第12話:持ち帰りの方法を考えよう

森の奥に入ってから、2時間ほどが経過した。

戦果としては、ファングラヴィットを3羽狩ることに成功した。上々だ。

・・・そういえば、ウサギだから、羽でいいのかな。魔獣だし、別物として、匹にしておくべき?



カイト達は洞窟で塩の精製に取り組んでるため、一緒にいない。

当然、私は解体なんてできないので、狩ったファングラヴィットの牙を折り、胸元を雑に切り開いて、なんとか牙と魔石だけ回収した。

カイトは牙をナイフみたいに使っていたし、私にも使えた。

魔石は、カイトも貴重だと言っていたし、ラノベとかのお約束だと、魔石はいろんなことに使えるはずだ。


・・・それにしても、狩ったファングラヴィットから魔石を取り出すとき、それほど躊躇しなかったな。血がドバドバでてるのとか、前世の私なら卒倒モンなんだけど・・・

それに、戦うのも。カイト達を助けたときや、さっき襲われたときはビビったけど、すぐに戦いに向かっていってるよなぁー

焦って、フォレストタイガーは、オーバーキルかましたけど・・・



・・・・・・『精神耐性』かな。精神的な攻撃には、魔法とか以外にも、グロい系や本能的な恐怖も含まれるんだ。

それに私の『精神耐性』はレベル3だった。それが理由かな。



カイトやポーラは、フォレストタイガーに対しては、怖くて固まってたけど、ファングラヴィットやフォレストタイガーを解体するときは、特に躊躇ったりしてなかったよね。

これが、この世界で生まれた者との違いか・・・

彼らが逞しいだけか。


そんなことを思い、3羽目のファングラヴィットの魔石を回収し、残りを『火魔法』で燃やしてしまう。

最初は『土魔法』で穴を掘って埋めていたが、穴まで死体を引きずるのも結構大変だし、めんどうくさい。

要は、血のにおいに釣られて捕食者がやって来なければいいので、ガスバーナーをイメージしながら、強めの火力で、ぱっぱと燃やしてしまう。



 ♢ ♢ ♢



次の獲物を探しながら、どうにかして、狩った獲物を持ち帰ることができないものかと考える。

現状、狩った獲物からお肉を得て持ち帰るには、解体が必要だ、つまり、カイトにも森に来てもらう必要がある。

しかし、カイトはまだ森で戦うことはできない。そのため、私が狩るまでは、カイトにただ、付いてきてもらうだけになってしまう。それでは効率が悪い。


・・・獲物を持ち帰る方法。

まず思いついたのは、『土魔法』で台車のようなものを作る方法だ。これなら、狩った獲物を台車に乗せれば、洞窟まで運ぶことができる。

しかし、私の狩り方だと、必ず獲物は出血する。というか、一部分が抉り取られる。

さっき私の倒したファングラヴィットなんて、頭部は下顎しか残ってなかった・・・

力加減をだんだん分かってきて、フォレストタイガーのときみたいな超火力を使うことはなくなったが、飛ばすスピード加減や、方向の調整は依然として大雑把だ。


森の動物は、数キロ先の血のにおいも嗅ぐことができるとか聞いたことがあるし、ここは異世界。めちゃくちゃ鼻のいい魔獣とかいるかもしれない。

その中を、血だらけの獲物を引いて移動するのは危険すぎる。それに、洞窟に魔獣をおびき寄せかねない。


なら、空中に浮かべてみるのは?

生み出した土の塊を操れるのだから、採った獲物も操れるのでは?と思ったが、無理だろう。

『土魔法』で生み出した石の弾丸を操れるとはいえ、いまできるのは、一方向に一定の速度で打ち出すことだけだ。レベルが上がればもっと自由自在になるのかもしれないが、現状では無理。

そもそも、『土魔法』とは関係ない獲物を、操れるとも思えない。

それに、空中に浮かべても匂い問題はなにも解決しない。



そうすると、匂いを消せて、自由に動かせる方法かぁ・・・・・・





なんか、異空間みたいな所に収納できたらいいよね・・・・・・




「アイテムボックスか!」




そうだよ! 異世界系のお約束、アイテムボックス!

作品によって呼び方は変わるけど、私が好きだった作品だと、アイテムボックスって呼ばれてた、いくらでも物を収納できて、時間経過による劣化とかもしない万能な、あれ。





・・・でも、アイテムボックスなんてどうやって使うんだろう。

そう思い、自分のステータスを思い出すが、当然アイテムボックスなんてない。



とりあえず、いままで通り、イメージでゴリ押してみることにした。

自分の目の前の空間に穴が空くイメージで、物を入れられる様な・・・



 ♢ ♢ ♢



30分ほど試したがうまくいかなかった。

まあ、そうだよね、と納得しながらも、少し落ち込んだ。



仕方ないので、一度、洞窟へ帰ろうと思い、踵を返した時だった。

目の前の木の陰から、小さな物体が飛び出してきた。



魔獣!っと思い、すぐに石の弾丸―ダサいので、『ストーンバレット』と呼び、発動するときも叫んでいる—を打ち出そうとして・・・・・・


「スライム? やっぱこの世界にもいるんだぁー!」


透明で、少し横長の球体型。プルプルと震えながら、ゆっくり進んでいくその姿は、とてもかわいらしかった。

・・・思えば、この世界に来てから見た生き物は、どれも見た目が怖かった。

バカみたいにでかかったり、首が2つあったり、長い牙があったり、と。


その反動なのか、この子の本来のかわいらしさが原因なのか、私はすっかり目の前のスライムに絆されていた。



・・・・・・気を取り直して、目の前のスライムを『鑑定』する。そもそもスライムじゃない可能性もあるし。


 ♢ ♢ ♢


『???スライム』

??????????


 ♢ ♢ ♢



・・・・・・・・・ん?

『鑑定』結果が?なんて、初めて見た。

失敗したってこと? いや、スライムって部分は見えてるから、それ以外が失敗―『鑑定』できなかったのか。


とりあえず、何らかのスライムであることは間違いない。

そう思い、目の前のスライムを観察する。

相変わらずプルプルと震えながら移動し、木の根元を這っている。

・・・うん。ほんとにかわいい。


少しの間、ぼーっと目の前のスライムを見つめていると、


「・・・・・・・・・ペットにしたいなぁー」


そんなことを呟いてた。


すると、目の前のスライムのいる地面が黒く光り、魔法陣のようなものが現れた。


驚いて、スライムとの距離を取り、スライムの様子を観察する。

攻撃されるかもしれないので、何時でも『ストーンバレット』を放てるように、石の弾丸を作っておく。

・・・しかし攻撃されることはなく、スライムはその場でじっとしていた。


現れた魔法陣は、グルグルとゆっくり回転し、スライムを黒い光で包んでいった。

そのまま黒い光でスライムが覆われ、スライムは見えなくなった。



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