は、解体を手伝えることはないので、新たな魔獣が襲ってこないように、周りを警戒していた。


ファングラヴィットの魔石は、握り拳ほどの大きさだったが、フォレストタイガーの魔石は、ボーリングの玉ほどの大きさがあった。

でかいし、重い。



回収した、毛皮や牙・爪、それに魔石を持って、一度洞窟に帰ることにした。

狩り、なのかは分かんないけど、成果物を毎回持って帰らないといけないのは少し不便だ。

・・・けど、森に置いておくわけにもいかない。

そう思いながら、3人で頑張って、洞窟へ持ち帰った。



 ♢ ♢ ♢



洞窟に戻り、昨日のファングラヴィットの魔石を置いているところに、フォレストタイガーから採った素材を置いておく。



『アマジュの実』を食べて、再び森へと繰り出す。


やはり川の近くには魔獣が集まるみたいなので、川の方向へ向かうのは止めておく。

飲み水は、魔法でどうにかできるので、川に行くのは必須ではないし。



行ったことのない方向、洞窟の入り口があるのと裏側を目指すことにした。

なにか危険な魔獣と遭遇しても逃げられるように、洞窟のある崖から、そんなに離れないように、散策していく。



少し歩いたところで、ポーラがビー玉サイズの木の実を拾ってきた。

『鑑定』してみたところ、



 ♢ ♢ ♢


『セルの実』

 セルの木になる実。中心にある種を守るために塩分が豊富に詰まっている。


 ♢ ♢ ♢



「・・・『セルの実』ね」

「『セルの実』!?」


カイトがいつものように反応した。



カイト曰く、皮をむいて、実を砕き、中心にある種を取り出してから、種を覆っていた実の部分を煮出すと、塩が採れるらしい。


「・・・塩か。塩分、欲しかったんだよねー

カイトもこの実から塩作ることできる?」

「できるよ。『セルの実』ほどたくさん塩は採れないけど、同じやり方で塩を取り出せる木の実はいくつかあるから、やったことあるし」

「・・・そっか。そしたら、『セルの実』集めようか!」

「はい!」

「うん!」



カイト達と一緒に、『セルの実』を集めた。

ポーラに見つけた場所を教えてもらい、その周辺を探すと、『セルの実』が生っている木をいくつか見つけることができた。

『アマジュの実』のときと同じく、階段を作って『セルの実』を集めた。



『土魔法』で作った箱いっぱいに、『セルの実』を入れて、もう少し周りを調べてみた。

けど残念ながら、それ以外に食材になりそうなものを見つけることはできなかった。

森の中で、食材を探すって大変なんだなぁ・・・



カイトとポーラには、洞窟に戻って、集めた『セルの実』を使って、塩を作ってもらう。

そう思い、木の実を砕く用のボウルのような容器や、実を煮出す用の鍋、煮出した塩を保存しておく入れ物を用意し、たき火の準備をしておく。

鍋に入れる水は、カイトとポーラに『水魔法』で出してもらうことにした。


カイト達の前で『水魔法』を実演する。2人に、私のやった様子を強く思い描くように伝える。

2人は、手を鍋にかざし、むむむーっ!と強く睨みながら、「水よ!」と叫んだ。

すると、2人の手のひら辺りから、水が鍋に向かって放たれた。


「やったぁー! できたぁー!」


とポーラが叫び、カイトも嬉しそうに鍋を見つめてた。

2人にその調子で、水を出して、『セルの実』を煮出しておいてもらうことにした。


・・・・・・にしても2人とも、能力高すぎでしょ・・・



 ♢ ♢ ♢



その間に私は、食材を探しながら、魔法の練習をしてみることにした。

さっきのフォレストタイガーは、『自動防御』がうまく発動して、『土魔法』の石の弾丸が運良く命中したため事なきを得たが、ラッキーだった。


あのフォレストタイガーが、昨日カイト達を襲ったのと同じ個体かどうかは分からないが、これからも遭遇する可能性は低くない。

それに、フォレストタイガー以外にも危険な魔獣がいるかもしれない。

・・・いや、確実にいる。クライスの大森林は危険らしいし、転生してからたった3日でこれだけ化け物みたいなやつに遭遇しているのだから、今後も遭遇すると思っておくべきだろう。


そう思いながら、『セルの実』を見つけた場所から、もう少し森の奥に入っていく。

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