第176話 竜族の社会性の欠如。
前の話を聞いて、「どうにかならないのか?」とエルから言われたティフォーネは軽く肩を竦めた。
「どうにかならないかも何も。元々竜族は単体で強靭な肉体、優れた知性を持っている単体生存できる生命体。貴方達人類のような社会的な種族とは根本的に異なる。
私だって竜族のトップ……竜の神ではあるけれど、竜に対して命令権なんて存在しません。強い者のみが自らの意思を貫く事ができる。私は自分の力で他の竜たちから畏怖の目で見られていますし、挑む者たちは全て迎撃してきました。」
彼女は再び足を組んで優雅に紅茶を口に運びながら、言葉を放つ。
だが、その優雅さの影で大量の紅茶が樽単位で運び込まれているのは流石に竜族といえるだろう。痛い出費ではあるが、これでティフォーネの気が良くなるのから、極めて安い出費といえるだろう。
「つまり簡単に言うと……「自分の力で何とかしろ」です。自分の力を示さなければ、竜の世界では何事も成しえません。そもそもそんな連中……反人類共存派?とでもいうんでしょうか。そういう奴らは何をしても気に入らないから殴ってくる。そういう連中です。言語の件なんてただの大義名分でしかありません。」
oh……。とエルは思わず頭を抱えた。ティフォーネがいるから&シュオールの息子だからこそ警戒されているだけにすぎない。
むしろエルの存在は今まで無敵に近かったシュオールの弱点になりかねない。
彼を人質……竜質にとって脅してくる可能性すらある。そしてそれを防ぐためにはどうすればいいか?そう、答えは強さである。
個人的な強さでも、人間と竜とが協力しての強さでも何でもいい。
竜でも人間でも撃退できるほどの強ささえあれば何も問題はない、とごくシンプルな結論へと至ってしまうのである。それを聞いてルーシアは思わず肩を竦める。
「人類サイドから言わせてもらえば、今の話は黙っていたほうがいいでしょうね……。人間とは現金なものだ。竜が襲い掛かってくるかもしれない、となれば、今までの信望が逆転してしまう可能性が高い。」
「まあ……。少なくともそんなに早期に竜たちが襲い掛かってくるかは分かりませんが。むしろ「なにそれ知らん」という竜が大半でしょうね。ほとんどの竜たちは貴方たちが何をしているかすら知らないでしょう。」
「何故か?それは竜の「社会性の欠如」が上げられます。社会性の欠如、お互いの情報共有の欠如……。これらのため竜は人類社会が発展しても何百年もの間山奥でついていけず孤立する事が多々あります。そして、その情報不足のために人間に倒されるのもあるあるですね。」
これは竜族の間で魔術による情報交換がほとんどない。そしていかに強大であろうが知らなければどうしようもない。知識……情報とはそれだけ強大な力であるが、竜たちはそれに対して無関心であるのが種族としての欠点であった。
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