#14 悲鳴

 ウォーレンから謹慎を言い渡されたベイルはバルバッサ家に訪れた。荷物を置いたまま王宮に行ったのでその回収と、何よりベイルの身体の事だ。

 今のベイルは純粋な人間ではなく、竜人――ドラゴニュートへと変貌を遂げていた。そうなった原因に心当たりはあるが、それを説明するのはベイルにとってかなり勇気がいる事でもある。


(どうしよう)


 なんて考えていたベイルに後ろから誰かが声をかける。


「何をしているんだい、ベイル君」

「え?」


 警戒をしていなかった事もあってベイルは何も考えずに振り向くと、そこにはグレンがいた。汗をかいていることからおそらく運動をしていたと予想するベイル。


「あ、いや、その……荷物を取りに――」

「なんだったら上がって行けば良いじゃないか。それに、どうせあの話もあるんだろう?」

「……ええ、まぁ」


 向こうから持ち出されてベイルは以前の覇気はどこに行ったのか、かなり緊張した様子でグレンに先導されて中に入る。

 そして部屋に通されたがベイルの様子を見たバルバッサ家の人間は驚く。あの自信満々だったベイルはどこに行ったのかと疑問を持つ者も多かった。

 そんな中、カリンがベイルに近付いて抱き着こうとするがベイルはそれを回避した。おそらくベイルに抱き着くつもりだったのかそのままベイルに全体重を預けようとしたがベイルが回避してしまった為にそのまま倒れそうになるのをベイルが浮かばせて回避した。


「ベイル……?」


 いつもならどれだけ疲れていても受け入れてくれるはずなのに、今日はベイルがそうしてくれなかった事に疑問と悲しみ持ったカリン。しかしベイルもまた悲しそうな顔をしていた。


「どうしたの……?」

「いえ、なんでもありませんよ」


 我慢している様子に気付いたカリンはそのままベイルを抱きしめた。

 突然の事だが、それでも襲ってしまわないようになされるがままになる。


「ここに来た、ということはこの前の質問に答えてくれるという事で良いのかな?」


 アーロンがそう言うとベイルはカリンを一度抱きかかえながら頷いた。そのまま立ち上がったらカリンが巻き込まれて倒れるかもしれないと考えてのことであり、アーロンも理解しているが目の前のバケモノかもしれない相手に安易に触れられたくないという気持ちと、むやみに手を出していない事に対して複雑な顔をするアーロンを見てグレンは顔を引き攣らせた。

