第三話 復元
武士の国と呼ばれる我が故郷は、完全実力主義の世であった。
弱い者が強き者に従う。それが常識と言われ続けてきた。
わしはただそれに従い、武を極め、剣聖と呼ばれるまでずっと剣を振った。
念願の上と言う立場に立った時、わしは心から喜んだわい。
もっと強き者に出会えると…そう信じておった。
武士の国と呼ばれる国の内側は何もかもが腐り切っておった…それは偉い奴らを見れば一目瞭然。
力を重きに置いていると言いながら婚姻だの、経済だの気にしやがる。それに一番腹が立ったのはわしに直談で人殺しの仕事をしないかと頼んできた奴もおった。結局、完全実力主義国家とは名ばかりの装飾品だったのだ。
「
「この裏切り者め!」
「剣聖と言う名を貰ったくせに…国民の立場になって考えてみろ!この非人道者が!」
「しくじったな…正義」
五月蝿い、貴様らの詭弁や御託は聞き飽きた。
「そんなに言うならわしと戦え、そして打ち勝ってみせよ。さすれば貴様らの言う通りにしてやろう」
わしはそう威圧的に宣言した。詭弁や御託しか語らない奴らが死ぬまでそう時間はかからなかった。
そうして一夜にしてその国は僅かな生き残りを除いて、滅んだ。
わしはその後放浪者として世を彷徨っていた。
今日もいつも通りただ道なりを進んでいた。
「貴様は七王に選ばれた。望みを言え」
ある時その声が脳に響くようにして聞こえた。
望み…そんなもの決まっておろう。
わしが求めるのは力とそれに見合う相手!
「良いだろう、ならば他に貴様と同じように選ばれた人間がいる。そいつらを殺せ、さすればその望みも叶うだろう」
わしは人を殺すことを躊躇わない。人道はとうの昔に捨てた。
ーーーーーーーーーーー
道化。奴は強い。わしが求めていた強さを奴は有していた。
だからこそ気に食わない。何故あれほどの力を持っていながらあんなにも礼儀がないものか…。
稲妻を刀身に宿し、わしはその生意気な輩を一刀両断する勢いでその刀を振り下ろした。この一撃であの者を後悔させてやると振るった…
はずだ。なのに、わしは今動きを止めている。何故?
思い当たることがあるなら…あの少女だ。あの少女が「
不可思議な光景に疑問を浮かべていると、さらに驚愕すべきことが起きた。わしの体が。わしの意識だけを残して、戻った。
元の状態に…剣を振り下ろそうとした意識だけがそのままで…戻ったのだ。
わしは剣を振り下ろした。しかし当然そこに道化はいない。
「一体…何が…」
それを理解する間もなく…わしの意識は途切れた。
ーーーーーーーーーーーー
武士の死体。この人は俺の能力のせいで負けた。つまりこれは俺が殺したのと変わらないと言うことだ。
「死んでるのか…」
俺は目の前の横たわる死体を見てそう言った。周囲を見渡せば血が飛び散っていた。そうしてその光景を見てれば見てる程…は、吐き気が…。
「おぇぇぇぁあ…」
口の中から嘔吐物を吐き出し、それを死体にぶっかけた。
その様を横で見ていたジェスターはこう言った。
「ん?^_^どうしたの?気分が優れないのカナ?」
「あ、当たり前だろ…」
「あれ〜(ToT)変だね〜そう言えば…雰囲気変わった?( ͡° ͜ʖ ͡°)ていうかそんなに臭いも酷くないのに、何で吐いたの?」
「さ、さっきから何だよ…俺、今気持ち悪いから話しかけないでくれ…」
ジェスターには申し訳ないが今、答えられそうにない。
思いの他、体調が悪くなって来てる。や、やべぇ…また吐く。
「おぉ…(^ω^)やばそうだね、じゃぁ!さっさと済ませようか!\\\\٩( 'ω' )و ////」
ジェスターはそう言いながら先程の死体に触れるとその死体は光の粒子となり、散り散りになった。
その様は神秘的だと言わざるを得なかった。しかし、俺が吐くことをやめる理由にはならなかった。
「おぇぇぇぇぇ!ぁぁぁ!!」
「うーん…何処にあるかナ?(^ω^)」
吐く俺をスルーしたジェスターは平然とゲロと血が混ざった中を触って何か珠のような物を取り出すとそれを口に入れ、飴を噛むような音を鳴らしながらゴクリと飲み込んだ。
俺はその行動に疑問を持ったがそれ所ではなかったので聞くのはやめておくことにした。
そうして約三十分。
「ねぇいくらなんでも吐きすぎじゃない(・・?)」
「いや、それは俺も思った。何でだろ…臭いとか特にしなかったし…ていうか…所々記憶がない………」
俺が殺したからか?…いや…それとも…。
考えれば考える程頭が痛くなる。
「ふぅむ…( ˙-˙ )ま、どうでもいいでしょ!そんなの!(*゜▽゜*)」
「とりあえず…よくやったね!^ - ^えーと…」
道化はそう言って俺を指差し、名前を思い出そうと目を左右に巡らせた。だが思い出せる訳ない。だって俺はまだこいつに名前を教えていないから。
「花河です」
「はなかわ?へぇ〜^_^ 良い名前だ!多分!」
清々しい程に適当な感想を与えてきたジェスターに俺は特に触れもせず、俺が聞きたいことを聞いてみた。
「今の奴…一体誰なんだ?」
「あ〜その前に…ちょっといいかな?( ͡° ͜ʖ ͡°)」
「え、な、何だ?」
「はい、これ、食べて」
ジェスターは大した説明もせずに謎の石を渡して来た。
俺はそれに戸惑ったが、一応口に加えて様子を見ようとしたが…。あまりにもジェスターが圧をかけて来たので、思わずその石を飲み込んでしまった。
その瞬間、何かの記憶が一瞬にして流れて来た。
それは一つの鏡のようなもので、その鏡が俺の中の鏡にくっついたような…感じがした。
「な、何だこれ…」
「手短に説明すると、その君の体の元の持ち主の記憶と連結されるんだ」
「連結…?」
「そ!恐らく君の体の元の持ち主も君の記憶を見ることになるからね…つまり!君たちは一心同体になる訳!」
「そ、そんなもんどうやって…」
「今はそんなことはどうでもいいの!(^。^)ほら!早く寝た寝た!」
あまりにも都合が良すぎるアイテムが出て来たなと心の中でそう思うと、突然視界がぼやけ…
そして何かプツンと千切れるような音がした瞬間、気を失った。
そして、目が覚めると…。
「あれ?ここどこ?」
見知らぬ世界に飛ばされていた。
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