第171話 盾神神殿と竜語魔術。
―――王都、盾神神殿。
この盾神は、防衛神としての側面を強く有しており、城壁都市の城壁、都市を覆う大規模結界の構築に長けており、どの城塞都市にも必ず一つは存在しているという大きな勢力を誇っている。
盾神の神器も存在するのだが、それは運良く?このアルビオン共和国には存在しておらず、他の国に存在していたので、人類至上派に支配されていなかった。
だが、特にこの王都は竜や他国からの上空爆撃に備えて、他の城塞都市とは比べ物にならないほど大規模で厳重な天蓋結界と城壁で守護されていた。
そして、その天蓋結界を破壊したのは誰あろう、無数の使役竜を率いてきたエルその人である。
そのエルは、盾神神殿のお偉いさん……もとい神官たちの前で居心地悪そうに辺境伯ルーシアと並んで、お互い机の向かい合わせでご対面していた。
仕方ない事とは言え、エルが王都の天蓋結界を破った事は事実である。
それは、盾神神殿の誇りに泥を塗ったことに他ならない。ただでさえケダモノ扱いされても不思議じゃないこの状態は居心地が悪い事他ならない。
『あ~、え~と、このたびは結界を破壊してすみませんでした……?』
とりあえず謝ってみるエルに対して、ルーシアは(権力者がそうそう頭を下げるな)と言わんばかりに睨みつけてくるが、神官たちはそれに対して首を振って答える。
「いえ、竜様は悪くありません。この王都の件は我々が人類至上派の勢力を抑えられなかった事に根本的な問題があります。我々が協力して人類至上派を抑え込めればここまでの大きな被害は出ることはなかった。ふがいない限りです。その結果として結界が破壊されたのは仕方ないことかと……。」
その彼らの態度に、エルは内心驚いた。ルーシアから密かに聞いていた弓神神殿のように「全ては竜が悪い!」という態度で来るかと思っていたからだ。
こんな常識的な判断をしてくるとは……と思いながらエルは地脈結界の話を行ってみるが、そのエルの言葉に神官たちは一斉にガタッ!と椅子から立ち上がった。
「竜語魔術による高密度結界……!しかも地脈使用型だと!?」
「確かに我々の結界も地脈を使っているが……地脈を操作できるほどとは……!!
おい!大地母神の神殿へと誰か走れ!!お互いの神殿で協力して術式の研究を行うぞ!!」
「いや、知識神の神殿も引き込むべきだ!貴重な竜語魔術による結界なんてそうそう見れるものじゃない。何としても術式を解析して俺たちの技術に取り込むぞ!!」
一斉に凄まじい熱気で会議を始める盾神の神官たちに対して、あれ~?という呆然とした顔を見せるエル。そんなエルに彼らはずずい、と顔を近づけていく。
「竜様!我々は喜んで協力体制を結ばせていただきます!その代わり術式の解析は行ってもかまいませんねッ!!」
アッハイ、と彼らの熱気にエルは大人しく頷いた。
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