第180話 神聖皇国皇帝リーリエ。
―――場所は少し離れて、至高神に仕える最高位の存在である至高神の血を引く”教皇”が存在する国を事実上守護する国。
それが「神聖皇国」である。そして、それを統治するのはやはり至高神の血を引くとされている”皇帝”である。だが、今の皇帝はただのお飾りでしかない少女皇帝でしかない。国の運営は全て他の重臣たちが行い、皇帝は「よきに計らえ」としか言えないお飾りの皇帝だった。
「リーリエ神聖皇帝万歳!!至高神と教皇の加護を受けた皇帝に栄光あれ!!」
そんな風に儀式で大歓声を受ける彼女は、ただ穏やかに微笑んで片手をあげるだけの仕事しかすることはなかった。
ただ見目がいいだけであるだけの何もできない無能少女皇帝。それが彼女の評判だった。至高神の神官の頂点に立つ教皇を守護する神聖皇帝がこんなので大丈夫か?とはよく言われているが、周囲の部下たちがしっかりしている&有能であるため、彼女がいなくてもいい、とはよく言われる話だ。そもそも余計な事を言い出さないために、わざと帝王学すら受けていないちょうどいいお飾りとして置かれているのだ。
そんな彼女は、仕事や儀式などが終了し、自らの部屋に入ると、自らのベッドに倒れこむように入り込んだ。
「……はあ。」
豪奢な衣服、美味しい食事、ほとんど何もしなくても生きていける恵まれた生活。
彼女はただにこにこ微笑んでいて、部下の仕事を全てよく分からないまま承認するだけでいいのだ。餓えに苦しんでいる場合もある一般人に比べれば遥かに恵まれているのは理解できる。自分は極めて幸せだというのも理解できる。だけど、本当にそれでいいのか?という疑問は常に彼女の中にあった。
彼女は人払いを済ませると、豪奢なベッドに潜り込み、その中で自らの個人的な魔導装置を持ち込み、仮想キーボードをいじると、そこに仮想ディスプレイが展開される。そして、彼女が見るのは外部の冒険者たちの冒険配信活動である。
その中の人々は、みんな苦労はしていたが、極めて楽しそうで生き生きしていた。
その中でも彼女が特に興味を引かれていたのは、強大な力と強靭な肉体を誇りながら人類と共存を選んだ竜の配信だった。ただ立っているだけの自分と異なり、何という生命力!!何という迸る生きるための力!!そんな超絶的存在に彼女が憧れるのはある意味必然のことだった。
「……。会いに行きたいなぁ。こんなろくでもない場所なんかより、私も一人で生きていけるほど強くなりたいなぁ……。」
神聖皇帝である存在が野蛮極まりないケダモノに会いにいけるはずなどない。だが、それでも会いに行きたい彼女は、こっそりと宮殿内部から抜け出す準備をちゃくちゃくと整えていたのだった。
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