第5話 漁村の決戦と旅の始まり
アフティの家で彼の兄弟と過ごし、次の日の早朝、作戦が始まった。
「準備できたか?」
アフティは浜辺の岩陰に隠れてそう言う。
「準備万全でさぁ。」
ムークが言った。
「点火する。」
ファムがそう言って、クラーケンを呼び寄せるために、痺れカブトが仕込まれた餌の鹿と、芳香剤に火をつける。
30秒ほどかたずをのんで見守ると、アフティが来たと言った3秒後、海を凝視しているとヴェルフリッツにもわかるぐらい水面が揺らぎ始めた。
あれは波とは違う、巨大な何かが上がってくるとはっきりと分かる。
次の瞬間、巨体と恐ろしい見た目をしたイカの化け物クラーケンが地上に姿を現した。
海の化け物とはいえ、その10本の触手をうまく使って陸を這う速度は人が小走りするような速度だ。
餌の直前まで来たクラーケンは目も留まらぬ速さで触腕を動かしその腹に鹿を飲み込む。
「ここだ」ヴェルフリッツは魔術陣を発動し、四方に光の結界を展開して、クラーケンをとらえた。
クラーケンはうめくような低い鳴き声を上げながら、怒りを露わにして暴れはじめた、気を抜くと、光の壁が突破されそうだ。だが、麻痺カブトのせいで少し陸に上がってきた時より動きが鈍いように見える。
ヴェルフリッツは結界を維持しながら、次の魔術陣を発動した。
これはクラーケンに対する攻撃の魔術陣であり、雷の魔術であった。
すさまじい閃光が辺りを断続的に照らす。
クラーケンは必死にもがくが、毒と雷に体力を奪われ、光の結界の中で必死に暴れる。
「体力勝負だ‼」
ヴェルフリッツは魔力を必死に絞り出し、抗うクラーケンを仕留めに行く。
10分の根競べの後、クラーケンは息絶え動かなくなった。
4人はゆっくりと、クラーケンに近づき。
アフティがクラーケンに触れ、うなずく。
「仕留めたぞ……やった‼」
アフティのその言葉で3人は喜び、勝利の雄たけびを4人で上げた。
ヴェルフリッツは村の人々から感謝され残ってくれと言われたが、行く場所があると言って、次の日の朝、出発する準備をする。
ヴェルフリッツの見送りはアフティ、ファムとムーク、ルーベ村長、ルティ、マディ、そしてナッズやテオリ村の村人数人。
「ありがとう」
「ありがとうな」
村の人たちにそう声をかけられる。
アフティが近づいてくる。
「絶対追い付いてやる、立派な海の戦士に俺もなる」
アフティはそう言ってヴェルフリッツに握手をした。
「頑張ってください」
アフティと握手を交わした後、ヴェルフリッツはどこへとも知らぬ旅に出た。
世界は広い、不死者ヴェルフリッツの旅は、まだ始まったばかりだ。
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