第7話
一旦、荷物を部屋に置かせてもらい、わたしと深月は買い物に出かける。今日はふたりで料理をする予定だ。なにを作ろうかと話しながら食材を買い込み、後はケーキを買えばおしまい。
わたしはショーケースに並ぶ色とりどりのケーキを前に、自分の誕生日ではないけれど少し浮かれた気持ちで深月に問いかけた。
「深月、どのケーキがいい?」
「普通は誕生日にどんなケーキ選ぶの?」
「普通? よくわかんないけど、自分の食べたいケーキじゃない? いつもどんなの選んでたの?」
「誕生日、ケーキ買ったことない⋯⋯」
――えっ? なんで?
甘いもの嫌いとか? いやいや、学校で普通にお菓子食べていたし。あんな高級マンションにひとり暮らしをしているわけだから、お金が理由でもないだろうし⋯⋯。
お家の事情ってやつ?
「深月の家では、誕生日にケーキは食べないってこと? お母さんが甘いもの食べないとか」
「いや⋯⋯。えっと、その⋯⋯、誕生日を祝ってもらったことが⋯⋯ない、かな」
「どういうこと⋯⋯? 誕生日をお祝いしないの?」
「誕生日に限らずだけど、いつもひとりだから」
深月は、なぜか申し訳なさそうに言った。
わたしは思わず絶句してしまった。
ちょっと想像していた内容と違うけど、お家の事情で合ってたってことじゃん⋯⋯。
オーケー、理解した。深月はひとり暮らしで、誕生日どころかいつもひとりだと。うん、わかった。
⋯⋯良ーく、わかった!
全く意味が分からないことが!
いや、本当に! どういうこと!?
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