第170話 地脈結界と盾神

「とはいうものの……。私だけでは神殿に立ち向かうのは難しいだろう。他にも我々の仲間を増やさないといけない。とりあえず……。大地母神の神殿をこちらに引き込むとするか。」


 大地母神とシュオールの権能は大地関係でほぼ被っていると言ってもいい。信者を通して力を振るえない大地母神に対して、エルの母親のシュオールはこの地上にれっきと存在しているため、よりダイレクトに力を振るう事ができる。

(竜の魔力を麦に変換するシュオールの釜など典型的である)

 ここまで被っていると、全面戦争かお互いに協力体制を取るか二つに一つしかない。

 そして、両陣営共に協力する道を選んだ。それだけの話である。

 大地母神も肉体を滅ぼされたとはいっても、「それも自然の流れ」「遠い過去の話」という感じであまりこだわりがない(その神官たちも)という事も幸いだった。

 エルもティフォーネの鱗の力で天候操作も行えるし、地脈を誘導することで畑を豊かにすることなどもできる。そんな異能を持つ存在など、喉から手が出るほどほしいのは当然だろう。


「まあ、大地母神の神殿は後で私から案内しよう。問題は他の神か……。

 知識神、幸運神の神殿は中立、鍛冶神、芸術神も同様。防衛神……盾神については……こちらに切り札がある。話してみよう。」


『そうか、都市防衛結界を使うのか。確かにアレなら盾神も興味を示すか。』


 元々王都を防衛していた結界は、盾神神殿の力によって構築されていた。だが、その結界はエルたちの侵攻によって半壊する状況になってしまった。

 エルがここに地脈を誘導させ、地脈による大規模都市防衛結界を張れば、盾神神殿は大喜びで協力してくれるはずである。

 ……結界を破壊したのもエルであるため、マッチポンプと言われたらある意味その通りだと言わざるを得ないが。それを聞いて、ルーシアも頷いて言葉を返す。


「うむ、都市結界を再構築する代わりにこちらの協力を求める。それに次いで地脈をこちらにより強く誘導できれば、この地はさらに豊かになる。大地母神の神殿との協力も結びやすくなるはずだ。どうだ?できるか?」


ええと、とエルは王都近辺の地脈の流れを再確認してそれを地図で簡単に記入する。

地脈を制するのはその土地を制するのと同じ。この地図だけでも敵国に渡れば大変なことになるのは確定的である。


『……うん、いける。ちょっといじれば大規模結界を張ることもできるはずだ。これをネタにして盾神神殿と交渉しよう。』


その言葉に、ルーシアは強く頷いた。

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