 少ししてベイルもその空気を察したのかカリンを降ろした後、いつものようにカリンが手を繋ごうとするのでそれだけは受け入れる。

 客間に通された時にアメリアも部屋に呼ばれ、ベイルを見て驚いていた。


「ベイル、大丈夫なの?」

「……ええ、とりあえずは。教会の件は投げてきましたし」

「いや、投げて来るな」


 アーロンはそう返し、それにつられてレティシアが笑う。


「別にあのままでも良いですよ。たぶん私が我慢できずにあそこにいる教会関係者をすべて潰していたかもしれませんが」

「それ、シャレになっていないからな?」

「シャレのつもりもありませんよ」


 ベイルから放たれる気を見てアーロンは圧倒される。


「まぁ、それはともかくとして……いつからその症状が出るようになったんだ?」

「自覚したのは最近です。ただ、大体1年半ぐらい前から魔力で翼を作れるようになったので、その辺りから侵食自体は始まっていたかと」

「……まさか」


 アメリアは気付いたようだ。ベイルも頷き、言いたくなさそうに言った。


「たぶんあの誕生日会でドラゴンの血を浴びて、そこから覚醒したと思います」

「……そうか。やはりあの時、か」


 グレンがわかっていたかのような反応をする。


「気付いていたんですね」

「君がドラゴンと戦った日を考えるとね。まさかそんな副作用が……でも普通、もっと前にわかるものじゃないのかな?」

「いえ、戦闘能力自体はさほど変わらなかったので」


 それを聞いてカリンは目を輝かせているが、他の4人は驚いている。


「なので今後は、自分との縁を切ってもらおうかと思っています」


 ベイルのその発言に今度は全員が驚いていた。カリンも流石にどういうことかわかったようでベイルに抱き着く。


「あの、カリン様? 私に触れるのは――」

「でも私たちとの関係を切ってシャロン殿下のところには行くんでしょ? そんなのは絶対に認めないわ!」

「いや、行きませんよ。また面倒なことが起こりそうなのでその対処が終わらせた後は旅に出ようかと。私は死にたくありませんし、かと言って周りには迷惑を掛けられない。この世界の戦闘レベルなら私の家族ならば他の奴らでも対処可能ですから――」


 さっきからカリンが何かをしようとしているのは気付いていたが、まさか自分に対してヘッドバッドをしようとは考えていなかったベイルは手で受けつつも顔は避けた。


「カリン、何をしているんだ!?」

「だってこうでもしないとベイルがどこかに行くから、今の内に既成事実を作ろうと思って――」

「何故そうなる⁉」


 ベイルも何故そうなるのか理解できなかった。

 今の自分は結局のところバケモノ。人間の女と子どもを成すのはやはり問題があるだろう。そう考えての結論だが、だからと言って襲われる理由にならない。


「だってあの時、私を助けてくれたのはベイルじゃない!」


 そう言われて見捨てようとしていたアーロンは顔を逸らす。

 アーロンもなにも好き好んで自分の娘を差し出したいわけじゃない。あの場ではああするしか方法を知らなかった。ましてや、まさかこの少年があそこまで強かったなどと一体誰が想像できようか。


「でも、今俺からこの力を取る方法なんて無い。だから誰かと交わるのはやっぱりダメなんだ」

「キスするのも?」

「いや、流石にそれは――」


 ベイルはカリンの事が可愛がっている。妹のようでありながら妹との関係に気を遣わなくていい、本音を言えばそのまま抱きしめて可愛がりたい衝動に駆られるが、そんな事をすれば変態の烙印を押されるので自重しているだけに過ぎない。

 しかし目の前の少女はバケモノだと暴露した自分に対して好意を寄せている。それがベイルにとって申し訳ない気持ちにさせた。だからこそベイルはカリンを降ろす。


「ごめん。君の気持ちには答えられない」


 いつもと違い、厳しい口調でそう言ったベイルはそのままの勢いに任せて部屋を出ようとしたところでドアが開かれる。老執事が慌てた様子で告げた。


「だ、旦那様! 大変です! ヒューリット領が何者かの襲撃を受けているようで煙が上がっています!」


 その声を聞いたベイルはすぐに近くの窓から外に出て翼を広げて上昇する。流石にマズいと感じたのか異空庫からドレイクーパーを出してそのまま飛ぶ。


「私の分の機体を準備しろ」


 グレンが執事にそう言うとアーロンが止めた。


「馬鹿な事を言うな! お前はここの跡取りなのだぞ!」

「だがヒューリット家は我らの派閥の人間だ。それを見捨てると?」

「ならば私が――」


 アーロンがそう言うがグレンは首を振って拒否をした。


「あなたよりも私の方がジーマノイドを上手く操れる。それにどうせあそこに追いついたところであの少年がすべて終わらせているさ」


 その言葉に否定できなかったアーロン。グレンはすぐに準備に取り掛かった。


 ベイルがヒューリット領に着いた時、そこはとても悲惨な状況になっていた。見覚えのある機体がまるで的当てゲームのように近くの家に攻撃しているのを見てライフルを抜いて相手の頭部を破壊した。


『攻撃を確認した』

「何をやってんだ、テメェら!」


 攻撃準備をしているところにベイルがペダルを踏んで接近。相手の騎士を思わせる風貌をしたジーマノイドが攻撃準備をしている間にベイルが最適な場所に向けて飛ぶように攻撃した。


