第四話 記憶
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「これが( ͡° ͜ʖ ͡°)…記憶を連結させる飴玉?」
道化は二つの飴玉を握りしめて目の前にいた白衣の男に向けてそう言った。記憶が正しければ彼は七王の一人。科学者。
「そうだ」
「副作用とかはないの?」
「一時的な記憶喪失が起きる」
「ふーん…じゃあもう一つ聞いていい?」
「なんだ?」
科学者は少し腕を止めて何事もなかったかようにまた再開してそう言った。科学者は背中を向けているので彼がどんな表情をしているかは分からないが、どうやら焦っているようだ。
「僕の妹は元気?」
「…何?」
科学者は顔をこちらに向けてやや怒りを混じった声でそう言った。
科学者のその声には二つの感情があった。一つは彼が想像していないことを聞いてきたから…そして、もう一つは…。
「どういう立場でそう言えた!?…まるで…!妹を心配しているかのような口ぶりで!」
珍しく語気を荒げた科学者はどんどんとこちらに近づいて…ジェスターの胸ぐらを掴んできた。それも珍しい行動だった。
まぁ…当然の行動と言えば…そうなんだけどね!
「僕だって、わざとじゃな…」
僕が言い訳を放とうとしたが、それすら許してもらえず科学者は叫んだ。
「ふざけるな!」
「…わざとじゃないと思うなら…何故お前は今もまだ笑っていられる!!」
科学者はそう言って一呼吸置くと、呆れた表情で僕の胸ぐらから手を離し、椅子に再び座った。
そして僕は掴まれた跡を手で直し、何事もなかったかのよつに、会話を再開しようとした。
「どうして(^ω^)そんな向きになるのか僕には分からないよ….ʅ(◞‿◟)ʃ君って“ニッポン“ていう所から来た、異世界人なんでしょ?」
「…」
ジェスターの声に対して沈黙を貫き、さもジェスターの話が聞こえていないかのように科学者はただ手を動かしていた。
「そう…ならいいよ(^ω^)じゃっ…僕はこれにて!」
ジェスターはそう言うとドアノブに手を掛けてそれを捻りながら前へと押し出そうとしたその瞬間。科学者は小声で「やれ」と呟いた。
そうすると、突如目の前に殺気を感じた。
ジェスターはそれを気にせずにそのまま扉を開けようとした。
瞬間、銃声が鳴りそれから放たれた銃弾は素早くジェスターの頭を貫こうとするが…それを平然と躱す。
そして射るべき敵を失った銃弾は白いテーブルに置いてあったガラス瓶を貫いた。
科学者は貫かれ、バラバラになったガラス瓶をかき集め、ジェスターに言った。
「どうやら…我々二人の命を狙う輩が来たらしいな」
科学者はそう言った。
でもジェスターには分かる。
「ん〜^ - ^下手な演技はしなくていいよ!」
「…一体何のことやら…」
科学者がそう言った瞬間、閉じられていた扉が吹き飛ぶ程強引にぶち破るとその科学者の協力者が姿を現した。
「いぇーい…僕がー…君を殺す…“冷酷の七王“暗殺者でーす…」
陽気な口調のように話す彼女は表情一つ変えずにそう淡々と言葉を並べた。
「君がー…道化師ー…強そうだねー…」
「悪いな道化、俺一人じゃお前を殺すのは無理だからな…」
暗殺者の言葉に続けて、科学者も喋り始めた。
きっと彼はジェスターのことをよく観察していたのだろう。彼の目からその自信を感じ取った。
だが、彼は見誤った。
「へ〜困ったな〜たかが“三人“で僕に勝てるとでも?」
僕がそう言うと、明らかに科学者は動揺していた。そして暗殺者も当然驚いていた。
「ふん…科学者に三人で向かうべきと言われた理由が分かった気がするわい」
“愉悦の七王“道化師、“冷酷の七王“暗殺者、“勤勉の七王”科学者、“暴力の七王“武士、一同がこの場に会していた。
