第169話 神殿と権力闘争。

「……という訳で、やはり至高神の神殿と弓神の神殿は、竜神殿なんてもっての他!と冷戦状態になるのは間違いないな。全く厄介なことになったものだ。」


 弓神神殿の状況を聞いて、ルーシアは自室の椅子に座って腕組みをしながら考え込む。せっかくこういう状況にならないように気をつけていたのに……。と愚痴りたくもなるが、多大な恩義のあるエルや双子たちの願いを無碍にするほど、彼女も人情がないわけではない。

 だが、そんな風に腕組みをしながら考え込んでいた彼女は、いいアイデアが思いついたのか指をパチンと鳴らす。


「そうか。これを逆に利用すればいいか。こちらに逆らうのなら、それを大義名分にして両神殿の権限を減らすべく上手く立ち回ればいいか。元より、気に入らない奴らだったしな。」


 元保守派である彼女から見れば、両神殿とも人類至上派に媚び売りをしていた蝙蝠野郎でしかない。特に弓神神殿は自らの神器を奪われ、占拠されて好き勝手に使われていてもそれを見過ごしていたロクデナシ、というのがルーシアの見解である。

 そもそも、弓神神殿が本気で神の信仰心があるのなら、命を張って全滅してでも、王家に逆らってでもミストルティンを絶対防衛するべきだったろう。

 人類至上派などという奴らに自らの神の武器を好き勝手にされて、それを黙って見ていただけという地点で、彼らの性根は知れるというものだ。ある意味、中立派でありながらより性質の悪いタイプだと言える。

 しかも、こちらと協力すると明言している元中立派の貴族たちと異なり、こちらに従おうとせず、冷戦状態とはいえ、こちらに対して敵意を向けてくる。

 これで友好的になれるというのが不思議である。それに対して、ルーシアの部屋で色々な相談を行っていたエルも口を挟んでくる。


『いや、そりゃこちらとしてはありがたいけど……。大丈夫?せっかくある程度平和になったのに乱を起こすような真似じゃない?』


「何を言ってるんだ。あいつらはこちらを舐めているんだぞ?舐めている奴らは叩き潰す。それが貴族の基本だ。竜様もこれから権力に携わる事になるのだからそれを覚えておいた方がいい。面子を失ったらどこまでも好き勝手されるぞ?」


権力闘争ってこわ~。我、大迷宮に逃げ込んでダンジョンアタックするだけのお仕事についていい?とエルは思わず心の中で呟いた。



 


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