カーテンの隙間
冴
カーテンの隙間
泣き声の大きい人が優勝です赤ちゃん相撲の頃からずっと
冬の夜のパンチで開けたような月ブックオフでは呼吸ができる
外国の車をすべてクリックし人間を証明する深夜
たった今期限の切れた牛乳に呪われてひとつ歳をとる
服を買いに行くための服 幸せを感じるための幸せがない
帰りの会で先生にさされた指があれからずっと目の前にある
トイプードル濡らせば嘘みたいに細く定期券買う勇気が出ない
「友達の友達が言ってたんだけど」ぬらりと捲れる赤い唇
好きな人の好きな人は私を好きでみんなでマイムマイムを踊る
店を出て左の方へ行く前に一瞬右見るタイプの男
愛してると窄む口は間抜けな形 天井にシミ四つ数える
もう二度と会わない(会うたびに思う)眠れないのにあくびだけ出る
家にいて家に帰りたいと思うカーテンの隙間を春の闇
「はじめからやりなおしてください」などとATMに言われてしまう
月いつもこちらに向ける面があり三年前と同じ「おかえり」
ワックスの匂いのセレモニーホール祖母の寝顔は祖父に似ていた
姉さんの出産予定日に薄く切った生肉のカルパッチョ
レア柄のコアラのマーチ「がんばれ」は頑張るの命令形じゃない
明日は晴れいつか必ず崩される石を積み上げるのには良い日
思い出さなくなる日はきっと急にきて思い出さないとも思わない
カーテンの隙間 冴 @makingmaki15
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