第202話 開かれた戦端
ネクサスとラウンド。2つの惑星国家間で起きた星間戦争。
それは最終局面を迎えていた。
だが、その最終決戦ともいえる戦いが起きているラウンドの首都ペンドラゴンで衝突したのは――宇宙海賊である『燃える灰』とテロリストである『ウロボロスネスト』の構成員のみ。
一応『燃える灰』はネクサスの正規軍に組み込まれてはいるものの、宇宙海賊として活動していたという事実は消えておらず、ネクサス自体がラウンドの第1王女であるマルグリット・ラウンドが宇宙海賊を取り込んで興した国であると世間的には受け取られている。尤も、事実であるが。
一方で、ウロボロスネストに関してはその存在を噂されているだけの組織であり、世間一般的には存在していない。ましてや、そんなテロ組織が宇宙随一の軍事惑星であるラウンドと繋がっているなどとは誰も考えはしないだろう。
彼等には因縁がある。
各自が対峙する後方では、
そうなると、自然と自分が相手すべきものが解ってくる。
アッシュはアルビオンと。ベルとアズラエル。
リオンとシルル。アニマとナイア。
それ以外の量産されたタイラントタイプの機体8機と、その周囲を飛行する71機の隻腕のソリッドトルーパーは、カリオペとエクスキャリバーンと量産型のクラレント
『さて、マルグリット・ラウンド。肩の力を抜き給え』
「ッ……!」
カリオペのコクピットに響く、ミスター・ノウレッジの声にハッとするマルグリット。
一気に張りつめる戦場の空気。
レジーナのメガフラッシャーを切っ掛けとして動き出した戦場は、マルグリットに恐怖を与えた。
戦場に出るのはこれが2回目。だが、あの時とは何もかもが違う。
あの時は、絶対に安全だという確信があった。機体の性能差もあり、自分達が圧倒できるだろうと信じて疑わなかった。
だが、今は違う。
相手の機体は未知数。以前遭遇した機体もあるが、その時はエクスキャリバーンの主力であるフロレントとアロンダイトを失うことになった。
あれからそれなりに時が経っている。相手も改修を施して機体をアップグレートしていることだろう。
加えて、ウロボロスネストを束ねるアルビオンの機体は見た目こそ、以前の見た機体を大型化させたような形状であるが、見た目通りの性能だとは思えない。
『来るぞ』
「ッ! 迎撃します。シールドガンビット展開!」
カリオペの追加装備であるデンドロビウムユニットの後部に並んだ16基のプレート型のパーツが本体から離脱し、空を舞うベディヴィアへと迫る。
本来はカリオペ本体をあらゆる角度から守るためのシールドビットであるが、それに攻撃機能を持たせたものが、このシールドガンビットである。
重力下での使用は想定されていないが、それでも自由自在に空を舞うのは、デンドロビウムユニットに搭載された
加えて。それを操るミスター・ノウレッジの反応速度もあいまって、ビットそのものを破壊することも、ガンビットから放たれるビームを避ける事も困難にしている。
とはいえ、どう頑張ってもビット1つにつき1機しか抑えられない。
ベディヴィアの数は71。すべてのシールドガンビットがそれらを抑え込めたとしても、残り55機はどうにもならない。
が、この場で戦っているのはマルグリットだけではない。
「各機、重力兵器使用許可!!」
12機の量産型クラレント
その射線上に巻き込まれまいとベディヴィア達は回避行動をとる。
『予測範囲内だ』
回避行動のために減速、方向転換した瞬間にシールドガンビットがビームをベディヴィアのシールドめがけて照射。
単発のビームならば耐え切れたであろうシールドであるが、長時間のビーム攻撃によって融解しはじめ、それを察した機体は爆裂ボルトによってシールドを切り離すとともにその爆発を利用してわざと姿勢を崩し、耐久限界を超えてビームを通したシールドから離れて離脱していく。
『来るぞ』
味方機を撃墜されたことでターゲットをカリオペに定めた3機のベディヴィアがランスを前に突き出し、基部に装備されたビームガンで牽制しながら突撃してくる。
「動かないでよ、こっちで対処するから!」
そう、マコがマルグリットに告げるなり、エクスキャリバーンのシールドが展開され、それと真正面から衝突したランスはへし折れ、そのまま機体はシールドに激突し、そのエネルギーと接触して弾き飛ばされて地上に叩きつけられるが、即座に立ち上がり追撃を警戒してかすぐに再浮上。
破損したランスをパージし、基部のビームガンのみとなった武器で空を舞うシールドガンビットを牽制しながら他の機体との合流を目指す。
「レジーナ! ヴェナトルは抑えられるか?」
『無理に決まってるだろう。頭数は同じでも図体が違いすぎる』
タリスマン達が、自身たちと比べるとはるかに巨大な――いや、平均サイズのソリッドトルーパーと比較しても大型なヴェナトルと渡り合おうということ自体が無理の有る話である。
無論、彼等の身体能力からすれば十分にソリッドトルーパーと渡り合える。だが、ここまで体躯の差があると流石に攻撃も通用しにくい。
まず、装甲に攻撃が通らない。通る可能性があるとすれば――ベディヴィアが守りに入ったメガフラッシャーくらいなものである。
「メガフラッシャーならなんとかならないの?」
『先にアイツ等を落とさないと無理だ』
「ベディヴィアか……」
『それに、あれらがレジーナのメガフラッシャーを防いだ時、何らかの力場が発生していた。おそらくだが、力場を重ね合わせることで防御性能を高められるのだろう』
そうなると、そんな防御性能を持った機体を、1機はシールドを破壊出来たとはいえど、あと70機もいて、それらが自分でも攻撃しつつ、最も攻撃力の高いヴェナトルの援護も行うとなれば、厄介この上ない。
ヴェナトル達がバスターソードを掲げ、一斉にエクスキャリバーンめがけて駆けだす。
8方向同時攻撃。それに対処するために、各部のレーザー機銃やビーム砲が迎撃を試みるが、図体に見合わない俊敏な動きでビーム砲の攻撃は回避され、レーザー機銃に至っては装甲を貫通することなく無効化されている。
「レーザーが拡散させられる! あっちもエクスキャリバーンと同じ加工をしてるってことか!」
『加えてビーム砲は旋回が間に合わない、と。厄介だね。だが……』
「わかってるッ! ミサイルハッチ全開放!! 一斉発射!!」
エクスキャリバーンは迫りくるすべてのヴェナトルをロックオン。同時に艦全体のミサイルハッチを開放し、次々と射出していく。
それも、ただのミサイルではない。
いつぞやの惑星兵器と戦た時に使った、クラスターミサイルである。
一度真上に撃ち上がったそれは、空中で分解。無数のミサイルとなって地上へと降り注いだ。
数多の爆炎が廃墟と化した街を、さらに砕いていく。
だが、その中では――巨人の影が揺らめいていた。
「……バケモノかよ、マジで」
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