しかし、この場にいるほとんどの者はただ一人だけを狙っていた。
暗殺者、科学者、武士が一斉に道化師に攻撃を仕掛ける。
各々の攻撃方法は様々であった。
科学者は煙を撒き散らし、武士はただ一直線に刀を振り下ろそうとし、暗殺者は陰に忍び込み会心の一撃を喰らわせようとした。
そしてその光景を肌で感じたジェスターは特に慌てもせず…ただ笑って…
「ここで避け方講座〜(^◇^)!」
「周りの視界が見えない時は〜感じ取るのです!!( ̄∇ ̄)足音…風音、様々な情報を見つけ出せば…後は簡単!避けるだけ〜!!( ̄∇ ̄)」
ジェスターはお気楽にそう言って武士の刀を避け、暗殺者の腹部を蹴り上げた。
「がっ…!」
「…ありえん…いくらなんでも…」
暗殺者は唾を吐き出し、武士は驚愕していた。それでもジェスターはまだ陽気に言葉を続ける。
「さてさて…お次は避けた後は〜もちろん!攻撃だよね^ - ^!ていうことで第二弾!攻撃の仕方講座〜」
「くそ!!戦略的撤退じゃ!」
武士はそう言って刀を手放し、足につけた下駄をコツコツと鳴らしこの場から去った。そうするしかなかったのだ。煙のせいでどうなっていたかは知らないが、きっと逃げ出す武士の姿は滑稽だったはずだ。
しかし、それについて何も言わず、ジェスターは言葉を続ける。
「人は不意を突かれると…一時的ではあるものの〜思考が止まります!まぁ…喋りすぎてたせいで…そのチャンスは失ってしまいましたがね!まさに合コンでヤり損ねた奴らと同類ですね!!^_−☆」
武士を逃し、暗殺者に立て直しのチャンスを与えてしまったのにも関わらず相変わらず陽気にジェスターは笑っている。
一方で科学者はどうか…一滴の汗が垂れたその様は行き詰まった人間の絶望の感情に渦巻いているように見えた。
その科学者に追い討ちをかけるように暗殺者が言った。
「悪い…科学者、これ無理…」
暗殺者はそれだけ言うと、暗殺者の周りに黒い霧が現れ、暗殺者はそれに身を包み込むとこの場にいなくなったのをジェスターは感じ取れた。
「…どうやら、本当に逃げたっぽいね!( ̄∇ ̄)」
恐らくは暗殺者の三心の一つ。一応警戒は解かないでおくが、あの様子から察するに本当にいなくなったのだろう。
そう思考しながらジェスターはゆっくりと科学者に近づき、そして至近距離に近づいたその瞬間。科学者は叫んだ。
「…はっ…!負けたのか…俺は」
「そうだね!(^◇^)」
「最後に一つ言わせろ」
科学者は何かをジェスターに伝えようとしていたようだったが、道化師にはそれは通用しない。
「ねぇねぇ、科学者( ̄∇ ̄)、君にも神がいるんだよね?ならその神に教えて貰わなかったの?」
ルール1 勝利条件は自分以外の七王に選ばれた人間を殺し、七王の魂である宝玉を全部取り込むこと。
ルール2 宝玉を取り込めば新たな力を手に入れることが出来る。なので、宝玉を目的とした協力は許可する。
そして…………ルール3
「如何なる理由があっても、情を持ってはならない」
科学者に一言も発する余裕すら与えず、手刀で胸を貫ぬいた。胸からは大量の血が吹き出し、それが道化師の体を赤に染め上げた。だが、道化は笑う。ただただ笑う。
笑うしかないのだから。
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「んぁ?ここは…どこ?」
自分の知らない光景が辺りを埋め尽くしていた。
変な何かに、変な何か、そして変な何かが辺りを埋め尽くしていたのだ。そして変な何かが、自分に近寄り一言言った。
「おかえり〜!♪───O(≧∇≦)O────♪」
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