第6話:食材を集めよう1

カイトとポーラの2人と一緒に暮らすことになった。

聞いてみると、カイトは12歳、ポーラは6歳らしい。

カイトの身長は私の鼻くらい。私が164センチだから、150センチくらいかな?

茶髪が目にかかるくらいで、髪はボサボサだ。

顔は、綺麗な青い瞳に、高い鼻。貴族出身なだけあって、既に完成されている。これは、モテるんだろうなぁー。

ただ、着ているのはボロボロの麻のようなシャツに、膝丈の半ズボン。

見えている肌には、細かい傷や、痣のような痕がいくつもある。とても痛々しい。


ポーラは、110センチくらい?抱いてて思ったけど、とても痩せている。

カイトと同じ茶髪が、肩くらいまで伸びているが、こちらもボサボサだ。

顔はカイトと同じく既に完成されていて、将来美人になることが確定している。

クリクリの大きな目がとってもかわいらしい。

ポーラにも、至る所に、傷や痣の痕があった。

ポーラは自分がもともと貴族家の出身だということは知らないらしく、逃げたメイドのことも覚えていないらしい。


そんな風に、2人の情報を得ながら、カイトに1つ伝えておく。


「カイトさ。敬語使うの止めてくれない? なんか慣れなくて。普通に話して欲しいんだけど・・・」

「えっと、わかりま、した、いや、わかった。ごめん、村でも敬語は気持ち悪いって言われてたんだけど、小さいときから敬語でしゃべるように言われてきたから・・・」

「あ、ごめんね。気持ち悪いとかじゃないんだ。敬語使われることに慣れてないだけでさ。ゆっくりでいいからね」

「うん!」


部活も習い事もしてなかったし、高校3年生に向かって敬語で話すやつなんてほとんどいない。むしろ、バイトで私が敬語で話していたくらいだ。

そんな風に、気になっていたことを伝えつつ、今後のことを考える。

暮らしていく以上、必要になるのは、やはり食事と水、それから寝る場所だ。

寝る場所は、この洞窟で一緒に暮らせば問題ない。

水は魔法でなんとかなるとして、食事をどうにかしなければいけない。



ひとまず、カイト達に出会う前に採ってきた、『アマジュの実』を、土の箱から取り出して、2人の前に差し出す。


「コトハ姉ちゃん、これなぁに?」


ポーラは私のことを、”コトハ姉ちゃん”と呼ぶようになった。首を傾げながら問いかけるポーラはめちゃくちゃかわいい。

ちなみにカイトは”お姉さん”から、ポーラに合わせて”お姉ちゃん”と呼ぶことにした。”お姉さん”はなんか堅苦しいから、”お姉ちゃん”のがいいんだけど、なんだか恥ずかしそうに呼ぶ。これはこれでかわいい。


「『アマジュの実』よ。美味しいから食べてみて?」


そう、何気なくポーラに答えると、


「『アマジュの実』!!! ポーラ!それ、ゆっくり箱に戻して!」


カイトが、焦ったようにポーラに向けて叫ぶ。

ポーラはびっくりしたように、『アマジュの実』を、箱に戻した。


「カイトどうしたの? 別に食べても問題なかったよ? 『鑑定』スキルで調べても、食用って書いてあったし・・・・・・」


そう告げると、カイトは信じられないものを見るような目で私を見つめながら、


「お姉ちゃんが、『鑑定』のスキルを使えることも驚きだけど、『アマジュの実』を食べたことのがもっと驚きだよ・・・・・・

『アマジュの実』って、伝説の木の実だよ?! 誰でも知ってるけど、誰も見たことも食べたこともない木の実! 大昔にこの木の実をめぐって戦争があったっていう!」


驚いた。確かに『アマジュの実』は美味しかった。

けど、この木の実をめぐって戦争したぁ? 伝説の木の実ぃ?

さっき採ったところの周辺に、たくさん『アマジュ』は生えてたし、そのどれもが多くの実をつけていた。それをみて、しばらくは食事に困らないと安堵したほどだ。


「でも、この近くにたくさんあるよ? 『アマジュ』がたくさん生えてるところがあって、木の実もたくさん生ってるの。カイトのいうように『アマジュの実』が貴重なものだとしても、今はそれを売ったりする相手もいないしさ。お腹空いてるでしょ? 2人とも食べちゃいなよ」

「・・・・・・だけど、「いっただきまーす!」あ、こら! ポーラ!」


迷うカイトを無視して、ポーラは大きな口を開けて『アマジュの実』に齧り付いた。


「おっいっしぃー!!」


ポーラが満面の笑みで叫び、『アマジュの実』を囓っていく。

その様子を見ていたカイトも躊躇いながらも、『アマジュの実』に齧り付いた。


「お、いしい・・・」

「でしょー? 近くにたくさん生ってるから、後でもっと採ってこようね」


そんなことを言いながら、私も箱から『アマジュの実』を取り出そうとすると、突然、カイトとポーラの体が光り出した。


「カイト!? ポーラ!?」


私は思わず叫び、2人に駆け寄る。しかし、2人は焦った様子もなく、


「お姉ちゃん、大丈夫! なんか、体の痛いところが治ってくみたい。傷とか、殴られた痕とか」

「私も痛いの無くなったよ−」


カイトとポーラがそういい、私は安堵しながら2人を見つめた。


数分ほど経って、2人の体から光が消えた。

2人の様子を確認すると、確かに体中にあった、細かい傷や痣の痕などが消えている。


一体どういうことなのか?

・・・原因はどう考えても、『アマジュの実』だ。

これを食べたら、2人の体が発光して、傷が癒えた。


・・・そう思いながら、私も『アマジュの実』を囓る。しかし、何も起こらなかった。

私には怪我とか無かったから、反応しなかったんだろうか?

そういえば、『自動回復大』とかいうスキルがあったな。あれのおかげで、治ったのかな?


「とりあえず、怪我が治ったのならよかったよ。・・・カイトはなんか知ってる?」

「・・・うーん、確か、『アマジュの実』は、いろんな薬に使えるって習ったと思う」

「・・・・・・なるほど、ね。『アマジュの実』が、貴重な薬の材料なら、そのまま食べても、効果があったってことなのかなぁー」


習ったってのは、家庭教師とかにかな?

元は貴族だったわけだし、小さい頃からたくさん勉強したんだろう。

これ以上は考えても仕方がない。とりあえず、『アマジュの実』が食事としても、怪我を治す薬としても有用な木の実であることは確認できた。

これから3人で暮らすわけだし、もう少し確保しておきたい。


「まだ、暗くなってないだろうし、私は『アマジュの実』を追加で採ってくるね。2人はどうする?」

「私もついて行きたーい!」


ポーラがそう答え、カイトも、


「お姉ちゃんだけに、任せる訳にはいかないです、あ、い、いかないから、僕たちも行きます!」


といいながら立ち上がった。


「そっか。それじゃ、3人で採りに行こっか。

あー、でも、さっきの虎がいそうなら、やめておくからね?」

「うん!」

「はい!」


そういうと、3人で洞窟の出口に向かって歩き出した。

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