第7話:食材を集めよう2
洞窟の出口につくと、土の壁を、3分の1ほど消して、洞窟の外を確認する。
洞窟前の足場にはなにもいないようだ。
残りの壁も消して、3人で洞窟を出る。
カイトとポーラは、目の前に広がる、広大な森を見て、言葉を失っている。
「ここから右側、あの辺に川みたいなのが見えるでしょ? あの川を目指してたときに、2人を見つけたんだよ」
「・・・ということは、あの川が、僕たちが流れてきた・・・・・・」
「たぶんね。それで、反対側、左手に少し行くと、『アマジュ』がたくさん生えてるところがあるよ。とりあえず、そこを目指そっか」
「はい」
「はーい!」
崖を下る階段を作り、私が先頭に立って階段を降りていく。
カイトはポーラの手をとって、ゆっくり降りていく。カイトはいいお兄ちゃんだね。
下につくと、階段を消して、土を耕した跡を見つけ、それをたどっていく。
歩いているとカイトが、
「お姉ちゃんは魔法が得意なんだね。僕たちを助けてくれた『ファイヤーウォール』もすっごい大きかったし、『土魔法』で階段とか壁も作っているし。それに『鑑定』スキルまで使えるんでしょ?」
『ファイヤーウォール』か。確かに、『火の壁』よりそっちの方がかっこいい。
どうせイメージを補完するために叫ぶんだから、今後はそっちを使うようにしよう。
今更だが、私はなんでカイトやポーラと話せてるんだろうか。2人の話す言葉が日本語である可能性なんて無に等しいし、これも魔法的ななにかなんだろうか・・・
まあ、話せてるんだから深く考えてもしょうがないか。
考えずに先送りしていることが多い気はするけど、分かんないものはしょうがない。
そんなことを考えつつ、
「・・・そうなのかな? なんか魔法は使えるみたいなんだけど、他の人がどんな風に魔法を使うのか知らないから・・・」
「・・・うーん。『人間』で魔法が得意な人はあんまりいないかな。軍閥系の貴族とか騎士の人とかは得意だって習ったけど。普通の人はほとんど使えないよ? カナン村にも使える人はいなかったし。 『エルフ』とか『魔族』とかは魔法が得意みたいだけど」
・・・・・・あー、はい。私『人間』じゃないから・・・
種族『魔竜族』だからかなー
っていうか、『エルフ』とか『魔族』っているんだー
「貴族ってことは、カイトも魔法を使えるの?」
ポーラに聞こえないように聞いてみると、
「分かんない。父上は使えたらしいけど、魔法の練習をする前に、カナン村に行くことになったから・・・」
「・・・そっか。・・・あと、『鑑定』も珍しいの?」
「・・・・・・うん。・・・・・・『鑑定』は、稀少スキルだよ。たまに、大きな商会に使える人がいるくらいかな」
「そうなのね・・・」
カイトはさすが元貴族家出身だけあって、この世界の常識なんかに詳しい。
どうせいつかはバレるんだし、迷ってはいたが、思い切って聞いてみることにした。
「・・・・・・じゃあさ、『魔竜族』って種族は聞いたことある?」
「・・・・・・・・・『魔竜族』? 『魔族』じゃなくて?」
「うん。『魔竜族』」
「・・・お姉ちゃん、その、『魔竜族』なの?」
「・・・うん。そうなんだよね。見た目は『人間』と変わんないと思うけど・・・」
カイトは今日、何度目かの驚いた表情を向けながら、
「『魔竜族』って種族は聞いたことないなぁー。『魔族』の親戚なのかな? それならお姉ちゃんが魔法が得意なのも納得だけど・・・
お姉ちゃんに竜っぽさはないなー」
と、すこし笑いながら答えた。
「竜・・・っていうか、ドラゴンっているの?」
「いるよ? 見たことはないけど。ドラゴンは、険しい山の上とか、深い海の中とか、普通はいけないところに住んでるらしいよ・・・」
「・・・クライスの大森林にもいるの?」
「分かんない。ここ数百年、クライスの大森林に入って、帰ってきた人はいないから。クライスの大森林は、『人間』だけじゃなくて、『エルフ』や『魔族』も入らない場所だから・・・」
「・・・・・・改めて、ここって危険な場所なのね・・・」
クライスの大森林が危険な場所だとはしても、見渡す限り森しか見えないのだから、しばらくはここで暮らしていくしかない。
さっきの虎のこともあるし、戦えるようにならないといけないんだろうか・・・
♢ ♢ ♢
10分ほど歩いて、『アマジュ』が生えている場所に到着した。
「ね? たくさん生えてるでしょ?」
そう、カイトにいうと、
「・・・ほんとだ。伝説の木の実なのに・・・」
と、カイトは呆然としながら答えた。
「コトハ姉ちゃん! すごいよ! これ全部さっきのおいしい木の実なの!?」
ポーラは木の実を見上げながら、はしゃいで、飛び跳ねている。
うん、かわいい。
「そうみたいよ。たくさん生えてるから、いくつか採って帰ろうね。今、足場を作るから」
そういって、『土魔法』で階段を作る。階段は作りすぎて、何も言わずとも、自然と作れるようになってしまった。
できあがった階段を、ポーラが走って駆け上がっていく。それを見て、カイトがオロオロしながら、
「ポーラ!! 走っちゃダメだ! 落ちたらどうするんだ!」
と叫んでいた。
ポーラは、「大丈夫だよぉ−」と言いながらも、走るのをやめ、ゆっくり階段を上っていく。基本的に、カイトの言うことを聞くみたいだ。
♢ ♢ ♢
『アマジュの実』を30個ほど収穫し、洞窟へ帰ることにした。
カイトは「『アマジュの実』がこんなに・・・」と、変なものを見るような目をしていたが、慣れるしかない。
洞窟に向かい歩いていると、木の根元を前脚で掘っている、ウサギのような動物を見つけた。
『鑑定』を発動してみると、
♢ ♢ ♢
『ファングラヴィット』
クライスの大森林に生息するウサギ型の魔獣。鋭い牙をもち、俊敏に動き回る。
♢ ♢ ♢
まあ、ウサギだよね。でも、ウサギ型の魔獣ってことは、このウサギは動物ではなく、魔獣ってことなんだろうか・・・
まあとりあえず、でかいんだよね。
見た目はウサギなんだけど、動物園なんかで触れあえるサイズのウサギではなくて、大型犬くらいのサイズがある。
そういえば、カイト達を襲っていた虎も、虎型の魔獣ってなってたな。
・・・・・・うん、わかんない。
けど、木の実だけの生活をしていくよりも、タンパク質、肉は必要だ。
栄養バランス的な常識がどこまで通じるかも謎だけど、とりあえず肉は食べたい。
よし! このウサギを狩ることは確定だ。
・・・でもどうやって?
『鑑定』結果によれば、このウサギは俊敏に動き回るらしい。
まあ、ウサギだしね、でかいけど。
このサイズが俊敏に動いたら、怖すぎるんだけど・・・
しかしそうなると、気づかれずに捕まえるしかない。
だが、不用意に捕まえようとすれば、反撃されるかもしれない。
ここからは見えないが、鋭い牙があるらしい。
少し考えて、石を頭にぶつけてみることにした。
といっても、近くに落ちてる石を投げつけても、非力な私が投げた石で、ウサギが死ぬわけない。
・・・というわけで、『土魔法』で石を、ウサギの頭の上に作って、落下させてみることにした。
作る石のサイズを大きめにしておけば、投げつけるよりも効果があるはず!
ということで、カイトとポーラに手招きし、私の後ろに下がらせた。
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