第5話 遺体の検死
キンジは、カルメラの遺体を入念に調べていた。俺は、それを凝視する事が出来なかった。用務員も同様で、自分に何かを言っている。
「俺が何をしているんだと、お前に聞いている。」
それは俺にも分からん。
「まだ、かかりそうか。」
「いや、色々分かった。もう、大丈夫だ。」
そう言うと、用務員の裾を噛んで、外の方へ引っ張った。
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キンジが俺の作業着の裾を噛んで、外の方に引っ張ってる。
「んっ、キンジ、もういいのか?」
キンジが「ニャー」と鳴いたので、カルメラをバスタオルで巻き直し、再び、埋葬した。
キンジは、いったい何を調べたんだ?
二匹は、埋葬し直している間にいなくなっていた。
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キンジの家へ戻る間、調べた事を教えてくれた。
「ヴィトー、まず、カルメラを殺した奴だが、猫でも犬でもなかった。」
「?」
「人間だ。」
「キンジ・・・何で、分かったんだ。」
「カルメラの首に、細い何かで絞められた跡があった。それと、腹の傷は、人間が使う刃物で切られたと思う。猫や犬だと、あんなに切り口がキレイにはならん。」
ヴィトーは何も言わず、引き返そうとしていた。
「ヴィトー待て!用務員が殺したとは言ってない。」
「首を噛み切ってやる!」
あいつ、だましやがって。殺してやる!
「ヴィトー落ち着け!住処に、用務員以外の足跡があったぞ。」
あぁ、何だと!
「雨でほとんどが、消えかかっていたがな。用務員より、小さい足跡だ。」
「・・・そいつは、誰だ!」
「いや、誰かは分からん。だが、その足跡は学校に居るガキ共と同じ足跡だった。あいつら、同じ履物だから、足跡も同じなんだ。」
「学校のガキが、カルメラを殺したのか!」
「多分な。用務員より可能性は高いと思う。お前はあいつが殺したと思うか?」
「くそ!誰か知らん奴に、あそこで殺されたというのか!」
「いや・・・殺された場所は違うと思う。住処に残っていた血が少なすぎる。恐らく、別の場所で殺されたんだ。」
「どこだ!」
「それも分からん。痕跡がなさすぎる。」
ぐぅぅぅぅぅ!誰だ!
「ヴィトー、すまん。もう一つ、お前が怒り狂う事がある。」
「何だ!」
キンジは言いずらそうで、中々話しを切りださない。
「キンジ!だから何だ!言え!」
「カルメラの腹の中に居た子供達だがな、・・・いなかったんだ。多分、抜かれていると思う。」
がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
もう、何処に怒りをぶつけていいのか分からず、近くにあった木に嚙みついた。
「おぞましい所業だな。」
「キンジ、頼む。もうしゃべるな。このまま、俺の前から消えてくれ。俺が・・・何をするか・・・もう、分からん。」
「分かった。ヴィトー、俺も引き続き調べる。だから暴走すんな。」
「・・・」
また、怒りが頂点に達し、木に噛みついた。
カルメラの腹を引き裂いただけじゃ飽き足らず・・・生まれてもいない子供を引きずり出しただと!
殺す!人間だろうと、首に噛みついて、殺してやる!
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