『目標を補足。即刻排除を――』

「ほざけ!」


 素早く距離を取ったベイルは敵に向けてライフルを発射。それによって別の機体の頭部が破壊される。


『良いのか、ベイル・ヒドゥーブル』

「何が? というか何でパイロットがバレて――」

『この惨状はお前が作り出したんだ』


 唐突にそんな事を言われて動揺し、動きを止めたベイルは周りから魔砲を飛ばされる。しかし周囲にバリアを展開してヒューリット領に被害が出ないように攻撃を防いだ。


「訳が分からないことを……襲っているのはお前らだろうが」

『いいや、お前が大人しくしておけばこんな事にならなかった。お前の存在のせいで王国は我らパルディアン帝国によって粛清されるのだ!』

「……粛清だと?」

『そうだ。我らが繁栄を妨害し、ベイル・ヒドゥーブルという魔族を囲った愚かな王国に対して粛清を行う! 王国の民よ! 恨むならばこの者を恨め!』


 そう宣言する帝国兵。それを聞いたベイルは顔を引き攣らせた。


『反論できまい。何故ならお前はドラゴニュートなのだからな!』


 そこまで知っている事にむしろベイルは疑問を抱いた。


(裏切り者がいる? いや、面子的にあり得ない。俺をドラゴニュートと公開して王国内に得する奴がいないのは確かだ。だが俺に対して敵対意識を持っている奴? 心当りが多すぎるな)


 色々と頭絵を巡らせる。しかし一向に考えがまとまらないのでベイルはため息を吐く。


『死ね! 魔族が!』


 動かないベイルに対して帝国兵は仕掛ける。その時ベイルはドレイクーパーを器用に動かしてすべての攻撃をドレイクーパーに備わっているエネルギーソードで切断した。


『何だと!?』

「魔族魔族って、五月蠅いんだよ!」


 バリアを解除して接近したベイルはドレイクーパーの右腕を相手のコックピットに突っ込ませた。そして器用にコックピットから人間のみを引っ張り出してジーマノイドから離脱。マニピュレーター内でパイロットを拘束してその辺りに転がす。


「ムカつくけど、ここで殺せば今までこいつらにかかった金が無駄になる」


 そう溢しながら左手に持ったライフルで次々と脚部やマニピュレーターを破壊していく。それを見て向こうもベイルの目的に気付いたらしい。


『今更人間の振りをして俺たちに慈悲でも与えようってか? 遅いんだよ!』


 帝国のジーマノイドが接近してドレイクーパーのコックピットめがけてアイアンスピアを突き出したが、ドレイクーパーがまるで人間さながらのような素早い動きを見せて逆にコックピットにマニピュレーターを突っ込んだ。

 迫りくる鉄が帝国兵にぶつかる――前に影が包んで保護して引き抜いて機体を無効化した。その様を他の機体は姿を現しているが、迂闊にベイルに対して攻めようとしなかった。だからこそベイルの方はやりやすくなる。彼らの意識外から攻撃によって四肢を切断した。


『なっ!?』


 一瞬の内に1機が戦闘不能に陥る。今回帝国のジーマノイドは5機編成で現れており、残りは2機。しかし残った機体がこちらに対して特攻を仕掛けた。それをベイルはエネルギーソードで1機ずつ仕留めて倒した。

 瞬く間に鎮圧した事でなんとも言えない顔をする領民たち。ベイルはドレイクーパーのコックピットから降りて来ると同時にドレイクーパーを異空庫に収納して帝国兵をそれぞれのコックピットから抜き取り、拘束した。

 グレンが率いた部隊が現れたのはちょうど帝国兵を拘束し、ベイルが軽く電流を気絶させた後の事だった。迅速に救助活動を行っていく様を見てベイルは感心する。もっとも、ベイルの魔法の方が一番役に立っているのだが本人は一切その事に気付いていない。


「お疲れ様、ベイル君。君のおかげで迅速に解決できたよ」

「……どうですかね」


 ベイルの反応がおかしい事に気付いた。するとベイルに向かって石が飛んできたが、ベイルはそれを視線だけで止める。2人が示し合わせたわけでも無いが同じタイミングで振り向くと、子どもが涙を流していた。


