第8話 ウールカの森の怪鳥

ミューレがどうしてもと言い、遠慮するヴェルフリッツに報酬を持たせてくれた。

 ミューレが言うには教会の保管庫は燃えていないらしい。


 (どうせ怪鳥には追い付けないのだ、ウールカの森に行ってみるか。)

 ヴェルフリッツは東の森へと向かい、夜を待った。


 夕焼けがキレイだった。アルギースのことなど忘れてしまうほどに。


 ヴェルフリッツはボーっと日が暮れていくのを眺める。

 そんな中、東の森がボンヤリと光だした。


 ヴェルフリッツはわかる。

 (これは魔術だ、間違いない。)


 その魔力強く光っている方へヴェルフリッツは歩き出す。


 恐らくもうウールカの森には入ったのだろう。

 ヴェルフリッツは身肌で感じる魔力でそう確信した。


 しばらく歩くと、大きな鳥の巣が見えてくる。


 ヴェルフリッツは歩を早めた。


 恐らくアルギースの巣であろう場所に着く前に、大きな割れた卵が一つ落ちている。


 (あの3人組が運ぼうとしたのだろうか?)


 更に巣を確認するために、ヴェルフリッツは中へと足を踏み入れる。


 そこにはアルギースの卵がまだあった。


 (ヴェルフリッツは混乱する。まだ卵があるのに、なぜアルギースはここを離れたのだろう?)


「待て、ヒトノコヨ」


 ヴェルフリッツは急に声が聞こえて驚く。


 しかも頭の中に直接聞こえるような感覚。

(これは魔術だ‼)


「誰だ!?」

 ヴェルフリッツは声に出してその声に答える。


「我が名はアルギース。」


「ヒトノコヨ、我がシホウを返してもらおう。」


「至宝?」

 ヴェルフリッツは頭をかしげた。


 すると空からゆっくりとアルギースが降りてくる。


 ヴェルフリッツが身構えた。


「アンシンせい、ヒトノコよ。」

 アルギースがそう話しかけてくる。


「どうやら、何か事情があるみたいですね。話してもらえませんか?」


「オヌシ魔族を知らぬか?あの魔力は魔族であることに間違いない。」


「魔族?」

 ヴェルフリッツは全く予想外の答えに驚いた。


「どうやらシラナイようだな。確かに我が子をオソッタのはニンゲンであった。しかし、我がシホウを奪ったのは魔族だ。」


「その至宝とはどのような物なのですか?いえ、概要はいいです。その至宝を返せば怒りを収めてくれますか?」


「怒りはオサマラン、我が子孫の一人ウバッタノダカラ、だが手はヒコウ」


「では村を襲ったのは?」


「魔族がヒソンデイタカラダ。ヤツが我がシホウを奪い、同時にワガ子をヒトノコが奪ったのだ。」


 なるほど、ヴェルフリッツはアルギースと戦わないでいいことに安堵し、そして納得した。


「なので、昼間も空を飛んでいたんですね。」


「ソウダ、我がシホウを取り戻す手助けをしてくれないだろうか?」


「引き受けさせてもらいます、どの様な相手だったのですか?」


 ソウダなとアルギースが言った次の瞬間。


 ヴェルフリッツめまいと共にの脳裏に角の生え、赤い体表のいかにも魔族といった姿がこちらをにらんでいる姿が焼き付いた。


「ニンゲンつらかったか?」


「大丈夫です。」


「魔族は我がシホウで何かヨカラヌことをしようとしている。ヒトノコよ魔力のハンベツはできるか?」


「ええ、魔力の判別なら、では魔族の発した魔力を同じ方法でオヌシにオシエヨウ。」


 ヴェルフリッツは先ほどの脳裏に映った絵の様に脳裏に魔力を刻まれるような感覚を感じ、そしてうっすらと気になる魔力の流れを北西の方から感じる様になる。


「では期待しているぞ、ヒトノコよ。」


 次の瞬間、後ろに引き戻されるような感覚を覚え、ヴェルフリッツはその場に倒れこむ。


 意識を取り戻した時には朝になっていた。

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