第174話 パフォーマンスは大事だね。
王都襲撃によって今までの天蓋結界が破られたのを見ていた市民たちは、新しい強大な結界が王都を覆ったのを見て、大歓声が起きるのは自然な流れだった。
あちこち崩れた城壁が修復されるのも彼らに安心感を与えるし、破れた結界が再度構築されるというパフォーマンス、実際に自分たちの目で新しい結界を見るというのでは安心感が段違いだ。
そして、目に見える安心というのは自然と信仰心、そして民衆の支持へと繋がる。
おまけにルーシアは自らとエルの民衆の支持を得るため、それをリアルタイムで配信で流して、街の広場などでも大々的に流していた。
盾神神殿と協力した竜の力で強力な結界が張れた、しかもそれを実際に目の前で見る、もしくは配信で見るとなったら、それは支持が高まるのは必然である。
人類至上派を叩き出し、都市復興も行い、食料の供給を行い、結界も張って民心の慰撫を行ったとなったら支持が高まらない理由がない。
そして、それと同時に支持が急下降しているのが、至高神の神殿と弓神の神殿である。結界を作るのと同時に、盾神神殿、知識神殿、大地母神神殿と辺境伯ルーシア、エルの共同声明を出し、事実上私たちは同盟関係にある、と大々的にアピールすれば、その分ほかのところは割を食う。
特に王都を統べるはずの至高神の神殿は何をしているんだ?あいつら何もしてないじゃないか!偉そうにして肝心なところで何の役にも立たないじゃないか!!と不評を買うのは当然だった。
「……我ながら共和国と名乗っておきながら、実際は内紛だらけとはな。いや、これが「正しい国の在り方」か。」
どうにか自室へと帰ってきたルーシアは、はあ、とため息をつく。ここまで至高神の神殿の面子を潰しておいて向こうも怒り心頭と言ったところだろう。
だが、ここまでやってしまった後は事実上の冷戦状態になるのはどうしようもない事である。今最も恐るべき事は、至高神の神殿が自らの首魁である「教皇庁」に働きかけ、教皇直々にエルを「教敵」と位置付ける事である。
そうすれば立場は逆転し、エルは人類社会の敵として狙われてしまう事になってしまう。むろんこの国の人々も黙ってはいないだろう。下手をしたら再度内乱か、むしろ教敵を倒せ、と周囲の国々がこの国に同時に侵攻して焦土の可能性もある。それだけは何としても避けなければならない。
「やれやれ……。厄介な事ばかりだな……。ともあれ、再びこの国が内乱状態になるのはどうにかしたいのは事実だ。至高神の神殿や弓神神殿にも何か働きかけなければならないか……。」
彼女はそう呟くと疲れたように、椅子の背もたれに背中を預けた。
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