第5話


 放課後、わたしと深月はカフェに来ていた。


「んー? 深月、ここは?」

「これも、さっき使った公式を使えば解けるよ」

「あっ、なるほど。ここもこの公式でいいのか。ありがとう」

「あとそこ、計算間違ってる」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯本当だぁ」 


 間違いを指摘され、呻きながらテーブルに突っ伏してしまう。完全に集中力が切れた。


 ――勉強始めて一時間くらい経ったかな?

 新作のドリンクを飲み終わったわたしは、空になったカップのストローをクルクル回しながら一息つけようとペンを置いた。


「そういえば、深月。たしか今週末が誕生日って言ってたよね?」

「あぁ⋯⋯。そうだね」


 わたしの休憩する気満々な空気を察してか、深月もペンを置いてこちらを向く。


「なんか予定ある?」

「予定?」

「誰かと遊び行くとか、夜は家族でご飯行くとか。当日予定あるなら、別の日どっか遊び行こうよ」

「いや、ない⋯⋯かな。なにもしないよ」

「えっ? 一日中?」

「うん。元々ひとり暮らしだし」

「ふーん、そうなんだ」


 深月は相変わらず無表情で、誕生日はひとりだと、なんて事のないように言う。

 どこか時間があれば誘おうと思っていたんだけど――っていうか、深月ってひとり暮らしなんだ。知らなかった。


「ねぇ、深月の誕生日祝いたいんだけど。いい?」

「――えっ?」

 

 私が誘う事が予想外だったのか、深月は珍しく驚いた表情を浮かべた。


「なんでそんなびっくりした顔してるの。予定を聞いているんだから、誘うのは普通じゃない?」

「えっ、あっ、⋯⋯そう、なんだ」

 クスクス笑うわたしを余所に、深月はまだ戸惑っている様子だった。


「予定ないなら、その日は一日時間もらってもいいかな?」

 せっかく予定が空いてるなら、遠慮なく使わせてもらおう。


「えっ? 一日中?」

「うん、迷惑じゃなければだけど。ふたりで楽しい誕生日にしようよ」

「わかった⋯⋯。予定入れとく」

 


 こうして、わたしの週末の予定が決まった。




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