第9話 始めての魔族
ヴェルフリッツは、さっそく魔族を追う事にした。
魔族、およそ500年前の伝説の存在である魔王の民。
にわかには信じがたかったが、アルギースの様子から、伝説実在している可能性にヴェルフリッツは知識欲を刺激された。
もちろんアルギースの至宝は返すつもりだ。
ヴェルフリッツは魔族の後を追ってクルシッド村の焼け跡まで来ていた。
確かにこの場所に隠れていた事に間違いないらしい。
魔族の魔力はそこから、街道に向かっていた。
(人に見つかる可能性があるのに、街道を使う?)
(もしかすると、夜に移動したのかもしれない。)
ヴェルフリッツは、街道に向かって急いだ。
気づけば街道の半ばまで来ており、夜になっていることに気づく。
魔族の魔力が近い。
(この調子なら至宝を取り戻せるかもしれない。)
草むらに魔力がそれていることに気付き、ヴェルフリッツはかき分けて中に入って行く。
すると、そこに人に近い姿をした赤い肌、黒い角の生えた魔族であろう者がうずくまっている様に見えた。
だが、次の瞬間。
小太りの男性の姿に変わった。
(見間違いだろうか?)
ヴェルフリッツは頭をかしげたが、目の前から魔族の魔力が漂っているため、警戒はおこたらなかった。
「あなたがアルギースから至宝を盗んだのですか?返して下さい。」
「そんな事はありませんよ。」
そう言いながら、男の右手が自分に向けられ事をヴェルフリッツは見逃さない。
直前、激しい雷光が走る。
魔族の発動した魔術には魔術陣が全く見えなかったため、エルフリッツは驚いたが、魔術陣を展開し光の壁で魔族の攻撃を防いだ。
次の瞬間、目の前には始めに見た赤い肌をし、黒言い角が頭に生えている長身の魔族がヴェルフリッツをにらんでいた。
魔族は更に赤い雷を激しくヴェルフリッツに放つ。
「人間か?アルギースに言われ我を追って来たのか?元よりアレは我らの物だ」
「もしそうだとしても、あなたは至宝で何をしようとしているのですか?」
「人間風情が!」
魔族はヴェルフリッツに怒りのこもった言葉を吐き出した。
よく見ると、魔族の背中は火傷をしていた。アルギースにやられたのだろう。
やたらと移動速度が遅いと思ったが恐らくはそういうことだ。
「人間め、ここで始末してやる‼︎」
ヴェルフリッツは、魔族の魔術に対抗するのに限界を感じていた。
(しかも話しが、通じそうにない。やるしかない。)
ヴェルフリッツは、左手で光の壁を制御しながら、右手に魔力を込め。
そして、魔術陣を最大展開する。
ヴェルフリッツは光の魔術を放った。
夜の風景を激しく照らす一筋の光が魔族を貫いた。
ヴェルフリッツは、魔族の様子を確認する。
(死んでいる。)
確かに自分でやった事だが、人型の相手を倒すのは気分のいい物ではなかった。
アルギースの言っていた物を探すために、魔族に手を伸ばす。
すると、ヴェルフリッツは膨大な魔力を感じた。
次の瞬間、ヴェルフリッツは手に青いオーブを手に持ってることに気づく。
「見つけたか?ヒトノコヨ」
アルギースの声が響く。
「アルギース、何処にいるんだ?」
「お主の頭の上だ。」
ヴェルフリッツが空をあおぐと、アルギースがそこにいた。
「我がシホウ、取り戻してくれた事カンシャスル」
アルギースがそう言うと、オーブはヴェルフリッツの手から離れアルギースに向かって引き寄せられ、やがてアルギースの体に吸い込まれる様に消えた、次の瞬間、アルギースもヴェルフリッツの前から姿を消す。
それから、ヴェルフリッツはクルシッド村に戻り、ミューレさんに事のてん末を話すと、驚いていた。試しにヴェルフリッツは3日間クルシッド村にいたが、アルギースが村を襲撃することはなかったため、ヴェルフリッツミューレさんに挨拶し、クルシッド村から出発する。
ヴェルフリッツが村を去る朝、巨大な鳥の影が、彼の頭上を旋回し、一つだけ羽根をその場に落としていった。
まるで彼の旅を祝福するように。
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