「……お前のせいだ。お前のせいで母さんと父さんが死んだ!」


 それを聞いてベイルはやっぱりと言う感情に支配された。


「待ってくれ。何でそうなる? 彼は――」

「あのロボットに乗っていた帝国兵が言ってたんだ! 王様がその魔族を匿っていたから僕らが襲われたって! つまりそいつがいなければ僕らが襲われなかったって事だろ!」

「そうだ! そいつがいなければ俺の娘だって!」

「私は両親が殺されたんだ!」

「息子が死んだのよ!」


 騒ぎになって行く様を見て、グレンはなんとか宥めようとしたがそれを壊したのはベイルだった。


「――下らない」


 馬鹿にするように言ったその言葉に反応した民たち。グレンはマズいと思ったがベイルが容赦なく言った。


「大事な人間がいるなら、何故強くなろうとしない? 戦争になって最初に死ぬのは王でも貴族でもない、お前らだ。巻き込まれられるのもお前たち。それなのに何故自分たちで強くなろうとしない? お前らの大事なものが無くなったのは俺の責任じゃない。お前らが弱かったからだ」

「べ、ベイルく――」

「戦争はとっくの昔に始まっている。そんなことすら理解できずに泣く事しかできない負け犬がごちゃごちゃほざくなよ、煩わしい」


 そう言い捨てたベイルはゲートを開けて中に入るとするが、それをグレンが止める。


「どこに行くつもりだ?」

「あんたの家だよ。荷物がまだ置きっぱなしだし、その回収」

「ならば今日はそのまま泊まっていきなさい。君だって疲れてるだろ」


 グレンはそう提案するが、ベイルは首を振った。


「俺はバケモノだからこの程度の事で疲れやしないんだよ」

「それでもだ。人を一人連れて行け、彼に説明させる」

「……だが――」

「良いから」


 グレンの様子に気圧されたベイルは渋々という感じで頷く。グレンが人を手配している間にベイルは座標を変えた。


「すまない。待たせたな」

「……別に。あ、それとさっきの奴らは処刑するなよ?」

「それに関してはわかっているさ」


 ベイルは安堵した様子を見せ、そのまま付き人と一緒にゲートを潜った。


 あれから半日。中々起きて来ないベイルの様子を見に行ったアメリア。これを機に彼女もベイルと話す機会を設けたいと思い、今回の件を買って出てベイルの為にあてがわれた客室のドアをノックするが返事が無い。

 はしたない行為とは理解しているが、万が一ということもあるのでドアを開けて中に入る。


「ベイル、朝食の準備ができて――」


 アメリアはそう言いながら中に入ると、周囲にあるはずの壁が一切無かった。黒い靄のようなものが日の光を遮断しており、まるでその空間だけ独立して存在している印象を受けさせる。その中央で客間に設置したテーブルの上に剣を置いて調整をしているベイルの姿があった。ベイルは何かぶつぶつと呟きながら作業をしている。


「何をしているの?」

「人造魔剣を作ってるんだ」


 ベイルは普段、バルバッサ家の人間に対しては敬語を使っている。しかし今のベイルにはその余裕がない位に何かをしていた。実際今もアメリアの方を振り向いていない。


「じんぞうまけん?」

「ああ。ポーラが持っている魔弓を剣の形にしたもの。魔族だけじゃなく帝国も参戦するからな。その為の武器を作ってる」

「でもあなたにはアガートラームがあるじゃない」


 そう言われてもベイルは動じなかった。


「手札はたくさんある方が良いさ。それに、このカラドボルグはあくまでユーグ兄さん用だ。あの人は魔法使いタイプだが、この剣は言わば魔力を使用して運用するタイプ。兄さんの助けにもなる」

「か、カラドボルグ?」

「この魔剣の名前だ。どこまで耐えられるかはテスト次第だが、一応はかなりの出力を出せる。せめて伝説レベルの力を発揮してもらわないとこれからの戦いに耐えられないだろうが、いざとなれば俺が戦えば良いさ」


