第5話 そして

必死に走っているうちに僕とエリーは村長の家についた。村長の家の周りには他にも数人の人がいた。他の人たちも魔獣たちから逃げてきたのだろう。


「みんな馬車の準備ができた。早く乗りこむんだ!」


村長がそう言って村長の家の周りにいた人々は馬車の荷台に乗りこんだ。


「アレス、エリーちゃん」


その言葉を聞いて後ろを振り向いた。そこには額に傷をおった僕のお父さんがいた。


「お父さん、エリーのお父さんは?」

「エリーのお父さんはもう」


そうしてお父さんはエリーの頭を撫でた。


「アレス、お母さんは?」

「お母さんは僕たちを逃がすために」

「……そうか」


お父さんは一瞬悲しそうな目して顔を下げた。だがすぐに顔を上げ村長に向かって言った。


「村長、馬車の護衛は私がします。早く馬車を出して村の外へ脱出してください!」


村長はお父さんの言葉を聞き馬車を出した。そうして馬車は壊れた村の入口とは逆方向の村の入口付近に着いた。その入口には魔獣はいないように見えた。だが物陰から急に白い毛の魔獣が3体飛び出してきた。


「あれはホワイトウルフ!」


ホワイトウルフはグリーンゴブリンより強い魔獣でC級冒険者でも複数体だと苦戦する相手だ。ホワイトウルフは馬車に向かって近づき僕に向かって鋭い爪を振り落とした。


僕はホワイトウルフの爪によって左目を負傷してしまった。


「アァーー」

「アレス、大丈夫!」


再びホワイトウルフは爪を振り落とそうとした。今度はエリーに向かって。その爪はお父さんの剣によって止められた。


「アレス、大丈夫か!」

「お父さん、うん。大丈夫だよ」


お父さんは一瞬考え込んだ表情をした。お父さんはホワイトウルフを押し出し馬車から降りた。


「お父さん!」


お父さんは1匹目のホワイトウルフの首を剣で斬りさいた。


「村長!このまま行ってください!」


馬車はお父さんを置いて動き出す。馬車が動いている中でお父さんの姿を見つめることしか出来なかった。お父さんは2匹目のホワイトウルフの首も綺麗に斬りさいた。だが3匹目の牙がお父さんの首に噛みついた。お父さんは力が抜けたように剣を落とし倒れてしまった。


僕たちが乗る馬車は村から脱出した。


そして僕たちは両親がいなくなった。さらに僕は左目までも失った。



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