幕間

幕間 プラネットデストロイヤーについての覚書

 かつての星間大戦で投入された惑星環境あるいは惑星そのものを破壊するための兵器群。それがプラネットデストロイヤー。略称PDである。

 その始祖たるPD-01は、空間置換による無酸素化と公表されているが、実際には異なる。

 無酸素空間――つまり宇宙空間と惑星上の大気を入れ替えるという性質上、失われるのは酸素だけではない。大気そのものだ。

 加えてまだ技術が未熟だったこともあり、座標を指定して空間置換を行う必要があった。

 これが何を意味するか。


 まずは、効果範囲が狭い為、惑星全土の大気を喪失させるには時間がかかりすぎるということ。

 惑星全土の大気喪失までの間、自衛する為に防御装備と迎撃用装備を用意する必要があり、コストがかさんでしまう事。

 殲滅が目的の戦闘ではなく植民惑星化が目的であるというのならば環境を破壊しつくしてしまう為、戦後の再利用が困難になるという点。

 そして、座標を指定して使用する仕様上、相手の拠点を直接攻撃できる防御不能の兵器としても使えるという事。


 以上を以てPD-01は製造を中止された。

 理由は、使う側としては時間と手間がかかる兵器であり、使ったところで最終的には惑星の再利用が困難になる問題点だらけの兵器であること。

 そして、使われる側としては防御も何もない上、場合によっては生身の人間が宇宙空間に放り出されるということもあり非人道的であるという指摘があったからである。

 この結果を受け、以後いくつか製造されたは、もっと原始的な兵器に落ち着くことになる。


 尤も――その結果生み出されたのが、石油分解バクテリアPD-02、哺乳類にのみ感染する致死率84パーセントのウイルスPD-03、核の冬を起こすためのクラスター核弾頭ミサイルPD-04、超大型ガンマ線照射機動砲台DP-05、積極的に都市部を襲い資材を集めながら破壊活動を繰り返す自立稼働型移動要塞DP-06などなど、と、倫理もなにもあったものではない物ばかり製造される事になり、計画自体が凍結。

 最終的にはすべてのPDシリーズは解体される事になる。

 しかし、である。中には解体を逃れたものが各恒星系のアステロイドベルトなどに残されているとも噂されるが――真偽のほどは定かではない。


 ワタシの個人的な見解を入れるのであれば、PD-02以後のものはPD-01と比べて費用対効果という点では優れているとは感じられる。

 人道非人道を問われると、物によるだろう。

 というか、旧時代ですら禁止されている細菌兵器をPD-01の後に作ろうとする時点で開発陣はどうかしている、としか評しようがない。




 追記。

 惑星フォシルの衛星トリアスにて、ほぼ無傷の状態のPD-01が発見。

 回収にはシェイフーが向かい、修理と改修はダンタリオンが担当。

 作業完了まで約2週間。

 丁度奴等が惑星サンドラッドで活動しているタイミングでの作業完了予定となる。

 無論投入する。奴等の戦力がどれほどのものか。それを確かめるために。

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