 まるでそれが当然と言わんばかりに言うベイルにアメリアが驚きを露わにする。


「どうしてそんなに自分で戦おうとするの?」

「この世界の人間たちには無理だからだ」

「……どういうこと?」

「魔族を警戒して結んだ五ヵ国同盟だったか? それがあるというのに他の国は何もしない。それどころか俺が見つけた成果など配られて当然と言わんばかりの態度だ。まぁ、簡単に言えば意識が低すぎるんだ。自分たちの身を守るのは当然。知恵を手に入れたからと言って武力を捨てて良い理由にならないだろうにどいつもこいつもふざけやがって。そもそもジーマノイドぐらい、別に生身でもやろうと思えばぶった切れるだろうが」

「それはあなただけよ」


 ジト目でそう言ったアメリアだが、ベイルには聞こえていないのかそれでも作業を続ける。


「ベイル、一度休憩しましょう? 朝食は後で準備させるから、今は――」

「休憩なんてしていられないさ。ともかくカラドボルグをどうにかさせないと」


 ふとアメリアの脳裏に妙な記憶が過る。


『休憩なんてしていられないさ。今はこの夜叉を完成させないと魔族に――』


 その時、アメリアの身に不思議な事が起こった。彼女は夢現の状態でそのまま真っすぐに移動してベイルに抱き着く。


「一体どうし――」


 そこでベイルはようやく、自分が誰と話していたのか気付いた。まさかアメリアがいるとは思わず驚いていたが彼の動揺はまだ続く。ベイルがこっちを見た時にまるで愛おしい者を見る目を向けてベイルにキスをしたのだ。

 突然かつとても深い行動に動揺するベイル。さらにアメリアはそのまま行為を続け、実は5分はずっとベイルを押し倒しながら迫っていた。ようやく気が済んだのかアメリアは少し離れた後、目の前にベイルがいて驚いていた。


「……え?」


 それはベイルも同じだったが、アメリアの方がいきなりすぎて訳が分からなくなる。何故自分があんな行為に至ったのか理解できず、逃げるように部屋から出て行った。

 その様子をたまたま帰ってきて、ベイルの様子を見に来たグレンが見ていた。


(い、一体何があったんだ……?)


 ベイルの様子があまりにも異常だったこともあり様子を見ようとしていれば妹が赤面して外に出てくれば勘ぐる。グレンはベイルにあてがわれたという部屋に入ると、そこには闇でできた壁が瓦解して消えていたが、こちらも同じく顔を赤くしてはいたがアメリアと違って気絶していた。


「い、一体何があったんだ……」


 一瞬ベイルが耐え切れずにアメリアに手を出した、という線を考えたが気絶ことからおかしいと感じて首を振る。


(まさか、アメリアの方から?)


 グレンとしてはその方が可能性が高いと考えていた。

 アメリアが本当はベイルの事が好きだが家の事を重視してサイラスの婚約者に甘んじているのはバルバッサ家では周知の事実。カリンがベイルに対して好意を寄せているので少し前まで良しとしていたのだが、ベイルがカリンを振ってしまったので今では少し面倒な事になっていた。


(と言っても、ベイル君のあの様子ではアメリアをあてがったところで……)


 カリンに対して振ったのがただそういう関係になるのを考えられないのであれば、サイラスとの婚約を破棄してベイルにあてがえば良い話だ。だが振ったのはベイル自身がドラゴニュートに変貌したという理由で巻き込みたくないからだ。こうなってはベイルにあてがったところで無駄だろうと考えざる得ない。むしろベイルが自分たちに対して不信感を抱くのではないかと考えているほどだ。


(まぁ、ベイル君はアメリアの事が好きなのも知っているから、最悪の事は避けられるかもしれないが……)


 そう思いながらも今は不安定なベイルを見てなんとも言えない感情を抱きながら人を呼んでベイルをベッドに運ばせてそのまま寝かせた。

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