第168話 弓神神殿の状況。

「ええい忌々しい!!」


 弓神を崇める王都の神殿、その内部で弓神に仕える神官は怒り狂っていた。

 元々、この土地は弓神自身が与えた「ミストルティン」が存在して実際に空中に浮いているということもあって、その威容に敬意を抱いて弓神信仰を行っている人々は沢山存在した。だが、それもティフォーネがミストルティンを跡形もなく粉微塵にしたせいで、その威容も文字通りの意味で地に落ちた。

 今まで弓神の加護によってこの地は守られていた!と大言壮語した結果が、人類至上派に乗っ取られてこの状態になったといえば、仕方ないことだろう。

 人類至上派の勢力に逆らえず、自らの神の神器を渡したなどということは、すでに皆に知れ渡っていることもある。

 この世界で信仰を変えるのは難しいが、平民や市民たちといったライト勢はそんなに固い信仰心を持っているはずもない。

 そういったライト勢が他の信仰に流れてしまうのはやむを得ないことだろう。


「我々の神器を好き勝手にされていた我々の屈辱が分かるか!?それでもその屈辱に耐えていたのに、神器は破壊されて、弓神様の末裔は竜に仕える!?ふざけるな!!我々を舐めすぎている!!」


 実際は、人類至上派の勢力に恐れを抱いて、自らの神の神器が使われているのに黙って見ているしかなかった、という所ではあるが、弓神神殿の皆はそんな事を認めるわけにはいかなかった。自分の神のために命かけて戦うほどではない、となれば、自分自身の存在意義を否定してしまうことになる。そんな彼らはそれを認めることはできず、目を逸らすしかなかったのだろう。

 神官は再び拳で机を叩きながら再度叫ぶ。


「我々は弓神の末裔が竜などといったケダモノにひれ伏すなど断じて認めるわけにはいかん!!断固として抗議する!!」


「そうだそうだ!竜神殿など認めるか!!我々は至高神の神殿と協力して、あのケダモノに対して共同戦線を張ることにする!!これは決定である!!」


その言葉に賛同する神官たちもいたが、それに賛同しない神官たちも存在した。だが、そんな彼らも正面から反論するのではなく黙して黙っているだけでしかない。

傍から見たら、自分たちは人類至上派の勢力に協力した勢力でしかない。人望がどちらにあるかは明白ではあるが、それを口にすれば集中攻撃を受けるのは目に見えている。そこまでして体を張るほどの度胸の持ち主はいなかったのだ。

そうして、なし崩し的に至高神の神殿と弓神の神殿は協力体制を結ぶことになった。

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