第20話
きららと一緒の時って、私はだいたい泣いてる気がする。
たとえば、きららが小学校5年生のときの運動会もそうだった。思春期というか反抗期になったあたりで、きららからは「ぜったいに来ないで」って言われてたけど、私とお姉ちゃんは校舎の影からこっそり見ていた。
きららは私たちの中でもずば抜けて運動神経が良くて、同学年の中でもそうであるようで、200m走でもスタートと同時に快調に飛ばして周りを引き離していった。コーナーを抜けて、あと50mを切ったところで、窪みに足を取られて、持ち直そうと踏み出したが支えきれず前に倒れこんだ。すぐに立ち上がったが、遅れてきた集団に抜かされて最後にゴールすることになった。
『6』の旗に並ばされるきらら。頭を下げて体育座りをするきらら。クラスメイトが声をかける。顔を上げないきらら。クラスメイト達が私の方を指さす。
私は大号泣していた。
もっと前、これはきららが小学校2年生のとき。実家から電車で30分くらいのところに動物園があって、毎週のように3人で遊びに行っていた。そんなある日、きららが好きだったサーバルキャットのミサコが亡くなった。動物園のスターであり、当時、国内最高齢だったこともあって、献花台が用意された。お姉ちゃんは部活の大会だったので、2人でお参りに行った。お花はきららが持って、台の上の花束の群れにのせて、手を合わせた。
となりで手を合わせると、ミサコに手を振るきららの姿が浮かんだ。
「ミサ、ミサ」
きららが呼ぶと、ミサコはこちらを向きしっぽを大きく一回振る。今思えば、その細い手足では立っているのがやっとで、数年前のように元気に檻の中をかけられなかったのかもしれない。
それでも、きららが「ミサ」と手を振ると、ピンと手足を伸ばしてしっぽを振り返した。
目を開くと、きららが手を合わせたまま、泣いていた。私も堪えきれなくなって一緒に泣いた。私の方が大泣きだった。
きららが中学1年のときの夏休みだって、その年の文化祭の合奏のときも、私はいつも泣いていた。きららよりずっと大きな声で。
あれ? 私、尊敬される要素が、無い。え?
きららに疑いの目を向けると、小首を傾げたあと、にこって笑った。
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