第3話

2軍は100人ほど候補者がいたらしい。

彼らをじっくり伸ばしていこうと思う。

その後テスト期間とクラス分けが終わり、授業が始まった。

最初にタブレットが各々に配布される。

これで個々の授業を行うのだ。クラス編成する意味?


実技と議論を戦わせる形式の授業の為らしい。


つまり、1限から4限まで、実技か議論をするわけだ。きつっ!


1限。道徳の授業。力を得たらどうするかというので、いきなり指名された。

皆、真剣な顔でこちらを見ている。


「あー、俺は、美味しいもの食べてゲームできればそれでいいです、はい。その為に多少の労働も辞さない考えです」


 座る。見られてる見られてる。あっ 手が上がった!


「正義の為に何かをなしたいと思わないのですか?」

「正義って何?」

「それは、その、正しいこと? 人を助けたり守ったり」

「それは弱者のする事だ」


 生徒たちが色めき立った。こ、怖い。でもここは頑張らないと社畜にされる。力を持ったもの、すなわち俺なんだから。


「力を持った時、何かを成すことより、成さないことが大事なんじゃないかな」

「成さないこと……?」


 突っかかってきた生徒が戸惑う。


「俺が弱かったら、にーちゃを笑わせる為に頑張る。でも、強いから、にーちゃ達を泣かせないように頑張る。それが大事だと思う。万人に優しい正義なんてないけど、万人に憎まれる悪はある。弱かったら精一杯頑張らないと駄目。強かったら、頑張らないように頑張らないと駄目。それが俺の持論」

「なるほど。面白い考えですね」

「それなら、力は何のためにあるんだ」

「自分。周りの人。皆。この順に幸せにする為、かな。自分も守れないのが周囲を守れるわけがないし、周囲も思いやれない人が社会に平和をもたらせる訳がない。自分だけ、周りだけ大事にして他を虐げるって意味ではないからね! 他の人の迷惑にならない範囲でって大事だよ!」

「強い外敵が来たらどうするんだ」

「相対的にこっちは弱いって事だから、頑張るよ」

「この前のダンジョン星の件については、どう思う? 強い君が、弱いダンジョン星を蹂躙したって事になるけど」

「そだね。あまり良くないことかな。でも、ダンジョン星の人達は、そのやっちゃいけない事を先にやってたからね。そういう事をした人に対して、やっちゃいけないって気持ちのハードルはとっても下がる。いいとか悪いとかじゃなくて、事実そう。あいつもやってるなら俺だっていいだろ。誰だってそう思う。僕だってそう思う」


 その言葉に、皆、無言になって、しばらくしてチャイムが鳴った。

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