第173話 竜語結界展開。

 そして、事実上同盟関係を結んだ、知識神の神官たちと盾神の神官たち、そして大地母神の神官たちは、ルーシアと共に一度王都の城塞の外へと出て、外から結界構築を見る準備を行う。

 内部から見たら何が何だか分からないうちに結界が構築されるが、外から見ていればどういう術式かきちんと確認できる。(特に知識神の神官など様々な観測用魔導具まで導入している気合の入りっぷりである)

 神官たちは皆興味津々でエルの魔術行使を期待している。彼らにとって竜が操る竜語魔術とは知識で知っているが、実際に見るのは初めてなのだ。

 王都の生活に対応するため、普段は小型化しているエルは、元の姿に戻って詠唱の準備をするが、それだけで神官たちはざわめいてしまう。

 それに構わず、エルは天に首を向けると咆哮を上げる。これは彼が大規模魔術を使う時の準備である。

 魔術的探索を行った際に、この王都にもきちんと地脈は通っている事は確認できた。やるべき事は、その地脈の流れるエネルギーを増幅させることである。

 元々この近辺の地脈の根源地は大迷宮から溢れる膨大な地脈エネルギーである。

 さらに、地帝シュオールの子である彼には、ほぼ全ての大地の地脈を自在に操る権利を生まれながらにして有している。そんな彼からすれば、大迷宮から王都に繋がる地脈にさらに膨大な力を流すようにできるのは極めて簡単だった。


『オォオオオオ!!』


 王都近辺に急激に流れこんできた増幅された地脈エネルギーを元にして、エルは王都全般を覆う大規模防御結界を構築していく。

 一度は砕け散った天蓋結界が再び構築されていくのを、王都内部の人々はそれを見上げながら驚きをもって見上げる。盾神の神官たちが長年かけて作り上げた結界をいともあっさりと作り上げていくのを驚いているのは、市民たちだけではない。

 知識神の神官たちや盾神の神官たちも同様だった。


「うぉおお!!凄い!!これほどの地脈活性化とは!まさか竜様は自在に地脈を操れるというのか!我々は必死で苦労して長年をかけてしか変えられないというのに!!」


「いや、結界の術式の高密度展開もだ!高位の魔術師でも出せないほどの出力と高レベル術式を易々と……これが竜語魔術か!!」


易々と王都の上空を覆い、さらに城壁にまで展開された高度な結界を見て、知識神の神官も盾神の神官も驚きを隠せない。専門家の彼らでさえ舌を巻くほどの高度な魔術と今までにないほどの堅固な結界だったのだ。

これほどの結界と魔術を使えるとは……。竜様恐るべし、が彼らの結論であった。

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