15

 ゆっくりと大きな白い花の上から真っ暗な大地の上におりた美鷹はそのまま龍子のところまで歩いていった。

 そして真っ暗な大地の上に横たわっている龍子の体を触りながら、「……ありがとう。龍子ちゃん。本当にどうもありがとう」と泣きながらそう言った。

 そのまま美鷹はぽろぽろとたくさんの大粒の涙をこぼしながら龍子の隣で大地の上に座り込んで泣き始めた。

 美鷹の涙は龍子の体の上にたくさん落ちた。

 美鷹の心の中には二人で過ごしたたくさんの楽しい思い出が溢れて溢れて仕方がなかった。

 その美鷹の涙が、強い思いが起こした奇跡だったのかもしれない。

 黒い蛇はだんだんとその形を変えて、やがて谷龍子の姿になった。

 そんな不思議な風景を見ていた美鷹は、それから龍子の胸にその耳を当てる。

 するとちゃんととくんとくんと龍子の鼓動が聞こえてきた。

「よかった。龍子ちゃん。生きてる」

 そう言って美鷹は安心したのかまた泣き始めた。

 やがて泣き疲れて美鷹は龍子の隣で眠ってしまった。

 だから龍子が目を覚ましたとき、そこにはずっと見たかった美鷹の寝顔があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る