冒険者ギルド編 前編

第10話 冒険者ギルドと初収入

 ヴェルフリッツは食の町と名高いデオテルの町に着いた。


 この辺りは酪農、農業共に盛んで活気のある場所だ。

 そしてここには、冒険者ギルドという魔物退治から、魔物の出る危険な場所からの薬草の調達などを行う公的な機関がある。

 言ってみれば、公共が運営し、対魔物用に傭兵を雇う組織と言えばいいだろうか?

 それだけ、どの国も魔物への対処には手を焼いていた。


 ヴェルフリッツは、冒険者ギルドに入るためにデオテルの冒険者ギルドの支部に来ていた。

 冒険者ギルドは人手が足らず、入るのは割と簡単だ。

 だがもちろん、魔物と戦う可能性が大きいために、危険な仕事ではある。


 ヴェルフリッツは受付へと向かった。


「どの様なご用件でしょうか?」

 受付の女性がヴェルフリッツにそう尋ねてくる。


「冒険者ギルドで冒険者登録がしたくて。」

 ヴェルフリッツの言葉になるほどと受付の女性は言った。


「かなり若く見えますが、年齢は何歳でしょうか?」


 ヴェルフリッツは一瞬固まる。

 何歳なのだろう?とりあえず死んだ10年間はカウントすることは止めておこう。


「14歳です、よろしくお願します。」


「年齢は合格ですね。」


「ところでお名前は?」


「ヴェルフと言います。」

 またしてもヴェルフリッツは一瞬考えてそう答えた。


「ヴェルフさんですね、登録は完了です。」


「では冒険者ギルドの説明をしてまいりますね」


 受付の女性が言うには、冒険者にはランクがあり、下からD、C、B、A、Sまでランクがあるとか。


 ランクに応じて受けることのできる依頼も増えるが危険な依頼も増す。

 始めはもちろんDランクからだ。


 ヴェルフリッツは依頼を見る。デオテル郊外の薬草の採取、牙ネズミの討伐、夜の畑の見回り(低級魔物出現可能性あり)の3つがあった。


 (とりあえず、牙ネズミの討伐からするかな?)

 依頼書を取ろうとしたとき、隣の女の子と偶然被る。


「もーらい、新人君運がなかったね~。」

 元気そうな女の子の声がしヴェルフリッツが取ろうとしていた依頼書は無くなっていた。

 声のする方にヴェルフリッツが目を向けたときには走っていく女の子の後ろ姿が映った。

 (やられたな、仕方がないが今回は確かに運がなかっただけかもしれない、以後は気を付けよう。)


 ヴェルフリッツは悩む。

 (薬草の知識なんてないぞ?)

 (それに夜の畑の見回り、低級の魔物なら倒せる、簡単だ。)

 (だが自分は一文無し、早く依頼を達成して宿に泊まろうとしたのに、今夜は畑で夜更かし?冗談じゃない。)


 ヴェルフリッツは薬草の採取と夜の畑の見回りを交互に見比べていると横から女の子の声が聞こえた、少し内気な女の子の不安そうな声だ。

「お困りですか?」


「ええ、ちょうどの依頼がなくて。」

 ヴェルフリッツがそう言って隣を見ると、見た目から薬師であろう女の子が隣に立っていた。

「私も困っているんです、薬草を取りに行くには魔物が不安で……」


「なるほど、自分も薬草はどれを取ればいいのかわからなくて困っていたところなんです。僕の名前は。」


 ヴェルフリッツと言いそうになり改めて答える。


「僕の名前はヴェルフ、よろしくお願いします。」


 女の子が微笑みながら。

「申し訳ありません、私としたことがまだ自己紹介をしていませんでしたね、私はリーナ。薬師をやっております。」


「よろしくお願いします。報酬は半分ずつでいいでしょうか?」

「ええ、もちろんです、半分こでお願いします」



 ヴェルフリッツは薬師の女の子、リーナとチームを組んで、薬草採取へと向かう。

 実質、ヴェルフリッツからすればお散歩だった。

 適当に弱い魔物をあしらい、追い払う。

 リーナなどは魔物を見ただけで小さな悲鳴を上げたのだが、ヴェルフリッツの力を見ていると、背中の後ろで安心した様子でついてきた。


「ヴェルフさんは強いんですね。」

「慣れてますからね。」

「なぜこんなに強いのにDランクなんですか?あれ?申し訳ないです。別に特に意味はないんですが。」


「自分は父に魔術を教わりました、とても立派な人でした。あ、でもこの話はやめましょう。」


「ごめんなさい。」

「気にしないでください」

 そんな会話をしていると、二人は薬草の生えている場所までたどりついた。


 リーナは数種の薬草を採取する。

「ヴェルフさんもう十分です、帰りましょう。」


「わかりました。」


 リーナと一緒に冒険者ギルドに帰る、相変わらず魔物を適当に追い払いながら。


 無事依頼は完了し、ヴェルフリッツは生き返って初の収入を得た。

 ヴェルフリッツが喜んでいると。

「ヴェルフさん、また機会があればよろしくお願いします。」

「リーナさん、ありがとうございます。」

 二人は手を振って別れ、ヴェルフリッツは宿に向かった。


 宿は安い宿を探して泊まる。


 素泊まりだ。

 クルシッド村でもらった食料を食べて軽く済ませると、ヴェルフリッツは固いベッドの上で眠った。

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