第28話 少女は英雄への一歩を踏み出す
「どいていただけませんか。その男を殺せないではありませんか」
「どかない」
「そうですか。あなたから殺してあげましょう」
奴の爪が僕に襲いかかってきた。僕は神眼に集中し、奴の攻撃を先読みした。どのような攻撃がくるのかがうっすらと見えた。だが奴のスピードが速すぎて体が追いつかない。
右肩と左脇腹をやられた。右肩と左脇腹からは出血している。だが戦えないほどの怪我ではない。
「弱いですね」
俺はココロギ村に来てから剣の修行をしていた。エリーを守るために。強くなるために。
今の自分はカザオカ村にいた頃よりは強くなっているはずだ。だが僕は目の前にいる奴にかなわない。まだまだ弱い。
「に………………げ………」
後ろから声がした。
「に……げろ。………お前………じゃかな…わない」
ペドロ師匠が僕に向かって言った。
確かに今の僕ではかなわない。
「逃げません」
逃げるわけにはいかない。
「もうこれ以上大切な人たちが死ぬところは見たくない」
「感動的なところ悪いですが、そろそろよろしいですか」
「かかってこい!」
グリフォンの魔族は僕に向かって攻撃を仕掛けてきた。僕は神眼に意識を向け集中する。
もっともっと先を読むんだ。もっともっともっと。
グリフォンの魔族の攻撃に対して連続で剣で受け止める。神眼に意識を極限にまで集中しているのでだいぶ疲れる。
どんどん来る攻撃を先読みしながら全部受け止めることが出来た。だが攻め手が見つからない。攻撃を受け止めることで精一杯だ。
どうすれば。
すると突然、後ろから炎の球体が飛んできた。グリフォンの魔族は炎の球体を避ける。
その炎の球体はエリーの魔法だった。
僕は炎の球体が自分を通り過ぎてから後ろから誰がやったのかが気になった。つまりグリフォンの魔族に対する警戒が一瞬なくなってしまった。
その一瞬を相手は見逃さなかった。グリフォンの魔族は炎の球体を避け、僕に向かって突撃し攻撃をしようとした。
油断した。終わった。僕はそう思った。
すると僕の左肩の上から杖が飛び出してきた。その杖はグリフォンの魔族の体に触れた。
「炎魔法 ファイアボール」
その声がすると目の前にいるグリフォンの魔族は炎に包まれた。
「ギャー!私の美しい羽が」
そう言いながらグリフォンの魔族は後ろに下がり、自分の燃えている部分をはたいている。
僕の後ろにはエリーが立っていた。先程炎の魔法を唱えたのはエリーだった。
「やっぱりあなたは炎に弱いよね。あなたは今まで魔法は全て受け止めていた。けど炎の魔法は受け止めずに避けた。羽だから燃えると思ったけどやっぱり燃えたね」
「エリー。ありがとう」
「いいよ。べつに。これからは奴を2人いやここにいる動ける人、全員で倒しましょう」
エリーはそう僕に言った。するとエリーは大声でみんなに向かって言う。
「みんなー。奴は強い。ひとりひとりの力じゃ敵わない。だからみんなで戦おう。奴を倒すために」
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