第5話 次はいつ会えるのかな……
「それじゃあ今日は固い物は食べないように注意してくださいね。
滅多にないけど、詰めたプラスチックが外れちゃったり、最悪の場合割れちゃうこともあるから。
そうしたらまた治療しなくちゃいけないの。それは嫌でしょう?
だから1時間は水以外はお口に入れないようにしてくださいね。
せっかくなので他の歯も確認しよっか?
まだ痛くないだけで悪くなってる歯があるかもしれないからね。
今日みたいに虫歯になってから来ても遅いんですからね。ちゃんと毎日ケアして、虫歯になる前に治療するのが大切なんです。わかりましたか?
本当はそんなふうにならないように毎日きちんとケアするのが大事なんだけど……」
優しく諭すようだった声が、急に怒るような声に変わった。
「あ、なんで目を逸らしたの? もしかして、面倒くさいなって思ったんじゃないでしょうね?
冗談で言ってるんじゃないからね。お姉さんだって怒るわよ。
歯はとっても大事だから、ちゃんと毎日ケアしないとダメなんだからね。わかった?
面倒くさくはないけど、忙しくてついつい忘れちゃうことがあるから、気まずくて目を逸らしちゃったの?
もう、ダメじゃないそんなんじゃ。
歯はとっても大切なんだからね。大変かもしれないけど、ちゃんと毎日磨いてあげてね。
お姉さんと約束できる?
……うん、よかった。
それじゃあお口の中をチェックしますからね。はい、アーンして。
うーん……
あらあら……こんなことって……
他に治療が必要な子たちはないけど……
いくつか怪しい箇所がありますね。このまま放置しておいたら将来虫歯になっちゃうかも。
しょうがないから今日は洗浄だけしましょうか。
お口をアーンして。ホースでお水を流して歯の隙間にある汚れとか、表面についてる汚れを洗い流しますからね。
ほら、ここが気持ちいいでしょう? もう、悪い子ね。あらあら。こんなところまで。もう、そんなにお姉さんを困らせるのが好きなの? 全く悪い子ねえ」
楽しげな声が続いた後、少しだけまた怒るような口調になる。
「キレイになったのはいいことだけど、こんなに汚れてる箇所があったのは悪いことですからね?
だからブラッシングの仕方についても教えますね。
まずはこの着色薬を塗って、っと。
はい、じゃあこの鏡を見て? 歯の部分に色がついてるでしょう? これは歯の汚れていた部分なの。
表面は綺麗に磨けてるけど、ほら。ここの歯と歯の隙間とか、歯茎の間とか。色が付いてるでしょう?
こういうところからお口の中の子たちは病気になっちゃうの。だから」
歯ブラシを取り出すと、歯に当てて優しく動かした。
「こうやって、ごし、ごし、するの。
表面だけじゃダメよ。歯茎の隙間から悪くなりやすいんだから。歯ブラシを斜めにして、歯と歯茎の間を丁寧に磨くの。
歯周ポケットって聞いた事あるでしょう? とっても汚れやすいから気をつけないとダメなんだからね。
え? よく見えなくてわかりにくい?
もう、しょうがないわね。それじゃあ目を閉じてくれる?
目を閉じた方が感覚を集中できるでしょう。
ゆっくり丁寧にやるから、お口の中に意識を集中して。お姉さんの手の動きを感じ取って。
ほら、こうやるの。」
耳元で優しく密やかに声を吹きかける。
「ゆっくり……ていねいに……大切な子供たちを綺麗にするように、ゆっくり、優しく……
ごし、ごし。
それから奥の方も。奥歯の裏側も見逃しがちだから気をつけてね。
歯ブラシを奥まで届かせて、裏側を撫でるように、ごし、ごし。
ふふ、感じてくれた? 最後に歯の裏側もキレイにしましょうね。見えないから磨きにくいでしょう。だからこそゆっくり、ていねいに、こうやって……ごし、ごし。
どう、わかった? うん、よかった。これで歯磨きの仕方もわかったわね。」
声が耳元を離れて、またいつもの声に戻った。
「はい、これで治療は全部終わりです。
経過を観察したいので来週もまたきてくださいね。
それまでちゃんと歯を綺麗にしねくちゃダメですよ。来週もちゃんとチェックしますからね。
嘘ついてもお口の中を見ればすぐわかるんですから、ちゃんとしなきゃダメですよ。
え? 歯磨きが苦手だから、これからも毎日私に診てほしい?
ふーん? もしかして、お姉さんのこと、優しくて好きになっちゃったのかな??
その通り? 本当に好きになっちゃった?
も、もう、そんなこと言って。お姉さんをからかうなんて、本当に悪い子。
しょうがないわねえ……。それじゃあ予約を入れておくから、来週もまた来てくれる?
お姉さんも、あなたがくるのを楽しみに待ってるから。ね?」
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優しくて小悪魔なお姉さんのドキドキ診察室~歯が痛いの? ふふっ、お姉さんに任せなさい。 ねこ鍋@最強エルフ転生 @nekonnabe
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