ユーミンに捧ぐ

@jumi08

ユーミンに捧ぐ

カンナの咲く乾いた午後君の言い訳を何ひとつ聞いてないかった

かすめ飛ぶツバメになりて雨に駅さがしてしまう君の姿を

車をとばす海岸は夜の入り口恋の始まる予感がした

偶然が重なりあって必然に素手ではつかめぬ恋であった

あいまいな答えはずるい身軽な私は紙ヒコーキひらりと飛んで

さりさりと涼しげな梨食みながらきれいごとのみ言い交したり

ぎゅっと握れぬこの指が君の手を離したのか秋立つ風に

見返す=振り向いて 交差点に懐かしい顔を見つけてしまう

「あざとくって何が悪いの」フェードアウト前に言ってみた小首をかしげ

執着を手放せば自由な心ひこうき雲のほどけゆく

あきらめてしまえば指のささくれと軽い痛みを残して恋は

格子から枝葉をのばす芙蓉の花捉まえたいのは誰ですか

声と足 乳房は何と 少年の心もちたし泡となりても

戦いは今はじまったわけじゃない樹木図鑑静かに閉じる

黒よりも青のインクが好きなんだ海の見えない街に暮らして

どこまでも続く桜の回廊に飲み込まれんと日傘をたたむ

八月最中降りしきる蝉の声その衝動を止めないでくれ

一から十までダメな私だから泣きたい訳は十以上ある

生きるのをやめたい私を責めないで私は君を責めたりしない

十代で出会ったあなたの楽曲と笑って泣いて年を重ねた







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