第15話 決戦前夜 2

「注射器に入れる時点で液体まみれなんだよ?つまりはカプセルが溶けて裸の久美ちゃんが死ぬ・・・。」

だったら体外で戦えば良い!

 咄嗟に亮一から出た言葉に全員一致で賛成した。

そして各々の持ち場に散り尻バラバラ戻って行った。

亮一はスーランから新型クロスの注文を受けた。

 そして今日が契約日・・・。

カローラ岐阜のショールームに男が3人、ハリー・ジャック・スーランだった。

 そして亮一が商談テーブルの上に注文書を拡げて、本体価格、オプション、諸費用欄に金額を書き込んでいた。

 本体価格からの値引きはメーカー希望価格の一桁の値引きのみ、ワンプライスだ。

嘗て車輌の値引き合戦で販売台数は稼いでるものの利益をマイナスでリターンする営業マンは淘汰された。

 全国の販売ディーラーは慈善事業者では無く、利益を揚げてナンボの商社だからその一点を追求すれば追求するほど、無益な営業マンは会社にとってお荷物同然!

 亮一はギリギリ、ボーダーラインから上の位置に居た。

そしてサービスフロントのパラレルワールドに出入りする事が多くなった亮一はオミクロン族の久美ちゃんと対峙していた。

「標的はマスクをしていない繁華街に屯している若者、あるいはマスクをしている通勤中のサラリーマン又はオーエル、鼻マスクをしている紳士や政治家も標的ですね。」

 久美ちゃんは理路整然と標的に関するロジックを展開していたが、亮一の方で要望がありそれが、オミクロン潜伏期間の定義となって行った。

「潜伏して7日間は、じっとしていてね久美ちゃん? それ以上待ってもコロナ族が来なかった場合、速やかに離脱してください。検体に初期症状が出てきたら、4日以内でも離脱してください。よろしくね久美ちゃん?」

 ニコッとした後は戦士の顔に戻りサービスフロントにホワイトアウトを残して飛び去って行った。

 何処へ行くつもりなのか、予め聞いていた亮一には見当が付いていた。

「大坂はコロナが蔓延してます。それに危ないのが神戸三宮ですね・・・。若者がノーマスクで闊歩していると情報が有ります。」

「絶好のコロナの潜伏条件ですから我々はそこで待ち伏せしておきます。」

 オミクロン族の全員に周知徹底する為に飛び立ったのだろう・・・。

 コロナ族が感染し易い場所は人類の頭部だ。

通勤の為の満員電車には、コロナ族がウヨウヨと蠢いている!

人類の肉眼では見えず、確認漏れになっている場合が多い。

髪の毛、額、眉毛、睫毛、そして眼の粘膜。易々と体内に入り込み人類をコントロールしている。

 久美ちゃんは上空から三宮のセンター街を行き交う人類を観察していた。

キラキラとピンク色の光るミクロの物体がそれだ!


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